Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💞 💯
    POIPOI 288

    おもち

    ☆quiet follow

    Renkyotto。大きいジャケット羽織ってるきょくん可愛すぎかも。

    #Renkyotto
    Renkyotto<3

    熱の残るジャケットを肩にかけられ俺はのろのろと顔を上げた。空いていた俺の前の席に座ったレンは俺と目が合うと柔らかく笑い、大きな手で頭を撫でてくる。
    「起こしちゃった? ごめんね。大丈夫?」
    「ん……へーき。……さわんな」
    「ふふ、はぁい」
    レンは頭を撫でるのはやめたがその代わりに俺の髪をかき分け額と頬に触れ、「すこし熱があるんじゃない?」と心配そうに囁いた。力の入らない体で首を左右に振り、「うるさい」と覇気のない声で答える。
    何かを言おうと息を吸ったレンが言葉を紡ぐより先に、「レン!」と大きな声が教室の後ろの方から飛んできた。レンは俺をチラッと見てから立ち上がり、優しく頭を撫でたあとに歩いて行ってしまう。
    クーラーで冷えた体が、レンがそこにいる時だけ寒さを感じていなかったことに、いなくなってから気がついた。気のせいだと自分に言い聞かせて肩にかけられたレンのジャケットを引き寄せる。香水の匂いは嫌いなのに、レンの香水の匂いはもう嗅ぎ慣れてて平気だった。
    少しすると足音が俺に近づいてきてすぐ横で立ち止まった。その足音が誰のものか、目を瞑っていても分かるのが不思議だ。今度は椅子に座らず俺の真横にしゃがみ込んだみたいだった。
    薄く目を開け、心配そうな顔で俺を見つめるレンに、腕に埋めて隠れた口元だけでこっそり笑う。標準装備の人当たりが良い笑みではなく、人間みのあるコイツの表情を引き出すのがわりあい好きだった。
    「なんでおまえがそんな顔してんの」
    「だってキョウが心配なんだもん……。保健室行く?」
    「そんな体調悪くねーよ。ここの席クーラーが当たるから寒いだけ」
    「先生に言って席交換してもらえないかな?」
    「そんなするほどじゃねー。これ、あったかいし」
    「……放課後まで貸しておくから、そのまま使ってて」
    「いいの?」
    「いいよ。また放課後迎えに来るからその時返してくれれば」
    「……さんきゅ。借りとく」
    人に借りを作るのは嫌だけれど、コイツがこれを借りだなんて少しも思ってないことは聞かなくてもわかる。手を伸ばして俺より低い位置にある頭をわしゃわしゃと撫でてやればレンは嬉しそうに表情を緩めた。釣られて緩んだ表情を誤魔化すために体を起こそうとしたところで、今度はすぐ隣から声がかかった。
    「レン先輩!」
    「……うん? どうかした?」
    「あの、先輩、甘いもの好きですか? 期間限定のお菓子買ってきたからみんなに配ってて……あっ、キョウくんも、いる?」
    赤い顔したクラスメイトの女子はレンにお菓子を見せたあと、目の前にいる俺にたった今初めて気がついたみたいな顔でそう言った。俺は適当に「いらない」と答えて再び体を倒し、何も視界に入れないよう机の上に突っ伏した。塞ぐことのできない耳は女子がレンに話しかける甘ったるい声を嫌でも拾ってしまう。
    「これすっごいおいしくてみんなにオススメしてるんですよ」
    「ああ、そうなんだ。もらうね、ありがと……んん、おいしい!」
    「ですよね? ふふ、先輩もよかったら買ってください。駅のすぐ近くのコンビニに売ってますよ」
    「じゃあ今度通った時に買うよ。ちょうどこのクラスに遊びにきててラッキーだったな」
    「タイミングバッチリでした」
    頭の上で交わされる楽しげな会話に心臓が痛みを訴える。くそ、こんなの、寒くて凍えてるほうがまだマシだった。
    「キョウ?」
    奥歯を噛んで気を逸らしているうちに話を切り上げたらしく、レンの声がすぐ近くで聞こえて俺はビクッと体を震わせた。なんでもないと言うように首を振って見せたってコイツに通じないことはわかってる。
    「キョウ、顔見たい。こっち向いて」
    「……喉乾いたから、自販機、行く」
    「ん、じゃあ俺も一緒に行く」
    立ち上がって教室を出るとレンは隣に並んで俺の顔を覗き込んだ。睨みつけた自分の顔が拗ねたものになってしまっていることは分かっていたけれど、今はそれを取り繕うのすら面倒だ。
    パッと目を見開いたレンはニヤける顔を隠さずに「キョウ〜」と俺との距離を詰めた。片足を上げて膝蹴りをしたところで意味はない。
    「二人きりになりたかったんでしょ? 俺と一緒にいられて嬉しい?」
    「暑さで脳みそ溶けてんじゃねーの」
    「んふふ、そうかも。俺はキョウと一緒にいられて嬉しいよ」
    「……ばーか」
    レンが俺のことを特別に大切にしてくれていることを知っている。世界中の人間に等しく優しいコイツを悪いとは思わない。それでも目の前で他のヤツに絡まれるのは、気に食わない。
    「キョウは案外、ヤキモチ妬きだ」
    「……」
    「可愛いからずっとヤキモチ妬いててよ。俺、全然嫌だって思わないよ」
    「……クソエイリアン」
    「へへ」
    そもそも妬かせるようなことすんな、なんて、俺が素直に言えるわけねーんだから、そのお花畑の脳みそでよく考えろ。イラついてぶつけた拳はレンの大きな手に捕まって、それだけで他のことがどうでもよくなる俺の脳みそも大概お花畑だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💚💙💚💙💓💓😭👏😭😭💚💙💚💙💚💙💚💙❤💘💘💘💖💖💖💞💞💞💞💞☺💖💖💖❤☺☺☺☺👏👏👏👏👏👏👏👏💘☺😍😍😍💯💯💯💘💘💘💘
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works