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    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

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    おもち

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    mafiyami。🔮(🐏に片思い中)もいます。両片思いがくっつく話。

    #mafiyami

    「めちゃくちゃ優しくて一緒にいると楽しくて、俺のこといつも気にかけてくれるし甘やかしてくれるんだもん。好きにならないほうが無理だって思わない?」
    いつも以上に甘くとろけた声は彼の手の中にある赤ワインが原因だろう。食事中は少し機嫌が良いな、くらいのテンションだった浮奇は、デザート用に買ったアイスを食べ始める頃には誕生日席だった一人がけのソファーから大きめな二人がけソファーへと移動して、アイスが溶けるより早く姿勢を崩して隣の人に寄りかかっていた。
    「あはは、浮奇、めちゃくちゃ酔ってる〜」
    「ねえ聞いてるのルカ。好きになっちゃったの! どうすればいいかな」
    「まずはルカから離れればいいと思う」
    僕がポツリと呟いた小さな言葉は酔っ払い二人には届かず、浮奇とルカは変わらずくっついたまま酔っ払いらしく噛み合っていない話を続けた。
    ねえ、浮奇、キミがくっついているその人は、僕が好きな人だってことはキミには話をしてあるはずなんだけど。じとっとした目で浮奇を見て、僕は目の前にあったグラスを手に取り半分ほど残っていたお酒を煽るように飲んだ。
    「わお、シュウ、そんなに飲んで平気?」
    「平気じゃない」
    平気じゃないけど、浮奇と話してたと思ってたルカが向かい側に座る僕のことを見ていてくれたのは嬉しい。僕は浮奇を睨んでいた視線をルカに向けた。赤らんでいる頬がお酒のせいだと分かっているけれど、どうしてもルカにくっつく浮奇が僕の心を刺激する。
    「ルカ、こっちきて」
    「え?」
    「だめ、いま俺の話聞いてもらってるでしょ」
    「僕もちゃんと浮奇の話聞くから。話し相手がバラバラに座ってるより向かい側で固まってたほうが話がしやすいよ」
    「……そうかも?」
    「そうなの。ねえ、だから、ルカはこっち」
    ぽんぽんと僕は空いている隣のスペースを叩いた。ルカはちょっと驚いた顔をしながら立ち上がって僕の隣にやってきてくれる。浮奇みたいに可愛くないけど、僕も少しだけ酔ってるから、酔ったフリしてくっついてみてもいい?
    「ルカ、グラスからっぽだよ、次なに飲む?」
    「え、あ、ええと、シュウはなに飲んでるの?」
    「うんと……梅酒? だったと思う。ちょっと甘い。美味しかったからもう一杯飲もうかな」
    「じゃあ俺もそれにする」
    ペロリと舐めた唇の味で判断してそう答え、ルカの言葉に笑みを返して空いているグラスに梅酒を注ぐ。浮奇は赤ワインを自分で注ぎ足してソファーに寄りかかりながらとろんとした瞳でそれを飲み続けていた。
    「ねえ、どうやったら好きなのをやめられる? おれ、ふーふーちゃんのこと本気で好きになるの怖いよ」
    うるうると美しく夜空の瞳を潤ませて、浮奇は寂しそうにそう言った。
    どうやったら、好きだって気持ちを消せるんだろう。そんなの僕だって知りたいよ。ただの友達でいたいのに、一緒にバカみたいに笑って楽しい時間を過ごすだけで幸せだったのに、彼を独り占めしたいだなんて醜い心、いらないのに。
    「やめなくていいじゃん」
    「え……」
    「……やめなかったら、困るもん」
    「なんで? 好きだって言えばいいじゃん」
    「ふーふーちゃんに迷惑かけたくない……」
    「どうして浮奇がファルガーのこと好きだと迷惑になるって思うの? ただ好きなだけだろ。好きだから他の人と話さないでとか、好きだから殺したいとか、そういうのだったら困るかもしれないけど、浮奇はそうじゃないでしょ」
    「……せっかく今は他の人より近くにいられるのに、好きだなんて言ってふーふーちゃんが離れていっちゃったら、やだ……」
    僕はもう今すぐに浮奇のことを抱きしめて分かるよと言って一緒に泣きたいくらいに全く同じ気持ちだった。浮奇の質問に答えるルカの言葉はそのまま僕の心にも届いてしまう。
    好きなのをやめなくていい、なんて、そんな簡単に言わないでよ。こんな気持ち絶対ないほうがいいんだ。
    「好きだったからってそんな簡単に離れないよ。例えば浮奇が今、実は俺のことを好きで好きで仕方ないんだって言っても、俺は驚くけど浮奇のことを嫌いになったりしないよ。俺がそうなんだから、ファルガーだってそうだと思わない? それからどうしていくかは浮奇一人じゃなくてファルガーと二人で考えることだよ」
    「……俺とルカじゃそうかもしれないけど、……でも、じゃあ、例えばルカはシュウがそう言ったら? 実はルカのこと好きなんだって、そう言ってもただ驚くだけ? 今までずっと近くにいたのに驚くだけで済むの?」
