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    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

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    おもち

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    lucashu。付き合ってる二人。

    #lucashu

    唐突に降り出した雨は傘を持っていなかった僕たちをビショビショに濡らし、雨宿りをするためにそこから近かったルカの家に駆け込んだ。
    「シュウ! 風邪引いちゃうからお風呂入って!」
    「え、いいよそんな、タオルだけ貸してもらえれば」
    「こんな濡れてたら拭いたって意味ないよ。お風呂に入ってる間に洗濯するから乾燥が終わるまで雨宿りしてって? それともこの後急ぎの用事がある?」
    「それは、……ないけど、でも」
    「でもは禁止! 決まりね! とりあえず俺の服貸すからお風呂出たらそれを着て」
    「ルカが先に」
    「だーめ。俺は体が丈夫だから後でいいの。はい、もう、ワガママ終わり! ほらお風呂! バスタブにお湯も溜めてしっかりあったまって! タオルと着替えはあとで置いとくからね!」
    「ワガママって……」
    強引なルカに背中を押され、脱衣所に突っ込まれる。扉を閉められてしまえばお風呂に入るしか選択肢がなかった。
    濡れて肌に張り付いた服を脱ぎ、空の洗濯機の中にそれらを放り込む。ルカも服を脱ぐだろうから電源はそのままで僕は浴室に入った。体を洗い流してお湯に浸かると冷えた体が温まり、確かにタオルで拭いただけじゃ風邪を引いていたかもしれないと思った。でもそれならやっぱりルカも同じだよ、丈夫だって言ったってルカも同じだけ濡れてるんだし、体は冷えているはずだ。
    ガチャッと物音がして振り向くと、磨りガラスのむこうに人影が見える。ルカがタオルとかを持ってきてくれたんだろう。もう服は着替えたかな、僕のことなんて放っておいて自分のことを考えて欲しい。
    「シュウ〜」
    「っ! はぁい!」
    「あはは、大丈夫? ビックリさせてごめんね。服とタオル置いておくから使って。それとシャンプーとかも置いてあるの適当に使ってね」
    「う、うん。……えっと、ルカ」
    「うん?」
    「寒くない? 僕はもういいから、ルカも早く入ったほうが」
    「……しゅーう」
    ルカのシルエットがこちらに近づいてきて、磨りガラスにちょんと指を突き刺した。扉越しの籠った声じゃなくて、ルカの優しい声を直接聞きたいな。
    「シュウは俺のことじゃなくて自分のことを考えて。体はちゃんと温まった? あんまり早く入れって言うなら今すぐ入っちゃうけど?」
    「え! い、いや、それは、……だ、だめ、なのかな……?」
    「……ダメって言って」
    「……じゃあ、だめ」
    「うん。俺はホットミルク飲んでおくから、シュウはゆっくり温まって。オーケー?」
    「オーケー……」
    「サンキュ」
    一緒に入るのはダメだよね。……だめ、なのかなぁ。
    僕たちは付き合っていて、今日も二人でデートをしていた。キスはしたけどまだそれ以上はしたことがなくて、でも、そろそろ次に進んでいいと僕は思うんだけど……。なにもエッチなことをしようと言ってるわけじゃなくて、お風呂に一緒に入るくらいなら……だめなのかな? 僕はルカのタトゥーを全部見たいし、筋肉もかっこいいでしょ。僕の体はあんまり見所がないかもしれないな。かっこよさも可愛さもないあまりにも普通の体つきだ。でも見られるのが恥ずかしいとかはないし、僕はルカの全部を見たい。
    ……とか、思ってたら、自分の考えにじわじわ恥ずかしくなったから僕はバスタブから出て、シャワーの温度を下げて頭からぶっかけた。ルカの裸が見たいなんて、やっぱりちょっと良くないかも。じゃあお風呂に一緒に入るのも良くないかな、……良くない、かも?
    せっかく温めた体を少しだけ冷ましてから、僕はお風呂を出てルカの置いて行ってくれたタオルで体を拭き、見覚えのあるTシャツに腕を通した。あ、これ、ルカの匂いがする。スウェットはウエストの紐をギュッと締めて縛り、裾を捲ってなんとか着ることができた。ダボダボの服にルカの体の大きさを教えられている気分だ。身長はそんなに変わらないはずなのに、僕と並ぶとルカはすごく大きく見える。ぎゅうって抱きしめられたら全身包まれるみたいだもん。
    「お待たせ、服もありがと。ルカも早くお風呂に入ってきて」
    「……わお」
    「うん?」
    「……いや、ええと、……悪口じゃなくってね、シュウって小さいんだなって思って」
    「え?」
    「だって俺の服、そんなにぶかぶかになっちゃうと思ってなかったんだ。可愛い……」
    「か、かわいい?」
    「彼シャツってやつだよな、今初めて良さが分かった。……あー、お風呂ね、うん、俺もお風呂入ってくる。冷蔵庫勝手に開けていいし好きに食べたりしてていいよ」
    「あ、うん……、……?」
    ルカが何を言ったのか理解する前に彼はお風呂に行ってしまった。一人残されてソファーに座り、ルカの言葉を頭の中で思い出す。
