余談リビングからドタバタと音が聞こえる。何してるんだと思い名前を呼んだ。
「ルカー!シュウー?」
「こんなに暑いのによく騒げるな」
「炭酸飲もう。ルカとシュウもいるかな?ミスタ聞いてきてくれない?」
アイクにそう言われてリビングのドアを開けると、ひんやりとした空気が全身にかかって足元に流れていく。数秒の間にリビングは静まり返っていた。
「は?」
そこにルカの姿もシュウの姿もない。ただテレビがついているだけ。不思議に思って近づいたテレビは映画を観ていたのかチャプターのままつけっぱなし。床にはトレイの上に中身が全く減っていないグラスが二つ。
「シュウー?」
ルカの罠か何かと思いシュウを呼ぶが返事は返ってこない。どういう事だよ、さっきまで騒いでたのに。訳が分からずテレビを見つめるとよく見ればホラー映画だった。えっ何もしかしてオカルト的な何か?ミスタは急いでキッチンに戻った。
「シュウとルカが消えた!!!!やばいよ、心霊現象かも…」
アイクは何を言っているんだと言わんばかりの顔をしてミスタを見る。
「ガチなんだって!!ちょっと来て!!!」
アイクの腕を引っ張りリビングへ連れて行く。
「どこが」
「いや見てよ、テレビ!ホラー映画がついてて飲み物まで用意してあってさっきまで音が聞こえてたんだよ!?なのに急にいなくなった…」
ミスタが至って真剣に話していると、後ろから声がかかる。
「ほう。」
何か納得したような声でリビングを見るヴォックスが立っていた。
「どうなの、ヴォックス的には」
アイクが興味なさ気に聞く。
「素晴らしい結果だ。ただタイミングは悪かったな」
「どういう事??」
ミスタにはヴォックスの言っている意味ががさっぱり分からなかった。ルカもシュウも消えてしまったのに素晴らしい結果とは何だ。アイクも頭にはてなを浮かべている。
「部屋は見たの?普通に部屋にいるんじゃない?」
アイクに言われて確かにと思い、リビングを出ていこうとすると肩を掴まれる。
「ヴォックス!何!」
「まあとりあえずこの映画でも観よう。アイクもいいかな?」
急遽三人で映画鑑賞が始まってしまった。
「ァーーーッ!!!!!!」
テレビ画面を観てミスタが悲鳴をあげる。怖すぎる。思わず目を瞑ってしまった。お菓子と炭酸飲料をお供に三人でソファーに座っている。足をソファーにあげて縮こまって観ていると階段から音がしてミスタはまた叫んだ。
「やぁルカ」
「Hiヴォックス!」
なんだルカか、と振り向くと汗だくで髪を後ろで一つに括っていて涼しいー!と言いながらバスルームへ向かってすぐに戻りキッチンに消えていった。
「はぁ!?」
このクソ暑い日にエアコンの入ってない部屋にいたのかと驚く。ヴォックスは驚いている様子は無いしアイクはヴォックスの様子を伺っている。
キッチンから出てきたルカはミネラルウォーターを二本持っていた。
「随分と男前になったな」
「…?」
「気づかなかったのか?首筋」
「あっ!!!!」
ヴォックスとルカのやり取りを見ていると突然ルカが首を抑えて焦りだした。
「えっ…と、その、シャワー浴びたいんだけど…」
何故シャワーを浴びるのに許可をとるのかと口出しするとアイクが横から口にお菓子を詰めてきた。
「もちろん。部屋を移った方がいいかな?」
「あー、いや…映画見てるならそのままでいいよ!」
そう言うとルカは階段を登っていってしまった。