    なんてことを言い出すんだと、僕は思わず眉間に皺を寄せて浮奇を睨みつけた。例え話だなんて言って、キミは僕の本当の気持ちを知っているのに!
    「シュウが俺を?」
    酔っ払いの戯言を真に受けたルカの声に、僕はパッとルカのほうに顔を向ける。さっきくっついてみようかなと思って距離を詰めていたからルカとの距離は思った以上に近くて、僕はすぐ目の前のルカの顔を見上げてそのまま固まってしまった。
    浮奇の話に真面目に返していたし僕が思っているより酔っていないのかもなんて思ったけれど、赤く染まった頬はやっぱり酔っ払いの証拠だ。薄紫色の綺麗な瞳は少しも揺れることなく僕を見つめていていつものルカらしくない。照れて、動揺して、笑いながら冗談を言ってよ。
    「シュウが俺のこと好きだったら、俺はめちゃくちゃ嬉しいよ」
    ……あれ、僕、いつのまにかすごく酔っていたのかも。きっと友達としか思っていないだろうって、そう思っていたのに、ルカは本当に嬉しそうに笑って僕を見つめてる。
    驚いて一言も喋れない僕の代わりに、浮奇が楽しそうな声でルカに問いかけた。
    「好きって、友達の意味じゃなくてだよ?」
    「うん、恋人としてでも。だって俺もシュウのこと好きだもん」
    パチン、と部屋に響いたのは僕が自分の頬を叩いた音だ。浮奇とルカは話を止めて僕を見つめた。あれ、ほっぺ、痛いや。……夢じゃないの?
    「ぼ、ぼく、いま、もしかしてすごい酔ってる……? 幻聴かも……あ、ルカがめちゃくちゃ酔ってるパターン……?」
    「……ルカ、その酔っ払いにちゃんと話してあげて」
    俺は水持ってくる、と言って浮奇は立ち上がりキッチンに行ってしまった。好きな人と二人きりで残された僕は、ロボットのようにぎこちない動作でもう一度隣に座るルカを見上げる。
    「オーライシュウ、俺はお酒はまあまあ飲んでるけどそこまで酔ってないつもりだよ。本当のことしか言わないし、自分が言ったことはちゃんと覚えてる。そこまではオーケー?」
    「……お、おっけー……」
    「ん。それで、シュウもそんなに酔ってないだろ? すこし赤くなってるけど前に飲んだ時より量は少ないしちゃんと話も通じてる。……顔はいつもより赤いね。さっき叩いたからかな? 痛くなかった?」
    痛かったよ、けど、赤いのはたぶん酔ってるからでも叩いたからでもなくて、ルカがそう言いながら僕の頬を優しく撫でるからだ。たしかにいつもより飲んでる量は少ないし、自分の脳みそがしっかり思考を巡らせていることもわかる。
    それじゃあ、さっきのルカの言葉は、本当の本当? 聞き間違いでもなく?
    「……シュウ、例え話じゃなくてさ、本当に俺がシュウのこと好きだって言ったら、シュウはどう思う?」
    「……夢かと思う」
    ふっとちょっと笑って、ルカは僕の頬を優しくつねった。わかってる、そういうことじゃないよね。わかってるんだけど、だって、……本当に?
    「夢じゃない。酔ってるせいでも幻聴でも妄想でもなくて、本当にシュウのことが好き。……困らせたくなかったから言うつもりなかったのに、浮奇に乗せられちゃったな」
    ごめんねと謝るルカに僕は慌てて首を振り、ルカの手をぎゅっと握った。いつも楽しいほうへ僕のことを引っ張ってくれて、どんな時でも迷うことなく僕の手を握ってくれるルカの大きな手が大好きだ。
    視線を重ねて、息を吸う。この気持ちを伝えるつもりなんて全然なかったのに、僕も浮奇に乗せられちゃってるのかも。
    「僕も、ルカが好きだよ」
    「……ああ、ふふ……、たしかに、夢かもって思うね」
    「……夢じゃない。酔ってるせいでも幻聴でも妄想でもなくて、……僕はルカのことが好き」
    「……ハグしてもいい?」
    こくんと頷くとルカは僕を包み込むようにぎゅうっと抱きしめた。本当に夢だったらどうしよう。きっと起きたら僕は一人でベッドで寝てて、ルカと浮奇が家に遊びに来てくれたのも全部夢なんだ。でもさっき叩いた頬の痛みと熱いくらいのルカの体温が、これが夢じゃないって教えてくれている。
    「コングラッチレーション。次から恋愛相談する相手に同じ人を選ばないように気をつけてね」
    「え、ルカも浮奇に何か話してたの?」
    「まさかシュウも!?」
    「ムカつくから惚気話は教えてあげないけど、俺はおまえたちの弱みを握ってることを忘れないで。それで、ふーふーちゃんの話、まだ付き合ってくれるよね?」
    「「……オーケー……」」
    「ありがとう。夜はまだまだ長いよ」
    キッチンから持ってきたらしい新しいワイングラス二つに赤ワインを注ぎ、浮奇は僕達に一つずつ持たせた。仕切り直すように乾杯をして、浮奇が再びふーちゃんの話を始める。
    だけど、ごめん浮奇。体の後ろでついた僕の手にルカが手を重ねていて、僕の意識はもう全部ルカに向いちゃっていた。きゅっと指を絡められ、耐えきれなかった僕はぽすっとルカに寄りかかった。
    赤ワインは酔いやすいんだって下手な言い訳で、今だけは誤魔化されてくれる?
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