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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。ルチが勘違いからグラビアの女の人に嫉妬する話です。焼き餅ルチを見たくて書きました。

    ##TF主ルチ

    焼き餅 テレビを付けると、いつもは見ない局が選択されていた。ネオドミノシティ限定で放送されている、デュエル専門番組だ。デュエルと共に発展し、デュエルと共に生きるこの町は、一般市民の娯楽としてデュエル専門チャンネルを放送しているのだ。そこでは、世界中の公式大会や有名デュエリストのエキシビションなどが総集編形式で放送されていた。
     そういえば、最近はあまりこのチャンネルを見ていない気がする。自分がデュエルをするようになってからは、あまり人のデュエルを見なくなったのだ。僕は、人の戦い方を見て学習するよりも、自分で試して吸収する方が向いているらしいのだ。毎日のように町に出る生活の中では、テレビを見ている余裕などなかった。
     画面の中では、ライディングデュエルが繰り広げられていた。海外で行われた大会の様子らしい。ルールは、WRGPと同じ三対三のチーム戦。片方のチームのセカンドホイーラーが優勢を取り、もう片方のチームのラストホイーラーが走り出したところだった。
     画面の中を、Dホイールが疾走する。後を追うようにモンスターたちが駆け抜け、MCの実況が字幕で表示された。出走したばかりの選手は、世界中の大会で好成績を修めた期待の新星らしい。たくさんの歓声に後押しされながら、華麗なてさばきでカードを操る。
     久しぶりのデュエル番組は、面白かった。世界レベルの戦いだ。複雑な効果処理を狙った戦略や、僕には考え付かないようなコンボがどんどん出てくる。思わず、画面に見入ってしまった。
     デュエルの進行を眺めて、あることに気づいた。さっき出走した選手は、女性だったのだ。画面の隅に映し出された顔写真は、若い女性のものだった。しかも、一般的に美人と言われる部類の顔立ちである。
     武骨なDホイールに乗っているから目立たないが、身に纏っている衣服はぴったりとしたライディングスーツだった。グラマラスな身体のラインを、惜しむことなく強調している。体型に自信を持っている女性にしか着られない服装だろう。
     彼女が走り出した時の、観客の反応を思い出す。飛び交う男たちの嬉しそうな声は、まあ、そういうことなんだろう。期待の新星と呼ばれるのも、実力だけではなさそうだった。
     というのも、女性Dホイーラーというものはまだ珍しいのだ。体力勝負な面が大きいライディングデュエルにおいて、女性という性別はそれだけでハンデになる。アマチュアならまだしも、世界レベルのプロとなると、その数は限られていた。
     彼女も、どこかで見覚えがある気がした。限られた女性Dホイーラーな上に、かなりの美人なのだ。メディアにも引っ張りだこだろう。どこかで見ていてもおかしくはなかった。
     画面の中ではどんどんデュエルが進行していく。両者ともに、全く譲らない攻防戦だ。目まぐるしい展開は、見ていて面白いし、勉強になる。たまにはテレビを見て学習するのもいいのかもしれない。そんなことを考えながら、夢中になって画面を見つめていた。
     テレビを見ていると、背後から足音が聞こえてきた。ルチアーノがお風呂から出てきたのだろう。彼は立ち止まってテレビ画面を見つめると、黙ったまま僕の膝へと座った。
     視界が、ルチアーノの顔で埋め尽くされる。少し不機嫌そうな表情が、至近距離に迫った。試合の状況を見ようと頭を横にずらしたら、両手で正面へと固定された。
    「どうしたの? 画面が見えないんだけど」
     抗議の声を上げると、彼はむっつりとした顔で僕を見つめた。
    「君は、ああいうのが好きなのかよ」
     チラリとテレビに視線を向けてから、ルチアーノが言う。そこに、トゲのある響きを感じて、少し困惑した。僕は、ただデュエルを見ていただけだ。彼の機嫌を損ねる理由などなかった。
    「好きって言うほどじゃないけど、たまにはいいかなって思うよ」
     答えると、彼はさらに機嫌を損ねる。頬を膨らませながら、僕の頬をつねった。
    「ふーん。やっぱりああいうのがいいんだ。これだから、人間の男ってやつは」
     ぶつぶつと呟いて、顔から手を離す。自由になった首を動かして、デュエルの戦況を見た。いつの間にか、あの女性Dホイーラーが優勢を取っている。
    「巻き返したね。すごいなぁ」
     感心して、思わず声を上げてしまう。その言葉を聞いて、ルチアーノが僕の膝から降りた。どすどすと歩くと、どかりと隣に腰をかける。乱暴に足を組み、僕に聞こえるように舌打ちをした。
