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    流菜🍇🐥

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    TF主くんがルチにアクセサリーを渡す話。執着心を表す贈り物っていいよねって話です。

    ##TF主ルチ

    リボン 朝の支度は簡潔だ。朝食を取り、顔を洗い、服を着替え、鞄を持って家を出る。三十分もあれば済ませられるし、ルチアーノに起こされるようになってからは、もっと短い時間で出掛けられるようになった。
     家を出る前に、玄関の鏡の前に立つ。ルチアーノとパートナーになってからは、人と関わる機会が格段に増えた。誰に見られているか分からないから、身だしなみに気を遣うように言われているのだ。
     髪型を確かめ、顔を見て、服の汚れを確かめる。問題はない。深く帽子を被ったところで、忘れ物に気づいた。慌てて室内へと引き返す。
     リビングに戻ると、鞄の上にかけてあったチョーカーを手に取った。黒くてシンプルなデザインのチョーカーは、しっかりとした革製で、それなりに重みがある。少し太めなデザインも相まって、犬の首輪みたいだ。ベルト部分を外すと、首に巻き付けて帽子を被り直した。
     このチョーカーは、僕がルチアーノからもらったものだ。首につける装飾品であるところを見ると、首輪のつもりで渡したのだろう。内部にはマイクロチップ型の発振器が取り付けられていて、僕の居場所を伝えている。
     つまるところ、これは彼から僕への鎖のようなものなのだ。一緒に居たい気持ちと所有欲を、首輪という形で示している。寂しがり屋で心配性なルチアーノの、無言の意思表示だった。
     だから、僕はこの首輪を肌身離さずに身に付けている。これを持っていれば浮気をしていない証明になるし、ルチアーノが安心するからだ。彼への愛の証明として、僕は喜んで彼に監視されている。
     でも、たまに思うことがあるのだ。ルチアーノが僕の所有権を示すなら、僕もルチアーノの所有権を示したいと。彼は嫌がるだろうけど、それは、僕のささやかな願いだった。

     ある日の夕方、ルチアーノはいつもと違う格好で僕の前に現れた。デュエルアカデミアの制服に身を包み、仮面を外して両の瞳を晒している。髪はブラウンレッドに染められ、左側で三つ編みに編まれていた。
     その姿を見て、僕はあることを思い付いたのだ。僕が、彼との繋がりを示すための装飾品を、彼に渡したいと思った。
    「ルチアーノに、プレゼントがあるんだ」
     そう言うと、彼は呆れたような顔で僕を見た。僕からのプレゼントは日常茶飯事だ。慣れを通りすぎて、少し飽き飽きしているみたいだった。
    「またかよ。いつまでも懲りないよな」
     気のない声でルチアーノは言う。あまり乗り気ではないようだった。
    「今日は、特別なプレゼントなんだよ。受け取って」
     僕は包み紙を渡した。手のひらに乗るくらいの大きさの、雑貨屋の袋だ。両手を伸ばして受け取ると、まじまじと見つめる。
    「なんだよ、これ」
     ルチアーノは目の前で包み紙を開けた。中に入っていたものを眺めて、あからさまに顔をしかめる。
     それは、青色のシュシュだった。つやつやした生地のシュシュの上に、同じ生地で作られたリボンが取り付けられている。小さいながらも、それなりに良い作りのアクセサリーだ。
    「これって、女の使う装飾品だろ。どういうつもりだよ」
     ルチアーノが不満そうに詰め寄る。心なしか、頬が赤く染まっている。怒っているみたいだった。
    「プレゼントだよ。ルチアーノは、制服を着るときに髪をまとめるでしょ。リボンを付けたら似合うかなって思って」
    「髪を結えって言うのかよ。女みたいに!」
     やっぱり、気にしているようだ。彼は顔立ちがかわいいから、何度も女の子に間違えられているのだろう。
     怒られるだろうとは思っていた。でも、僕は彼に髪飾りを贈りたかったのだ。それは、女の子のように飾ってほしいからではない。彼が僕の恋人だと言うことを、周りに示したかったからなのだ。
    「髪に付けなくてもいいよ。でも、肌身離さずに持っていてほしいんだ。この、チョーカーみたいに」
     僕が首周りを示すと、彼は納得したような顔をした。にやりと笑って僕を見る。
    「なんだよ。発信器でも付けたのか?」
    「付けてないよ。……要望があるなら、付けるけど」
    「付けてもいいんだぜ。撒いてやるから」
     僕は黙って首を振った。付けたところで、遮断されてしまうのは確実だろう。彼は神の代行者だ。そんな簡単に証拠は残さない。
    「発信器は、重要じゃないんだ。僕は、ルチアーノに装飾品を付けていてほしいんだよ。僕の選んだアクセサリーを」
     そう。僕は示したいのだ。この美しい男の子が、僕のものだということを。周りの人たちは知らなくても、僕からのプレゼントを身につけていれば、ルチアーノにそういう意識が生まれる。つまるところ、これは僕からルチアーノへの首輪なのだ。
    「君って、結構執着心が強いタイプなのかい? 束縛するやつは嫌いだよ」
    「ルチアーノほどじゃないよ」
     僕が言うと、彼は僅かに顔をしかめた。不満そうな声で言う。
    「僕は、束縛なんてしてないだろ!」
     きっと、自覚はあるのだろう。ルチアーノは案外寂しがり屋で、執着心が強い。僕の居場所を知りたいと思うくらいには、僕に執着してくれている。
    「僕は、ルチアーノに持っていてほしいんだ。ルチアーノが、僕の恋人であると証明するものを。公には言えないことだから、せめてアクセサリーで繋がっていたい」
    「…………仕方ないから、付けてやるよ」
     僕の熱弁を聞いて、譲歩する気になったらしい。シュシュを手に取ると、左腕の手首に巻き付けた。服の袖を直すと隠れてしまうが、少しだけリボンが覗いている。
    「ありがとう。嬉しいよ」
     僕が言うと、彼は恥ずかしそうに目を反らした。手首に視線を落として、突き放すように言う。
    「飽きたら、捨ててやるからな」
     たぶん、このシュシュが捨てられることはないんだろうな。そう思いながら、僕は彼の横顔を眺めた。
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