邪眼の鬼 思えば、おそ松はずっと他人と違うものが視えていた。
未だに鮮明に覚えている記憶。夕暮れ時、近所の公園から帰路につく途中の出来事だった。その場には何故か他の弟がおらず、オレとおそ松の二人だけ。他愛のない会話をしながら、十字路に差し掛かったところで、おそ松の足が止まった。
「カラ松。今日はこっちから去のう」
いつもならここで右に曲がっていた。しかし、おそ松が指差す方向は、十字路の正面だった。真っ直ぐ進んでも家に帰れないことはないが、右に曲がるときより大回りになる。オレは意味がわからず首を傾げた。
「こっちの方が近道じゃあ、おそ松。なしてそがぁな遠回りせにゃあいかんの?」
「いいから……カラ松」
「……しゃあなぁのう」
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