狐と狸の化かし愛 知らない天井だ。シミの付いた低めのそこは、三井の家ではありえない。のそりと起きて、自分の体を見下げる。全裸。の上に、明らかに情事のあとがびっしりと付いていた。ひく、と口元が震えた。
「あ、ミッチー起きた?」
ひょこ、とベランダから男が顔を出してくる。口に咥えていたタバコを灰皿に押し付けて、捨ててしまう。まだまだ吸えただろうに。
部屋に入ってきた、髪を下ろすと途端に幼くなる男を見つめて、三井は気まずげな顔を作った。
「あー、悪い水戸。その、俺昨日スゲー酔ってて……」
「あ、そなの?もしかして記憶飛んでる?」
「……わりぃ」
嘘である。
バッチリ残っている。三井は嘘つきであった。
水戸に対する恋心を拗らせ続けて早10年。親友の先輩という微妙な立場で水戸となんとか関わりを持ち続け、ついに我慢ができなくなった。我慢ができなくなり、せめて体だけでもという結論に至った三井は、ちょうどよくやってきた飲みの機会に、水戸の家に入り込んでやったのである。
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