    僕が、小さくて、可愛くて、彼シャツの良さが分かった、とか、なんとか。……小さいというのはちょっと引っかかるけれど、褒められたと思っていいのだろう。
    彼シャツ、そうか、これが。ルカが着ると二の腕の途中までしかないTシャツは僕の肘を覆い隠しているし、スウェットもだいぶサイズが合っていない。こんなに脚の長さが違うのか……ってちょっとショックを受けていたけれど、どうやらルカは喜んでくれているみたいだし、いいのかな。
    冷蔵庫を勝手に開けていいと言われたので遠慮なく中を覗き、目の前にある牛乳を見てルカがホットミルクを飲んでいたことを思い出した。僕も少しだけ飲もうかな。棚からコップを借りて半分くらい牛乳を入れ、電子レンジに入れる。何十秒か温めて出したそれを持ってソファーまで行き、飲みながらルカが戻ってくるのを待った。
    ルカの部屋には何度か来たことがあるからそこまで緊張もないはずなんだけど、お風呂上がりにルカの服を着て、今ルカがお風呂入ってるって、……ちょっとドキドキするかも? 意識したら顔が熱くなってきた。
    「ふー、あったまったー」
    「わ、もう出たの?」
    「もう出ちゃった。ホットミルク? お茶もなんかあったと思うけどそれで大丈夫?」
    「うん、だいじょうぶ」
    「うーん……、シュウ、何か隠し事?」
    「え!」
    「顔が赤いよ。のぼせちゃった?」
    自然に僕の隣に座って、ルカは指の背で僕の頬をそっと撫でた。そんなことしたら余計に顔が熱くなるって!
    顔を背けようとしたけれどルカがいつのまにか僕の顎をガッチリ掴んでいた。ジッと見つめられてドキドキする。ルカはまだ濡れている髪を大雑把に後ろに流していて、いつもと違う様子は余計に心臓に悪かった。
    「シュウ?」
    「……なにも、隠してなんて」
    「そう? じゃあ真っ直ぐ俺の目を見て?」
    「う……。……や、やだ」
    「やだ?」
    「すごく照れる……!」
    「……よかった。俺のことなんか嫌になっちゃったのかと思った」
    「そんなわけない、逆に、あ、いや」
    「逆? ……シュウ、逆に、なに?」
    ああもう、ルカが押せ押せモードだ。マインクラフトをして無邪気にはしゃいでいるゴールデンレトリバーに戻ってくれ。顔を逸らせないならせめて、とギュッと目を瞑ったら、僕のことを掴んでいたルカの手がピクッと震えた。そのまま離してくれれば良かったのにむしろ手に力がこもって少しも動けなくなってしまう。いつもは無駄に回る頭が全然動かなくて、僕は自作の暗闇の中でルカの気配にだけ思考を奪われる。いつもより呼吸の間隔が長いな、とか、そんなどうでもいいこと考えている場合じゃないんだって。
    ルカが近づいてきたと思った時にはもう唇に何かが触れていて、数秒遅れてキスをされていることを理解した。それからもしかして自分はずっとルカにキス待ちだと思われていたんじゃないかと気がついて、またぶわっと体温が上がる。雨で濡れて冷えていた体は、お風呂に入らなくても良かったんじゃないかと思うくらいにもうポカポカだ。
    シュウ、と名前を呼ばれ、僕はそっと目を開けた。
    「シュウ、あんまり可愛いことしないで。困る……」
    「……えっと、……なんで困るの?」
    「シュウに嫌なことしたくないもん」
    「嫌な、……それってたとえば?」
    「は? それは、……あんまり言えないようなこと」
    「……たぶん僕が思ってるのとそんなに違わないと思うんだけど、もし同じなら、嫌なことじゃないから、あの、……して、いいよ?」
    「は、……キスだけじゃないよ?」
    「うん、たぶん、分かってるよ……?」
    「……」
    目を丸くするルカの頬に手を伸ばす。体温が高い理由も、僕と同じだったらいいな。僕が顎を引く仕草をするとルカは僕から手を離した。ありがと、と囁いてルカに顔を寄せる。自分からキスするのは未だに慣れないや。唇が重なる直前に目を瞑り、うまくできたことに安堵した。ルカの戸惑ったような呼吸ごと食べたら、ルカは僕に触れてくれるかな。
    「……お願いがあるんだ」
    「うん? なぁに」
    「やだなって少しでも思ったら教えて。絶対に、約束。……シュウに嫌な思いはさせたくないし、嫌われたくないから」
    「……ルカにされて嫌なことなんてないと思うけど、オーケー、わかった。あ、それじゃあ今、一個いい?」
    「うん」
    「僕のことを気遣い過ぎないで? ルカより小さいけど、僕も男だよ。それもルカのことを大好きな男だ。本当に嫌だって思ったらルカのことを蹴飛ばせるよ、絶対そんなことないと思うけどね?」
    「……わかった。シュウも約束だよ」
    「うん、約束。だから、ルカの好きにして。僕はそれがいい」
    「ぐ……煽らないでよ……」
    「だってもうずっと、頭の中ルカでいっぱいなんだもん。服のせいかな、ルカの匂いでちょっと、えへへ、興奮してるのかも?」
    ぐっと眉間に皺を寄せて、ルカは僕のことを抱きしめた。耳元で「かわいすぎる……」って唸り声混じりに聞こえてこっそり笑う。僕のことをすごく大事にしてくれるルカだって、めちゃくちゃ可愛い。
    背中に腕を伸ばしてぎゅうっと抱きしめるだけで心が温かくなる、けど、もっとドキドキすることだって、ルカにならされたいんだよ。イタズラする時みたいに強引に、楽しそうに、僕のことを振り回してよ。
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