魏嬰が小さくなる話「誰も取らないからちゃんと持っていて」
藍忘機は羨羨の抹額を持つ小さな手を優しく包み込む。その目には幼い道侶しか映っていないに違いない。
「ほんと?」
「うん」
「らんじゃんだいすき!」
「私もだ」
「きゃー!」
羨羨は藍忘機の首に飛び付くと、ぐりぐりと頭を擦り付ける。仕草はとても可愛らしいし、微笑ましいのだが、(いつも似たような光景を)見せられる方はたまったものではない。
目の前で繰り広げられるやり取りに、真っ先に我に返ったのは藍思追だった。こほん、と聞こえるように咳払いをして笑顔で告げる。
「含光君、ご一緒しても宜しいでしょうか?」
「構わないが……」
表情こそ変わらないものの、玻璃の瞳には困惑が浮かんでいる。当然、藍思追と藍景儀が付き添う必要はない。そう、心配なのは藍忘機と羨羨ではなく、藍景仁だ。
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