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    ミカド

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    ミカド

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    写真について話す彰冬+杏(不在)こは 二組とも同棲して指輪してる💍

    ##彰冬
    #彰冬
    akitoya
    ##杏こは
    #杏こは
    ankoha

    写真/彰冬+杏こは お昼に東雲くんと青柳くんと合流して、ふたりの家から近いレストランに入った。杏ちゃんは用事があるみたいで、到着までもう三十分くらいはかかるみたい。オープンしたてだからお店に入るまですごく混んでたけど、東雲くんたちがここのお店はなんでも美味しい、って言ってたから、私は待っている間もずっとワクワクしてた。
    「杏が来るまでは飲み物でいいか。先に食うとあいつうるさそうだし」
    「んー…。そしたら私が杏ちゃんと一緒に注文するよ。朝ご飯食べるの遅かったし、そんなにお腹空いてないんだ。ふたりは先にどうぞ」
    「まぁ、それならいいか。悪いな」
    「…では俺も、お言葉に甘えよう。実は朝食を食べ損ねてな。かなり空腹なんだ」
    「そうだったの? じゃあ、東雲くんも?」
    「いや、オレは食った。冬弥は寝坊したんだよ」
    「ああ。…アラームをかけ忘れたんだ。彰人は俺の分の朝食も作ってくれたんだが、手をつけれずに冷蔵庫へ戻してしまった…」
    「あ…」
     ——合流した時から青柳くんの元気がないなっていうのは少し感じてて、てっきりお腹が空いているせいなのかと思ったけど、ご飯を作ってくれた東雲くんへの申し訳ないっていう罪悪感からきてたんだ…。
     椅子に座ったままどんどん俯きになっていく青柳くんに、隣に座る東雲くんが肩に腕をまわす。青柳くんの左肩に触れる東雲くんの左手。その薬指には真新しい指輪が輝いていた。
    「だーから、気にすんなって。お前、曲作りのためにここ最近ずっと寝不足だっただろ? ふたりぶんの飯作るくらい苦だって思わねえし、少しでも寝かせてやりたかったんだよ」
    「彰人…」
     東雲くんの言葉に、青柳くんの顔が上がる。身体に触れながら言ってくれるんだから、きっとすごく安心感を覚えるんだと思う。顔を見合わせて笑いあうふたりに、私までつられた。杏ちゃんもよくああやって私を励ましてくれるから、その時のことを思い出すなぁ。
    「じゃあ私、ちょっと御手洗に行ってくるね」
    「おう」
     バッグからハンカチを持って席を立つ。歩きながらお店のレジの壁掛け時計を見てみたら、杏ちゃんが来る時間が迫っていた。仲のいい東雲くんたちを見ていたから、私も杏ちゃんに会いたくなっちゃった。
    「……?」
     突き当たりのテーブル席を曲がったところで、遠くの方で「小豆沢」って呼ばれたような気がした。
     立ち止まって振り返ると、椅子から腰を浮かせた青柳くんが立ち上がろうとしている——ところなのかな。中腰になって座ったままの東雲くんとなにか話してた。
     席に戻ろうとしたけど、こっちを向いた東雲くんがジェスチャーで「大丈夫だ。先に行ってこい」って感じのことを言ってくれたから、私は踵を返した。


    「——さっき、青柳くんが私のことを呼んだよね? どうしたの?」
    「お前のスマホが鳴ってて、冬弥がそれを知らせようとしてたんだよ」
    「あぁ。もしかしたら白石からかもしれないと思ってな」
    「え?」
     ハンカチをしまいながら、テーブルに置いたままにしていたスマホを見る。通知は杏ちゃんじゃなくて、お母さんからの電話とメッセージだった。
    「杏ちゃんじゃなくてお母さんだったみたい」
    「…そうか。すぐに切れてしまったが、折り返した方がいいんじゃないか?」
