第二章デジジ大佐📶の部屋にトントントンとノックが鳴る。
「初めまして、教育係のエレレといいます」
突然やってきた彼女はエレレ🎓、アナナとロググの教育係として選ばれたらしい。元アサシンだが、子供が好きだということで今は、民間の塾や学校の教員などの職に就いているらしい。
📶「あぁ、二人をよろしく頼む」
私は簡単に承諾する。話はこうだ、
双子の両親が、問題ばかり起こす我が子を心配してエレレを雇ったのだ。確かに私の監視下にあるとはいっても常に双子を見ているわけではないし、私には仕事がある。無駄な時間などない。
大佐の部屋に問題児が出入りしていると誰かが告げ口でもしたのだろう。双子にはもったいないほどエレレは優秀だった。
🎓「アナナちゃん凄いわ!これも解いちゃったの?難しかったでしょう?」
⬛「全然簡単だったよ!次はどれー?」
あっという間にアナナ⬛はエレレに懐いて、構ってほしくてたまらない様子。ロググ⬜もアナナと一緒に問題を解いている。最初、教育係と聞いて厳しい教員が導入されるのではと双子を心配していたが無駄だったようだ。たった数日で、エレレは双子と打ち解けていた。
🎓「ふふふ!デジジ大佐、すみません騒がしくてしまって…お部屋を使っても大丈夫でしたか?」
📶「構わないよ、二等兵は何かと不便だろう、ここの方が静かで勉強効率がいい」
双子は二等兵で軍の階級は一番下、下っ端には個人の部屋などは無くルームシェアが当たり前だ。
ゆっくり勉強に集中する余裕もないだろうと、私の部屋の一部を自由に使わせている。監視も兼ねているが。
🎓「二人とも本当に凄いわ!他の子供達ならこの問題難しくて、明日やる!って諦めちゃうもの!明日は、ご褒美に美味しいお菓子を持ってくるからね!さぁ二人とも、ご飯を食べに行きましょうー」
⬛⬜「やったぁー!」
📶「そうだ、食事をここで済ませてもいいんだぞ、わざわざ食堂へ行かなくても頼んで持ってきてもらえばいい」
私がそう言うと、エレレは嫌そうな顔をした。
これだから効率重視は……という呆れたようなため息をひとつつくとエレレは説明するために口を開く。
🎓「ありがとうございます。でも、勉強机で食事をさせたくないんです、それに歩く運動も必要ですし、食堂へ行くことが気分転換にもなるんですよ」
…教育係というよりも、健康管理のような視点だ。
子供の性格を把握しているのか、アナナがソワソワしている事に気付き、勉強を打ち切るタイミングまで完璧。それに、美人で優しく声も透き通るよう…双子はこの教育係になら任せても大丈夫だと思っていた。
数か月後…
🎓「デジジ大佐、二人の事で少しお話があります」
いつも通りの美しい笑顔に、少し違和感を感じた。
私の直観力に疑いなどない、エレレは確実に何かを企てている。エレレの視線が私を刺すように向けられた。
🎓「二人は…とても可愛いです、元気いっぱいで勉強や仕事にも全力で、本当に可愛い………デジジ大佐は二人を今後どうなさるおつもりですか?デジタル関連の貴方様には何かと不都合なのでは?」
📶「二人は私の直属の部下にする。他の仕事には就かせない」
🎓「そんな…それでは二人が可哀そうです、どうしてそこまで酷い事をするのですか?二人はしっかり成長しています、いつまでも問題児だと思わないでください。私に任せていただければ、必ず二人を開花させられますよ!」
私は二人の長所をさらに伸ばすために言っているのだが、虐待だと非難するようにエレレは私に口答えをする。いや…そうなるように仕向けている。
📶「やめろ。その笑顔を私に向けるな、エレレ、二人をどうするつもりだ」
🎓「それはもちろんアサシンにさせるためです」
そんな言葉、聞きたくはなかった。コイツは、二人を人殺しに育てようとしている。機械を爆発させるアナナと、機械を故障させるロググ、その二人の力を使えば大量虐殺など簡単だ…だがそうはさせない。
いつも優しく二人に接していたのは信頼と愛を得るため、本心は恐ろしいものだった。さすがは元アサシンと言ったところか……。
📶「命令だ、アナナ二等兵とロググ二等兵は私の直属の部下にする、それ以外の誘導を行うのなら教育係を辞めろ。それが嫌ならば、黙って仕事をこなせ」
従順な態度をとらないエレレにイラつきを覚える。
確かに二人の力は凄まじいが、影の仕事をして病まなかった者はいない。無垢な二人を暗い世界へ導いては行けないのだと、エレレを説得しようとする。
🎓「なら何の役に立ちますか?大人になっても貴方様の部屋に遊びに来る放浪者にしたいのですか?意味が分かりませんねーもしかして変態ですか?気に入った子供をずっと側に置いておきたいんですか?」
📶「それはお前だろう、"エレレ大尉"」
🎓「…ッ」
子供が好きだと言って近づき、優秀な者を選んで誘導し理想へと育てる。エレレはそうやって大尉にまで上り詰めたのだろう…まるで宗教のように子供達を洗脳して………。私の力を見誤ったのか、大尉という階級は計画的に隠蔽されていた。いや、私よりも"上"の者が双子の力を利用しようとしているのかもしれないが。
📶「教育係として承諾したのは間違えた道を歩かせないため…分かって欲しい、双子の幸せを願っているだけなんだ」
🎓「……………フフ…それ素敵ですね、羨ましいです、私の時もデジジ大佐がお側にいてくだされば良かったのに……」
エレレはクスりと笑う。
双子達に向けていた笑顔とは違う、儚い表情。
私は彼女の暗い影を見た、後悔と自己嫌悪…過去に何かあったのだろう…私はエレレの手を握る。
📶「改めて言う、二人をよろしく頼む」
🎓「…はい。お任せください…デジジ大佐…」
…
…
…
⬛「ねぇ!エレレさん!私達、将来なんの仕事が出来るかな?」
⬜「やっぱり壊したりとかなら、前線に行くんじゃない?後ろだと何も役に立てないし…」
🎓「そんなことない!お世話になったデジジ大佐をお守りしないとだめ!だから、ほら、今日は電子回路のお勉強をしましょうねー!」
End