Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

    文章や絵を投げます

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💕 🍇 🐥 🍣
    POIPOI 477

    流菜🍇🐥

    ☆quiet follow

    TF主くんに傷を見られたくないルチの話。ルチの身体に傷が付いてる描写があります。少しだけフェチっぽいかもしれません。

    ##TF主ルチ

    損傷 服を脱ぐと、洗濯かごへと放り込む。かこんと小さな音がして、布を模した物質がかごの中に収まった。上を脱ぐと、今度はズボンに手を伸ばす。下着とズボンを一気に下ろすと、布と布を引き剥がした。そのままかごに入れると、青年が嫌な顔をするのだ。
     風呂は好きだ。優しい温もりが、僕の身体を包んでくれる。水は生命の源として、万人を受け入れてくれるのだ。人間の文化は嫌いだが、風呂にだけは好感を持つことができた。
     浴室に入り、何気なく鏡を見る。赤い髪を揺らし、未熟な身体を晒した子供の姿が、そこには映っている。僕の身体。未成熟な子供を模した、僕の肉体だ。忌まわしくて、でも、少しだけ前よりは嫌いではなくなった、僕の器。
     その鏡像をまじまじと見つめて、胸元に傷があることに気づいた。皮膚を模した表面装甲が真横に裂け、下の金属が覗いている。人間そっくりに作られた肉体の中で、そこだけが異質に機械的だった。
     不意に、昼間の記憶が蘇る。旧サテライトエリアで人間と小競り合いになった時に、胸元を切られてしまったのだ。損傷は服だけだと思っていたが、表面までやられていたとは。痛みを感じない感覚器官は、こういう時に不便だった。
     シャワーを捻ると、流れ出した湯を浴びる。外見はいかにも裂傷だが、金属の肌は湯を浴びても痛みを感じない。手順通りに身体を洗い、湯船へと浸かった。
     湯の中で、金属の裂け目に手を伸ばす。ふよふよとした表面装甲と、テカテカとした金属の境目を、意味もなく撫で回す。これくらいの傷なら、自分でも直せるだろう。神の御前に出向くほどではない。
     風呂から上がると、入れ替りで青年が出ていった。ベッドの上に寝転がって、ゲームを拝借する。
     一時間ほど経つと、彼が部屋へと戻ってきた。僕の隣に寝転んで、幸せそうに笑う。間抜け面を指摘して、僕も笑った。
     彼の手が、僕の身体に伸びる。頭を撫で、頬に触れ、耳の輪郭をなぞる。耳に触れられる度に、身体に甘やかな痺れが走った。頭がピリピリして、息が漏れる。
     自分に、こんな弱点があるなんて知らなかった。これまで、他人に身体を触れられたことなどなかったのだ。こんな行為を許したのは、この男だけなのだから。
     彼は執拗に僕の耳をなぞった。快楽は徐々に増していき、声が抑えられなくなる。体内のシステムが蠢き、熱が上がった。
    「気持ち良いの?」
     尋ねられ、首を真横に振った。それが嘘であることくらい、彼もお見通しだろう。空いている方の手が、シャツの下へと伸びてきた。臍の周りをくるくるとなぞり、脇腹に触れられる。
     そこで、唐突に思い出した。僕の胸元に、大きな傷が付いていることを。
     彼の手が上へと迫った。このままでは、傷に触れられてしまう。それだけは嫌だった。
    「やめろっ!」
     気がついた時には、彼の手を振り払っていた。ばしんと音がして、青年の手が引っ込む。彼は驚いた顔で僕を見ていた。
    「ごめん……嫌だったよね……」
     呆然とした顔で、彼は言う。恋人に拒絶されたことに、ショックを受けているようだった。当たり前だ。いつもだったら受け入れているスキンシップを今日は拒んだのだから。
    「違うんだ。触られるのが嫌だったんじゃないよ」
     僕は言った。彼の傷ついた表情に、罪悪感を感じたのだ。今まで、人間に罪悪感を感じることなどなかったのに。
    「服の下に、傷があるんだ。それを、見られたくなくて」
     言葉を続けると、彼は安心したように微笑んだ。大きく深呼吸をして、力の抜けた声で言う。
    「良かった。嫌われたんじゃないかって思ったから」
    「そんなことで、嫌いになんかなるかよ」
     別に、触られるのは嫌いじゃない。彼の手は温かいし、安心するのだ。触れられる手付きも、これまでに出会ってきた人間のように乱暴なものではない。優しく、慈しむように、この身体に触れてくれる。
    「ルチアーノ、怪我してるの?」
     青年が尋ねた。『怪我』という言い方に、彼が人間であることを自覚する。
    「怪我じゃないよ。ただの損傷だ」
     そう。これは怪我なんかじゃない。ただの損傷なのだ。ただ装甲が剥がれて、機械が剥き出しになっているだけ。だから、何も恥じることはないはずなのに。
     部屋に沈黙が訪れた。青年がそっと手を伸ばして、迷った様子て引っ込める。しばらくすると、小さな声でこう言った。
    「僕は、ルチアーノに傷があっても気にしないよ。だから、撫でて良いかな?」
     窺うような語調だった。さっきの拒絶が効いているのだろう。少しだけ寂しそうだ。
    「嫌だよ。君には見られたくない」
     服を抑え、彼に背を向けるように寝転がる。どうして、ここまで拒絶を感じるのかは分からなかった。
    「ごめん」
     背後から、謝罪の声が聞こえてきた。変な話だ。彼は、何一つ悪くないのに。
     どうして、彼には傷を見られたくないと思ってしまうのだろう。彼が、僕を人間扱いするからだろうか。僕の意識が、人間に近づいているのだろうか。
     綺麗な自分だけを見てほしいなんて、思うはずがない。僕は人間よりも高尚で、それと同時に、人間から見たら薄汚れた存在なのだ。簡単に人を操り、始末する。そんな生き物が、綺麗だと思われるわけがない。
     僕は、怖いのだろうか。彼が、僕を機械として認識することが。命の無い存在だと思うことが。僕のことを、化物だと思うことが。
     かれが僕を嫌うなんて、あり得ないことは分かっている。それでも、胸に重石のようにのしかかった恐怖は、薄れることなどなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏🙏🙏🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works