    「ううん。電話が切れた後に掛け間違えた、ごめんねってメッセージが来てるから平気みたい。知らせてくれてありがとう」
     ふたりは注文をし終えたみたいで、テーブルに広げてあったメニュー表は向かいの私たちの方へ置いてくれてた。一番上のランチメニューが目に入って、オムライスとスープパスタが気になる。杏ちゃんはオムライスにすると思うから、もし当たってたら私はスープパスタにしようかな。
    「…小豆沢」
    「うん? 青柳くん?」
     テーブルの上で両手を結ぶ青柳くんに、私はお冷を飲みながら返事をする。
    「その…先ほど小豆沢を呼ぶ際にスマホの画面を見てしまったんだが、……俺の勘違いでなければ、その写真の人物は白石、だろうか…?」
    「スマホの画面…」
    「うお、マジかよ? オレもチラッと見えただけだけど、赤いドレスを着た人の後ろ姿じゃなかったか?」
     スマホの画面、赤いドレスを着た人の後ろ姿、って言葉に、私はようやくスマホのロック画面の話だってことに気がついた。私はスマホを回して、ふたりに見せるように置く。
     画面をタップすると、ロック画面に設定してる赤いドレスを着た髪の長い人の後ろ姿が映し出される。時間の表示に被らないように大きさは加工はしているけど、写真自体には手をつけないようにしていた。
    「そうだよ、これ杏ちゃんなの! フォットウエディングで撮った時のものなんだ。……でも、よく杏ちゃんだってわかったね? 後ろ姿だし、ドレスや髪型もアルバムには入れてないものだったけど…」
     三ヶ月前の杏ちゃんの誕生日。私たちはフォットウエデングを撮った。アルバムは東雲くんたちに一冊贈ったから、私がドレス姿の杏ちゃんの写真を持っていることに対して疑問を覚えないんだろうな。
    「後ろのステンドグラスに見覚えがあってな。……と、かなりじっくり見てしまっていたな…。本当にすまない」
    「ううん。ロック画面に設定してたし、私もスマホを置きっぱなしにしてたから、青柳くんが悪いわけじゃないよ!」
     せっかく東雲くんが元通りにしてくれた青柳くんの表情がまた暗くなっていって、自分の声が上擦るのを感じた。
     反対向きのまま指紋認証でロックを解除して、画像フォルダーのアプリを開く。三ヶ月前の日付まで遡った。画面一面に赤色のドレスの写真が表示される。
    「…めちゃくちゃ撮ってんな」
    「この写真はすべて白石なのか?」
    「う、うん…。このドレスを着た杏ちゃんすっごく綺麗だったから、どれも大好きなんだ。後ろ姿ならいいかなと思って、杏ちゃんに許可をもらったの」
     私の説明に青柳くんは頷いて、東雲くんは目を細くしながら画面をじっと見つめてる。
     ——こんなに写真を保存してるなんて、杏ちゃんには恥ずかしくて言えてないから、ふたりなら大丈夫だとは思うけど、バレたらなんて言い訳しよう…。
    「あ〜……たしかに…、よく見たら…杏、かもな。まぁ、こはねのスマホだから前情報がなくても消去法でわかるヤツはいそうだけど」
    「全体的に髪の毛を巻いてるし、少し暗い場所だからわかりづらいよね」
    「なんで冬弥はこれが杏だってわかったんだ?」
    「小豆沢たちからいただいたアルバムに、ふたりが手を繋いで笑っている写真があっただろう? 俺はあの写真からふたりの幸せを感じられて、とても気に入っている。後ろのステンドグラスから零れる光が綺麗で、それで印象に残っていたんだろう」
    「あー、あれな。たしかにいい表情してたな」
    「えへへ…照れるなあ…。私も杏ちゃんもあの写真が好きで、家のリビングにも飾ってるんだ。いまふたりが言ってくれた言葉、杏ちゃんにも伝えていいかな?」
    「俺はかまわない」
    「オレも。…まぁ、調子に乗るのは目に見えてるけどな」
    「あはは…」
     会話がひと区切りついたところで、ふたりが注文したホットケーキとサンドウィッチが届いた。セットドリンクにしたみたいで、その後でコーヒーがふたつ運ばれてきた。
    「じゃ、先にいただくな」
