「動かないで」
星々が空を彩る時間、眠る前にと本を読んでたファルガーに浮奇が唐突に告げる。寝巻き姿の浮奇は白い脚を晒すショートパンツで、いくらもこもこした素材の冬のパジャマとはいえ風邪を引くのではと心配になる。寝る前は膝掛けやら靴下やらで覆われていても寝る時はそのままなのだから、金属で出来た冷たい脚を触れさせることのないように他の時季よりも早くベッドに入っている、なんて浮奇は知らないだろうけど。
とにかく、ファルガーは持っていた読みかけの本を置いて、浮奇に向かって両手をあげることで降参を示した。満足そうに笑った浮奇は、近づいてきたかと思うと「手を出して」とにこやかに要求を重ねる。抱きしめて欲しいのかと思い伸ばした腕は柔らかな身体を引き寄せることなく、そっと手首を掴まれて両腕を纏められた。視線だけで問い掛ければ笑みを深めた浮奇が、ファルガーの手首をどこから持ってきたのか分からないもこもこ素材の細いベルトのようなもので縛り始めた。
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