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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    TF主ルチ。この前にタグでツイートした『現実が悪い噂を軽々と超えてそう』という話を文章にしました。TF主くんの友達のモブが出てきます。

    ##TF主ルチ

    「お前、○○○だよな」
     町を歩いていたら、誰かから声をかけられた。振り向くと、僕と同じくらいの歳の男が立っている。その顔には、見覚えがあった。
    「もしかして、✕✕✕?」
     尋ねると、彼は嬉しそうに笑った。少し大袈裟な態度で、弾んだ声を出す。
    「良かった。覚えててくれたんだな。お前のことだから、忘れられてるかと思ったよ」
     ✕✕✕は、中学の同級生だ。特別仲が良いわけではなかったが、何度かデュエルやゲームで遊んだことがある。高校に進学してからは会うことも無かったし、僕がネオドミノシティに引っ越してしまったから、ずっと疎遠になっていたのだ。
    「忘れるわけないでしょ。三年間、同じ学校に通ってたんだから」
    「お前ってぼんやりしてるから、忘れそうだろ」
    「失礼だなぁ」
     他愛もない話をしながら、再会を喜ぶ。時間が経ってしまっていても、友達との再会は嬉しいものだ。町のど真ん中で、僕たちは近況を伝え合った。
    「なあ、せっかくだから、どっかに入らないか? 話の続きをしようぜ」
    「いいよ。ここだと、話しにくいこともあるからね」
     彼の提案で、僕たちは繁華街の店に向かうことになった。

     繁華街の中央に建つファストフード店は、人で溢れていた。学生が集まり、大声で会話している。ここなら、僕たちの会話など聞こえないだろう。
     友達は、二段のハンバーガーを注文した。サイドメニューはナゲットとコーラだ。若者の選ぶフルコースだった。
     それに対して、僕の注文はシェイクだけだ。カップを片手に歩く僕を見て、彼が不審そうに尋ねる。
    「お前、それだけでいいのか?」
    「あんまり食べられないんだよ。夜はお寿司だから」
     答えを聞くと、彼は羨ましそうに言った。
    「へー。寿司か。いいなぁ」
     お寿司は、もちろんルチアーノのリクエストだ。間食が多くて食べられないなどと言ったら、何をされるか分からない。
     食べ物を抱えて、空いている席へと向かう。ルチアーノが好まないから、最近はあまりファストフード店に来ていなかった。賑やかな声と籠った空気に、少しだけ懐かしさを感じる。
     カウンターの片隅に座ると、友達はこちらを見た。周囲の様子を窺うと、声を潜めて言う。
    「それにしても、お前が大会常連のデュエリストになってたとはな」
    「大会常連なんて言うけど、アマチュアだよ。大したことないって」
    「アマチュアでも大会は大会だろ。キングとも知り合いだって言うし。すげえじゃん」
     彼は言う。どうやら、僕はこの町でそれなりに知られてるようで、調べたら大半の情報が分かってしまうらしい。あまり気にしてなかったけど、恐ろしいことだ。
    「そうかな……」
     知らない人たちにまで自分が話題にされてると思うと、少し恥ずかしい。ついつい、声が小さくなってしまう。
    「タッグパートナーと同棲してるって聞いたぜ。どんなやつなんだよ。男か? それとも女?」
     僕の気も知らずに、友達は畳み掛けるように尋ねる。そんなところまでバレてると思うと、恥ずかしい。そもそも、僕たちは正式な同棲はしてないのだ。ルチアーノは有名チームのメンバーだから、交際関係も周囲には隠している。
    「同棲はしてないよ。たまに泊まったりはしてるけど、男の子だし、そんないいことも無いよ」
     平然を装って言うが、声が震えている気がして、冷や汗が流れてしまう。
    「調べても写真すら出てこなかったから、どんなやつか気になってるんだよ。写真とか無いのか?」
     友達にせがまれ、僕は端末の画像フォルダを開いた。ルチアーノは歴史を修正してしまうから、写真はほとんど残っていない。残っているものは、全て変装した姿だ。『チームニューワールドのルチアーノ』としての個人的な写真は、僕しか持っていなかった。
     フォルダの奥から、なんとか見せられそうなものを探し出す。遠出の記念に取った一枚だ。いつもと同じ格好をしているが、布と羽は映っていない。こうしてみると、普通の子供みたいだ。
    「この子だよ」
     写真を見ると、友達は目を見開いた。何度か瞬きをして、まじまじと写真を見つめる。
    「嘘だろ。この子って、チームニューワールドのメンバーじゃないか」
    「知ってるの?」
     僕が尋ねると、呆れたような顔で見つめられる。そんなに変なことを言っただろうか。
    「知ってるも何も、超有名人だろ。WRGPの優勝候補とも言われてる……。お前、どこで知り合ったんだよ」
    「ちょっとね」
     かなり規模の大きな設定にしたんだな……。そう思いながら、言葉を濁してごまかした。ルチアーノの立場は日に日に変わるから、把握するのも一苦労だ。僕のことも考えてくれるのいいのだけど、彼はそういうところまで考えるような性格じゃない。
     端末をしまうと、友達が顔を近づけてきた。周囲に聞こえないように注意を払いながら、声を潜めて囁く。
    「でも、大丈夫なのか? チームニューワールドって、良くない噂があるだろ?」
     そんな話は初耳だ。ルチアーノの作った設定では、チームニューワールドは華やかな人気チームなのだ。イリアステルとしての裏取引は、表には出ていない。そんな噂は聞いたこともなかった。
    「良くない噂って?」
     尋ねると、彼は言いづらそうに口ごもった。何度か視線を泳がせてから、小さな声で言う。
    「ネットの掲示板で見たんだ。チームニューワールドは、政治家と繋がりがあるって。それくらいならまあ、他のチームにも言われてるところがあるんだけど、チームニューワールドの噂は、それだけじゃないんだ」
     そこまで語ると、彼は大きく深呼吸をして息を整えた。決意を決めたように前を見て、思いきったように口を開く。
    「あのチームには恐ろしい噂があるんだ。…………対戦相手を殺してるかもしれないって」
     僕は、息を飲んだ。そんなことまで噂になってるなんて知らなかったのだ。ルチアーノたちは歴史を操れるから、悪い噂は排除されてると思ったのに。
    「なあ、お前は大丈夫なのか? そんな奴らと関わって、無事なのか?」
     心配そうに友達は言う。心配してくれる友達がいるなんて、僕は恵まれているな、と心の中で思った。
    「そんなの、ただの噂でしょ。僕が何事もなくここにいるんだから、ただの悪評なんだよ」
    「そっか。悪かったな。仲間のこと悪く言って」
    「気にしてないよ」
     答えると、友達は安心したように息をついた。パートナーの話を切り上げて、彼の近況を聞く。彼もデュエルを始めたようで、最近はアカデミアに通っているらしい。アキのことも、校内で見かけたことがあるそうだ。
     話をしていたら、すぐに時が過ぎてしまった。ルチアーノとの約束の時間に遅れてしまう。友達に別れを告げると、僕は急いでファストフード店を出た。