    「悪いな。小豆沢」
    「ううん。…でも、少しお腹空いてきちゃったかも」
    「杏に早く来いって言えよ。お前が催促すれば、かっ飛ばして来るだろ」
    「うん…今日は電車を使ってるみたいだから、時間通りになるんじゃないかな」
    「ふふ…」
     斜め前の東雲くんと会話をしていると、正面の青柳くんが口元を覆って笑った。「冬弥…」って片眉を下げて微笑む東雲くんはすべてを察したみたいだけど、私はわからなくて首を傾げる。
    「いや、すまない。…小豆沢も白石も、俺たちと知り合った頃から変わらないなと思ってな。ずっとラブラブで微笑ましいな」
    「…っ!」
    「お前…よくそんな恥ずかしいことを…」
     青柳くんから見た私たちの姿に、顔が赤くなるのを感じた。人からラブラブだね、って言われるのはいつまでも慣れない。
     大好きなひととお揃いで買った左手の指輪をなぞって、顔の熱が引くのを待つ。でもそうしてたら杏ちゃんのことを考えはじめちゃって、東雲くんに「茹でダコになってんぞ」って指摘されちゃった。
    「人から〝恋人とラブラブ〟と言われるのは嬉しいものだからな」
    「…ふーん。冬弥も、誰かに言われたのか?」
    「この間、彰人のご実家にお邪魔させてもらっただろう? その時にご両親や絵名さんからな」
    「いつの間に…。ヘンなこと吹き込まれてねえよな?」
    「? あぁ。どうやら、彰人は俺といる時は表情がやわらかくなるらしい。あの彰人を骨抜きにするなんてなかなかやるな、と賞賛のお言葉をいただいた」
    「……最後のはぜってえ絵名だろ」
    「ご両親や絵名さんからそう言われるってすごいね」
     ナイフとフォークを持ったままじわじわ顔を赤くしていく東雲くんと、コーヒーを飲みながらその時のことを嬉しそうに語る青柳くん。恋人としてのふたりの甘い空気感ってなんだか珍しいから、あまりの新鮮さに私も心が踊る。
    「さっきの私たちのフォットウエデングの話の続きになるんだけど、ふたりは写真とかないの?」
     もっとふたりの話を聞いてみたくて、杏ちゃんの写真を見てた時から考えていた話題を振る。クリーム色になったコーヒーを飲みきった東雲くんが、「ない…ことはねえが、最近は全然だな」って少し歯切れの悪い言い方をしたけど、その隣から青柳くんが「あるぞ」って即答。
    「は、はあ いつのだよ」
    「昨日絵名さんに送っていただいたものが……」
     スマホを操作する青柳くんに、東雲くんが横から覗き込む。髪の毛がかかるくらいの近距離に、向かいの私がドキッとした。
    「あった。これだな」
    「…おい、まてまて! なんか他にもいろいろなかったか」
     テーブルの上にはお皿があるから、スマホは私の近くに置いてくれた。画面に表示されている画像は、少し遠くから見た私服姿の東雲くんたちの後ろ姿だった。向かいに一軒家が並んでるから、どちらかのご実家の玄関から撮ったものかな。あぁ、でも絵名さんが送ってくれたって言ってたし、東雲くんのご実家で絵名さんが隠し撮りしたもの、って考えていいかも。
    「絵名さんや暁山が、よく俺たちが一緒にいるところを撮ってくれるんだ。後ろ姿や横からのものばかりになるが、通行人はきちんと加工して見えないようにしてくれている。メッセージで送られてきても画像の保存期間があることを最近知って、…何枚かは消えてしまったが、今年のものはすべて保存できたんだ」
    「えっと…どれも着ている服や場所が違うから、街で見かけるたびにふたりを撮ってるのかな?」
    「うげっ……どんだけあんだよ。盗撮じゃねえか…」
     画面をスクロールして見せてくれたけど、本当にたくさんあった。もしかしたらからかうつもりもあるのかもしれないけれど、こうして何十枚も撮ってくれるってことは、ふたりが周りのひとたちに愛されてる証拠だと思うな。
    「小豆沢がお気に入りの写真を見せてくれたから、俺も紹介したい。俺と彰人が写っているこの写真なんだが——」