     ルチアーノは、相当怒っているようだった。最近の彼はだいぶ丸くなっていて、あからさまな怒りを見せることも少なくなっていたのに。何が彼の気分を害しているのか、全く分からなかった。
    「何を怒ってるの? 僕はただ、デュエルを見てるだよ」
     そう言うと、ルチアーノは僕を睨み付けた。鋭い目線が、真っ直ぐに僕に突き刺さる。
    「誤魔化すなよ。本当は、試合なんてどうでもいい癖に!」
     怒鳴り付けるような声だった。少しだけ、泣いているようにも聞こえる。彼は、傷ついているのだ。傷ついているのに、その理由を教えてはくれない。もどかしくてたまらなかった。
    「どういうことなの? 言ってくれないと分からないよ」
     言い返す声が鋭くなってしまう。そんな言い方をしても、ルチアーノを傷つけるだけだと分かっているのに、どうしても抑えられなかった。僕は、そこまで大人にはなれないのだ。
     ルチアーノは軽蔑するような目で僕を見る。鼻を鳴らすと、吐き捨てるように言った。
    「君は、あの女を見てたんだろ。ファンってやつなんだよな」
    「あの女?」
    「そうだよ。今、君が応援してる女だ。君は、あいつのファンなんだろ。グラビアを買うくらいなんだから、そういう目で見てるんだよな」
    「なんのことを言ってるの? 分からないよ」
     僕の答えに腹を立てたのか、ルチアーノは黙って席を立った。ドカドカと足音を立てながら、部屋を出ていく。しばらくすると、再びドカドカと音を立てながら戻ってきた。
    「だから、誤魔化すなよ! これだよ、これ!」
     ルチアーノが突きつけたのは、デュエル雑誌だった。表紙にはスーツ姿の女性が映り、彼女を花に例えた煽り文句が書かれている。
    「あーっ!」
     その写真を見て、僕は思い出した。その号は、世界的女性Dホイーラーがグラビアを飾っていたのだ。その女性こそが、今、テレビの中で華麗にデュエルを繰り広げている選手なのである。僕の既視感の正体は、このデュエル雑誌だったのだ。
    「どこかで見たことあると思ったら、この人だったのか!」
     僕が言うと、ルチアーノはきょとんとした顔をした。さっきまでの怒りを完全に忘れて、呆れ顔で僕を見る。
    「君、もしかして、気づいてなかったのかい?」
    「全然。グラビアページなんて、まともに見たことないからね」
     僕が答えると、彼はほっとしたように表情を緩めた。トゲのなくなった声で、安心したように言う。
    「なんだ。知らなかったのかよ」
     つまり、ルチアーノは勘違いしていたのだ。僕が、あの女性Dホイーラーのファンで、彼女を性的な対象として見ているんじゃないかと疑っていたわけである。さっきまでの不機嫌は、浮気を誤魔化す恋人に対する怒りだったのだ。
     そうと分かると、彼が愛おしく思えてきた。彼は、僕を誰にも奪われたくないと思っているのだ。心の片隅でさえ、他の人には渡したくないと思うくらいに、僕を想ってくれている。
    「ルチアーノは、僕が浮気してると思ったの? あの人に、性的な魅力を感じてるって」
     からかうように尋ねると、彼は頬を赤く染めた。図星なのだ。勘違いを指摘されて、羞恥心を感じているのだろう。
    「その話は、もういいだろ」
    「良くないよ。僕は勘違いで怒られたんだよ。謝ってほしいな」
    「お前が勘違いされるようなことするからだろ!」
     必死に弁解する姿が愛おしくて、思わず抱き締めてしまった。身体を抱き寄せると、膝の上へと座らせる。今度は向かい合わせではなく、テレビが見える方向だ。
    「なんだよ」
     耳まで赤く染めて、ルチアーノが不機嫌そうに言う。同じ不機嫌でも、さっきまでのようなトゲはない。照れ隠しの声色だった。
     テレビの向こうでは、戦いが終わっていた。女性Dホイーラーは相手二人を倒し、チームを勝利へと導いたのだ。観客たちの賑やかな歓声を浴びながら、にこやかにインタビューに答えている。
     いいところを見逃してしまったが、後悔はなかった。それよりもいいものを、現実で見てしまったのだから。恋人の焼き餅を焼く姿なんて、そうそう見られるものじゃない。
    「心配しなくても、僕はルチアーノしか見えてないんだよ。僕が触りたいと思うのも、身体を繋げたいと思うのも、ルチアーノだけなんだ」
     テレビの向こうを眺めながら、彼の耳元で囁いた。返事はない。それでも、赤く染まった頬を見れば、彼の気持ちは分かるのだった。
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