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    よつば

    @chiyotsu1015
    ここだけでしか見られない絵があるとかないとか

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    よつば

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    おそらく明日には投稿できる小説の一部分です すっごく……すっごくアレ!ですが恥ずかしさもありつつ格好良さを目指しました 是非に(支部用のルビタグが変なふうに入っちゃってますが気にしないでください)

    想楽より遠く、灯台から近い位置。
    静かに佇む黒い影。その長髪が不動光に照らされ、きらきらと揺らいでいる。彼の持つ槍───rb:三叉槍 > トライデントも同じく、光を反射し金属の冷たさを放っていて、どこか不気味だ。
    だがその武器に誂えられたアイオライトは違った。彼が歩を進めるたび、少し角度が変わるだけで、色合いや深みが変わる。青から帯紫青色に、そして帯灰褐青色に。そのどれもが寒色なのに、暖かみを感じるのはなぜだろうか。まるで、いつも話を聞かせてくれる時の、好奇心と親愛に満ちた眼のように。

    「地図さえない未踏の未来、けれど心が見つけた未来。
     恐れず共に進むのは、4人乗りの小さなボートで。
     目指すはアイドル新大陸です!       」

    くるくると槍を回して、彼は高らかに宣言する。
    地からせり上がってきたライトが夏の海の水影めいて、あたり一面を照らした。

    「Legenders、古論クリス。
     ───泳ぎましょう、ネッタイミノカサゴのように!」

    堂々とした自己紹介に、緊張は欠片も感じられない。
    突然の仲間の登場に想楽は脱力し、抜けた声で呼びかけた。

    「……クリスさんー?」
    「想楽!数日振りですね」
    「まさかここで会うとは思ってなかったけどー」

    想楽は彼のもとへ走りだそうとする。しかし、クリスの背後にはあの灯台があり、灯台に向けて走ることが叶わない現象も変わっていなかった。
    早々に近づくのを諦めて、想楽は迎撃の構えをとる。クリスの槍は厄介だ。しかもこちらは杖である。武器のリーチも体躯も相手が上。やや不利な状況だが、想楽は口角を上げる。この程度のハンデで諦める程度の人間ではない。

    「上掛けを落としたら勝ちなんでしょー?心してかかってきてねー」
    「……」
    「来ないのー?」
    「……『ぎらつく剣を手に久しくも』」

    不意に何かを呟いた彼に、想楽は警戒を強める。足をぐっと踏み込んで、来るのを備えた。
    音響のない地平というステージに、足音が響く。クリスの歩みに迷いはなく、それでいて形容し難い自信に満ち溢れていると見えた。
    想楽は思う。数日前レヴューを見ていた彼は、あれほど堂々としていただろうか。

    「『訪ね求めし仇敵ぞこれ……』」

    飛び込むと決めていたのは分かっていたが、それにしては場馴れしているような、場を掌握しにかかっているような感覚を憶える。
    洗練された光輝に見えて、新たな魅力を讃えることも出来るようなキラめき。
    想楽は少し前から引っかかっていた。
    黒猫に導かれ鏡の向こうへ。目的地へうまく辿り着けない迷い子。突如現れるもう一人の存在。クリスの呟く詩。
    読み覚えがある。

    「クリスさん、何か───」

    ピン、と軽い音がした。
    その正体が即座にわかり、想楽の首筋にじわりと汗が浮かぶ。
    いつの間にか近づいてきていたクリスのrb:三叉槍 > トライデント。それが、上掛けを留めるボタンに刃を絡めていた。
    灯台の灯りは二人を照らして、光源に背を向けているクリスの表情は見えない。長髪の隙間から、爛々と光る眼だけが見える。

    「『ジャヴァウォックのいのちとりしや?』」

    金のボタンが千切られて、そして。
    上掛けは落ちない。
    クリスは器用にも、ボタンのみを奪い取り、槍の先端で想楽の衣装と上掛けの紐や繊維を絡ませ縫い合わせて、上掛けを落とさせなかったのだ。

    「……っ、なん、で。慈悲でも与えているつもり」

    想楽の恐怖は動揺から怒りへと変わる。
    二、三歩後ろへ下がり杖を構え直す彼へ、クリスは一瞬だけ悲しそうな顔をして、それからまた冷徹な表情へと戻った。

    「終わらせられた筈なのに」
    「まだ終わってはならないのです」

    クリスの手にあった想楽のボタンが、瞬きをする間に黄金の冠へと変化した。
    先程から想楽はクリスに対して、掴みどころがない違和感と仄かな苛立ちを覚えている。分からないことばかり話していても、全身全霊でこちらへ伝えようとしてくるのがいつものクリスだ。それなのに湾曲的で撹乱するような、意図の読みづらい言葉回し。まるで何かを演じているかのように、ステージで奇跡を操っている。

    「鏡の国のアリスなんだよねー?演目っていうより……テーマ?」
    「その通りです!さすが想楽ですね」
    「ありがとうー。rb:僕 > 白の歩がその王冠を奪ってrb:クリスさん > 赤の女王に勝てば、rb:レヴュー > チェスも終わり?」
    「ストーリーラインをなぞっても、そうでなくとも構いません。思う流れに身を任せてください」

    クリスはすっと、rb:三叉槍 > トライデントを地面に立てる。気がつけば、舞台には均等に線が引かれていた。幾つもの十字の交差は、チェス盤を模しているように見える。
    想楽は引かれた線を踏みつけて、クリスを見据えた。

    「さあ───期待していますよ、想楽」

    彼の意図は未だ読めない。
    この場で分かり合うためには、ペンより刀が相応しいようだ。

    「その期待は『Showdown the best game』?」
    「ええ。良いステージに」


       波瀾のレヴュー
    𝑹𝒆𝒗𝒖𝒆 𝒔𝒐𝒏𝒈/𝖡𝖾𝗍 𝗒𝗈𝗎𝗋 𝗂𝗇𝗍𝗎𝗂𝗍𝗂𝗈𝗇
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