     空になったお皿を端に避けた東雲くんは、椅子から腰を浮かせて、ものすごい勢いで画面を覗き込んだ。私は少し遠くから眺める。
    「これって…高校の時のふたりの写真?」
     青柳くんが見せてくれたのは、神山高校の制服を着たふたりの自撮り写真だった。東雲くんは卒業してから髪を切って、青柳くんは伸ばしているから、高校生のふたりの写真はなんだか懐かしい。
    「…なんだそれか……。最近ふたりで撮った写真なんてねえから、記憶を遡った」
    「三年生の最後の昼休みに、彰人と屋上で昼食をとった時のものだ。あの時は屋上に大勢いて、この一枚を撮るだけでも大変だったな」
    「だな。それに少し風もあったから、止むまで待ったりしたよな。高校生活で一番賑やかな昼休みだった」
    「そっか…。卒業式じゃなくてお昼の写真っていうのがいいね」
    「ああ。結局三年間クラスは別だったが、学校で彰人と過ごした時間はすごく楽しかった。誰かとご飯を食べて、友人たちと談笑をして、放課後にクラスメイトと寄り道をしたりと、学生らしい経験ができた。彰人のおかげで、俺は高校生活も充実できたんだ」
    「……そうかよ。まぁ…、お前がそう思ってくれてんなら、オレとしちゃ本望だけどよう」
    「大切な思い出なんだね。私までその情景が浮かんできちゃうな」
     通り掛かった店員さんがふたりの空いたお皿を片付けてくれた。青柳くんはコーヒーをおかわりするみたい。
    「——あ! ねぇ、ふたりって最近は写真を撮ってないって言ってたよね? いま撮ってみたらどうかな?」
    「いまって……ここでか?」
    「また唐突だな…」
    「ほら、写真ってその瞬間にしか撮れないでしょ? だから私、杏ちゃんと撮ったものは例えブレてたとしても消せないんだ。お皿…は下げられちゃったけど、後ろの壁に掛かってる観葉植物も入れてみたらいい感じになると…——」
     自分で喋りながら、だんだんすごく強引なことを言っていることに気がついた。写真の魅力については良しとしても、それを押しつけるのは間違ってる。私は写真を撮るのが好きだけど、さっきの反応や普段の様子を見た感じ、東雲くんたちは大事な日に思い出として残すタイプみたいだし。
    「ご、ごめんね…! いまのは…」
    「あー…。なるほどな」
    「し、東雲くん…?」
     顎に指を添えた東雲くんが、なにか納得したようにこくこく頷く。青柳くんも二杯目のコーヒーを飲みながら目元をやわらかくしてた。
    「そういう強引なところ、杏に似てきたよな」
    「ああ。たしかに…そうかもな」
    「え わ、私が杏ちゃんに…?」
    「一緒に居すぎてうつったんじゃねえの? お前、無茶ぶりとかされても、嫌なら嫌ってちゃんと言うんだぞ。あいつ、こはねの言うことならなんでも聞くしな」
    「えぇ…杏ちゃんやさしいから、私が嫌だって思うことはしないよ?」
    「へぇー。こはねには、そうなんだな」
    「こら彰人」
     ひさしぶりに見たちょっと悪い顔をする東雲くんに、息をついた青柳くんが肩に手を置く。
     私は杏ちゃんからの無茶ぶり、嫌だと思ったことをもう一度思い返してみるけど、やっぱりなかなか思いつかない。だって、大好きな杏ちゃんの望みはなるべく叶えてあげたいと思うし、杏ちゃんにされて嫌なことなんてなにもない。
    「…まあ、こはねの提案もいいかもな。冬弥、オレのスマホで撮ろうぜ」
    「彰人が撮ってくれるのか? お前は自撮りが上手いから頼もしいな。俺も彰人との写真をスマホの画面に設定してもいいだろうか?」
    「…別にいいけど、ロック画面はよせよ? お前のスマホを見た共通の知り合い全員にいじられる気がしてならねえ」
    「ふふ…ありがとう」
     スマホの画面で前髪を整える東雲くんに、青柳くんとの自撮りに緊張してるんだろうなって思った。
     私も杏ちゃんが来たら、一緒に写真を撮ろうって言ってみようかな。
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