     待ち合わせの場所に着くと、ルチアーノが待ち構えていた。駆け寄る僕の姿を見て、不満そうに頬を膨らませる。
    「遅い!」
    「ごめんね。昔の友達に会ったから、ついつい話し込んじゃったんだ」
    「リーダーを待たせるなんて、君は自覚が足りないんじゃないか? そこまでして、何の話をしてたんだよ」
    「僕のことだよ。お互いの近況報告をしたんだ」
     流れるように手を繋ぐと、僕たちは目的の店を目指して歩きだした。こうしている今も、周りから見たルチアーノの姿は、僕の見ている姿とは異なっているのだろう。なんだか、不思議な気分だ。
    「そういえば、友達からチームニューワールドの噂話を聞いたんだ。ネットの掲示板に、『対戦相手を殺してる』って書かれてたみたいだよ」
     僕が言うと、ルチアーノは面倒くさそうにため息をついた。眉を顰めると、尖った声で言う。
    「またかよ。全く、ネットってやつは面倒だな。消しても消しても湧いてきやがる」
    「一応、友達にはただの噂だって言っておいたよ。本当のことなんて、言っても信じてもらえないだろうから」
    「だろうな。歴史の修正なんて、人間にとっては非現実的だ」
     そう。僕が友達に話したことは、嘘だった。僕は、何事もなく過ごしているわけではない。ルチアーノの仲間として、人には言えないことをしているのだ。
     ルチアーノは、噂よりも恐ろしいことをしている。簡単に人を操り、歴史を無かったことにして、人を殺してしまう。対戦相手を傷つけることなんて日常茶飯事だし、僕自身も、彼が人を殺める姿を見たことがあった。
     そう。現実は小説よりも奇なりなんて言うけれど、ルチアーノに纏わる現実は、噂よりも恐ろしいのだ。
    「本当のことなんて、言わない方がいいぜ。真実を知られたら、僕はそいつのことを殺さなきゃいけなくなるからな」
     恐ろしい顔で笑いながら、ルチアーノは言う。真実を知ったら、この恐ろしい男の子が存在を抹消してしまうのだ。本当のことなんて、絶対に言えるわけがなかった。
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