ノンアルコール・モヒート!(11) 夜中の街を歩く。人の気配がないのを確認して、藍湛の手を握る。指を絡めて、握り返された。
マンションまでの道は、ほぼ無言だった。夜中だから静かにしなきゃと思ったし、妙に緊張していたし。藍湛は、元々無口だし。
「一人暮らし?」
マンションのエレベーターで藍湛が聞いてきた。
「うん、藍湛は?」
「兄上と暮らしている」
「仲良いんだな」
「尊敬している」
自宅の鍵を開けて中に入る。藍湛は少し緊張している様子で、靴を脱ぎ扉の鍵を締めると小さく頭を下げた。
「お邪魔します」
律儀な姿に笑ってしまった。それなりに片付けておいて良かったと思う。来客がある事は滅多にない。江澄がたまに来るくらいだ。狭い廊下の奥のリビングダイニングに向かう。
2196