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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチの年越し。書きたいことを詰めたら長くなってしまったのでこっちに上げます。

    ##TF主ルチ
    ##季節もの

    年越し クリスマスが終わると、世間は一気にお正月一色になる。スーパーにはおせちの具材が並び、デパートにも門松やしめ縄が並んでいる。大晦日が近づき、世間が休日に入ると、店は人で溢れる。僕たちは早めに年末の買い物を済ませて、家でのんびりしていた。
    「今日は年越しだから、年越し蕎麦を食べようか」
     僕が言うと、ルチアーノは興味無さそうに答えた。
    「僕は要らないよ」
    「せっかくだから食べようよ。カレー味にするからさ」
    「要らないって。そもそも、どうして年越しが蕎麦なのか知ってるのかよ」
     言われてみれば、確かにそうだ。僕たちは、意味を知らないまま年越しに蕎麦を食べている。
    「あんまり気にしたことなかったな。どうして蕎麦なんだろう」
     僕が呟くと、ルチアーノはからかうように笑った。
    「知らないで食べてたのかよ。人間って変だよな」
    「そういうものなんだよ。風習って」
     僕たちは、小さい頃から風習に従って行事をしている。それは先祖から子孫、親から子へ受け継がれるもので、深い意味など考えない。アンドロイドであるルチアーノには、それが不思議なようだった。
    「年越しそばには、長寿や金運を願ったり、一年の厄を断ち切る意味があるんだぜ」
     ルチアーノはにやにやと笑う。少し誇らしげだ。
    「そっか。じゃあ、僕はたくさん食べないとね」
    「何でだよ」
    「長生きして、ずっとルチアーノのそばにいたいから」
     僕の言葉を聞くと、彼はケラケラと笑い出した。
    「それ、ダジャレのつもりかよ。つまんねーな」
     真面目に言ったのに、笑われてしまった。とはいえ、深刻に捉えられるよりもましなのだろう。僕たちの寿命の話なんて、今はすることではない。
    「ダジャレじゃないよ。とにかく、少しでもいいから食べてくれると嬉しいな」
     笑って機嫌がよくなったのか、ルチアーノは了承してくれた。
    「仕方ないから食べてやるよ」
     キッチンへ向かうと、蕎麦を茹でる。自分の分は普通のだしで、ルチアーノの分はカレーで味付けをする。トッピングは天ぷらだ。いつもはカップ麺で済ませてしまうから、この日のために蕎麦の茹で方を練習していたのだ。
    「できたよ」
     丼を差し出すと、ルチアーノは恐る恐る麺を啜った。
    「悪くないね。君にしてはちゃんとできてる」
    「練習したからね」
     僕が言うと、彼は呆れた顔をした。
    「そこまでして食べさせたかったのかよ」
    「せっかくの機会だから、ルチアーノにも経験してほしかったんだよ。日本の風習を」
    「そんなもの、興味ないよ」
     そう答えながらも、ルチアーノは頬を染めている。照れているのか、身体が温まっているのかは分からなかった。誰かと食べる年越し蕎麦は、いつもよりおいしく感じる。
     テレビからは、年末の特番が流れている。歌番組やお笑い番組を交互に流しながら、特に見るわけでもなく、蕎麦を啜った。
    「年が終わる前に、遊び納めをしようよ」
     食事を終えると、僕は、ルチアーノを部屋に誘った。ボードゲームを引っ張り出して、床に並べる。
    「負けて悔しがっても知らないぞ」
     ルチアーノも乗り気みたいで、楽しそうに遊びに応じてくれる。ボードゲームには、デュエルのような息の詰まる駆け引きはない。それも、ルチアーノには新鮮なようだった。
     楽しそうに笑いながら、ルーレットを回して、駒を進める。ルチアーノは人生ゲームが好きだ。彼は、他人の人生がめちゃくちゃになる様子を見て笑っているのだ。波乱万丈では済まない人生を、ゲームの中の僕たちは送っていく。
    「めちゃくちゃな人生だよな。変なことで得したり損したり、ルーレットで結婚や子供の人数が決まったりしてさ」
    「僕の人生も、似たようなものだと思うけどね。ルチアーノの采配で未来が決まるんだから」
