手とて いつだったか、初めて握手した時。それがキミの手に触れた初めての日だった。ちょっとだけ汗ばんで湿っていた。ふっくらとしてちぎってふたつに割った焼き立てのバターロールみたいなあたたかさと柔らかさだったな。
これを言えばキミは嫌がるんだろうな。
そのつぎはいつだったか。ああ、しっかり覚えてるぜ。冬の日だったな。
キミの手は普段からちょっとひんやりするんだろうな。寒さにとことん影響されて枯れ木かと思った。……枯れ木は嘘だがささくれて少し節が目立っていたのは本当だな。無理矢理カフェに引っ張って行って、火傷してしまいそうな程の熱さのカップを持ったキミの指はみるみるうちに赤くなったな。
キミの家に初めて行った時は、ほんの少し触れただけだったな。
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