日傘 その日のネオドミノシティは、朝から信じられないほどに暑かった。太陽の光が真上から町を照らして、アスファルトを灼熱の海に変えていく。外気には梅雨の湿気が残っているから、部屋の外は蒸風呂状態だ。おかげで、商店街のアーチを潜り抜ける頃には、僕は汗びっしょりになっていた。
早足でアーケードの下に入り込むと、僕はTシャツの裾をはためかせる。首筋から流れた大量の汗で、首周りは顔を洗った後のようになっていた。喉が乾いて仕方がないから、鞄からペットボトルの飲み物を取り出す。凍らせるタイプのスポーツドリンクは、暑さのせいで半分近くが溶けていた。
「今日は暑いね。もう夏が来たみたいだ」
タオルで首筋の汗を拭いながら、僕はルチアーノに声をかける。日本中が灼熱地獄のような暑さだというのに、彼は涼しい顔をしていた。日光に素肌を晒しているというのに、顔には汗ひとつかいていない。機械の身体を持つ彼にとっては、太陽の日差しなど対したことないのだろう。
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