とっておきの気持ちを込めて「よかったのか、これで」
　ノリノリで連れてきておいてなんだが、実際のところずっと落ち着かない。
「僕、ほんとうにお嫁さんになっちゃうんっすね」
「お前、えらく機嫌いいな」
　故郷に帰ってきた日、父親に直接報告した。もともと事前に伝えていたので否はなく、はれてニキとの婚約が了承された。
「だって今までは、周りに認めてもらえないからって拒んでたところがあったけど、そういうのがなくなったらなんの壁もないっていうか、だからもう嬉しくて」
　こちの衣装を身にまとい、ウキウキした感情を隠さないところがかわいいと思ってしまう。
「じゃあ、ちょっと話があるからここで待ってろ。お茶うけは好きに食べていいから」
「え、こんなにいっぱい僕一人で食べちゃっていいんっすか」

【燐ニキ】夜之渊是柔软的梦　　那是一个潮湿的夜。
　　梅雨季的前奏，雨下不来，湿漉漉的黏腻气息囤积于大气之中，连呼吸都显得格外厚重。
　　椎名ニキ半夜翻身莫名醒了，记不清做了什么梦，只知黏黏糊糊的一片黑暗，风扇依旧尽责地咿咿呀呀来回运转，却没有半分降温的功效。
　　倏地注意到隔壁床位似乎缺少了同居人的气息，他猛然睁开眼，想也不想地跑出了卧室，凭借深夜街道映入屋内的微光，椎名ニキ看见阳台上朦胧的人影，微小的火光于半空移动，令他想起于夏日田间飞舞的萤火虫。
　　似乎注意到远远站在起居室遥望着的他，那人旋过身来，说道：「抽完这支就进去。」
　　嗓音不大，但廉价的落地窗玻璃与宁静的夜未能阻隔，因而清晰流入椎名ニキ的耳中。
　　由于尼古丁伤害咽喉，除去与重要人物应酬之外天城燐音甚少吸烟，但他莫名觉得，这或许并不是对方在这段期间内初次吸烟。