    「君は、それが嫌じゃないんだろ」
     ルチアーノはにやにやと笑う。なんだか、嬉しそうだった。
    「そうだよ。僕はルチアーノと出会えて幸せなんだ」
    「本当に、君は変なやつだよな」
     呆れたような、照れたような声が返ってくる。そんな彼を、僕は心から愛おしく思っているのだ。
     ゲームが終わる頃には、十時を過ぎていた。早くお風呂に入らないと、お風呂で新年を迎えてしまう。立ち上がると、ルチアーノに声をかけた。 
    「年が明ける前に、お風呂に入って来るね」
    「すぐに戻ってこいよ」
    「あんまり待たせないようにするよ」
     今年最後の夜なのだ。できれば、ずっと一緒にいたい。僕は急いで風呂場にに向かった。
     お風呂から上がると、ルチアーノはベッドに凭れかかってうとうとしていた。遊び疲れたのだろうか、と考えて、昨日の夜にあまり寝かしてあげられなかったことを思い出す。今年最後だからとはしゃぎすぎてしまったのだ。
     ルチアーノを部屋に残して、片付けをすることにした。食器を片付け、風呂の栓を抜く。リビングに戻ってテレビを眺めていると、ルチアーノが部屋に入ってきた。
    「なんで起こしてくれないんだよ」
     その声には、不機嫌が滲んでいた。拗ねているらしい。
    「気持ち良さそうに寝てたから」
    「一緒に年越しするんじゃなかったのかよ」
    「年を越す前には起こすつもりだったんだよ」
     彼は不満そうにソファに腰を下ろした。どすん、と鈍い音がする。
    「ごめんね」
     怒らせてしまったのだろうか。遠巻きに様子を見ていると、小さな声で言った。
    「隣に来いよ」
     拗ねたような、怒ったような声だ。なんとなく不穏な気配がして、躊躇ってしまう。
    「来いって」
     恐る恐る隣に腰かけると、ぎゅっと抱きつかれた。僕の胸に顔を埋めている。どう反応したらいいのか分からなくて、そのままになってしまう。そっと見下ろすが、表情は見えなかった。
     しばらくすると、ルチアーノが顔を上げた。頬を膨らませて僕を見る。
    「君は僕の部下なんだから、ちゃんと側にいろよ」
    「ごめんね」
     そっと頭を撫でると、彼は満足そうに笑った。珍しく、素直な反応だった。きっと、怖い夢を見ていたのだろう。一人にしたことを後悔した。
     テレビでは、カウントダウンが始まっていた。もうすぐ、年が明けるのだ。
    「ルチアーノ、今年はありがとう。来年もよろしくね」
     僕が言うと、彼は怪訝そうな顔をした。
    「なんだよ。急に」
    「年末には、挨拶をするのがお約束なんだよ」
     残り一分を切った。テレビの中では、芸能人が楽しそうにコールをしている。
     ルチアーノがテレビの音量を上げた。カウントダウンの声が響き渡る。
    「…………僕と一緒にいてくれて、ありがとう」
     その声は、テレビに掻き消されることなく僕の耳に届いた。
     ルチアーノが顔を上げる。ほんのりと赤く染まった頬が見えた。しばらくの間、黙って見つめ合う。時間が止まったようだった。
    『明けましておめでとうございまーす!』
     テレビから流れてきた声が、沈黙を破った。年が明けたのだ。拍手の音と歓声が流れ込んでくる。
    「明けまして、おめでとう」
     真っ直ぐに目を見て言うと、ルチアーノはわずかに微笑んだ。
    「…………おめでとう」
     新しい年が始まろうとしていた。
     新年も、楽しいイベントが目白押しだ。おせちにお雑煮、初詣に七草粥。僕は、ルチアーノに季節のイベントを体験してもらいたいと思っている。神の代行者として生きてきた彼に、普通の人間の暮らしを知ってもらいたいのだ。
     実は、ルチアーノにお年玉を用意しているのだけど、渡したら「子供扱いするなよ」と言って頬を膨らませるだろう。今はまだ、渡さない方が良さそうだ。
    「今年も、よろしくね」
     僕が囁くと、ルチアーノも小さな声で答えてくれる。
    「君は僕の部下なんだから、今年もよろしく頼むよ」
     今年も、良い年になりそうだった。
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