No title #2――6月
世間一般では「梅雨」といわれるこの季節。
長く続く雨とは関係なしに浮奇の心は沈んでいた。
「ふーふーちゃんが構ってくれない…」
触覚を縮めたかたつむりのごとく、頭を抱え込んだ浮奇の前に置かれているのは学食の人気サイドメニュー「季節の野菜スープ」、今の時期は春キャベツのポタージュである。
5月初頭、浮奇が初対面にも関わらず熱烈な告白をした相手。ふーふーちゃんことファルガーはこのところフィールドワークに夢中で昼食時、五人の恒例となった集まりにも顔を見せないことが多くなっていた。
写真科のファルガーは基本的に学内での講義がメインの音楽学部や芸術学科とは違い、講義中でも被写体を求めて校外に出ていることがあり、座学が無ければそのまま直帰することも珍しくなかった。
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