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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    ルチ視点のTF主ルチ。TF主くんが実家に帰省してルチが一人の時間を過ごす話です。妙にしおらしいルチがいます。最後だけちょっとえっちめです。

    ##TF主ルチ
    ##季節もの

    帰省「明日から、しばらく実家に帰ることになったんだ」
     ある日の夜、彼は突然そう言った。
    「は?」
     僕は間抜けな声を出してしまう。彼から家族のことを聞くなんてほとんどない。帰るような実家があったことなど初耳だった。
    「大型連休だから、久しぶりに親戚が集まるんだって。両親も帰るみたいだし、僕も呼ばれてるんだ」
     彼の両親が健在なことは知っている。父親の転勤が決まった時に、彼だけがこの町に残ったのだと、彼自身から聞いていたのだ。放任主義なのか、連絡はこまめに取っているが、家を尋ねるようなことはないらしい。そんなんだから、親子仲は悪い方だと思っていたのだ。
    「いつ出掛けるんだよ」
     僕が尋ねると、彼は思案するように時計を見た。針を見ながら、時間を数える。
    「明日の十時くらいかな」
    「帰りは?」
    「二日後の夜だよ。できるだけ早く帰ってくるつもり」
     曖昧な答えだった。納得はいかないが、これ以上問い詰めることはできなかった。そんなの、過保護な母親みたいじゃないか。

     日が登ると、彼は朝早くに目を覚ました。目覚ましを止めて、忙しそうに支度をしている。いつもはいくら起こしても起きないのに、こんなときだけ早起きだ。
     なんだか、気に入らなかった。彼が家族と連絡を取っていたことも、帰省について直前まで教えてくれなかったことも。僕は恋人なのに、彼のことを何も知らなかったのだ。
     僕の不機嫌を感じ取ったのか、彼は窺うような態度で僕に話しかけた。
    「僕が出かけてる間は、自由にこの家を使っていいからね。ここは僕の家だけど、ルチアーノの家でもあるんだから」
     本当に、置いて行く気なのだ。僕は恋人なのに、両親に紹介してはもらえない。その原因を作ったのは僕なのに、彼に対して不快感を感じてしまう。
    「早く帰ってこいよ」
     答える声に刺々しくなってしまって、自分が嫌になる。一人で過ごすことなんて、何てことないはずなのに。

     彼が出かけると、僕はひとりぼっちになってしまった。やることも無かったから、町に出ることにする。何でもいい。この不快感を紛らわす何かがほしかった。手当たり次第にデュエルをして、人間たちを痛め付ける。
     今日は、止める人などいないのだ。僕がどれだけ相手を傷つけても、誰も何も言わない。一人というものは気楽だ。誰の意見も窺わなくていいのだから。好きなように行動して、好きなように暇を潰せる。
     それなのに、どうしてこんなに虚しいのだろう。楽しいのに、楽しくない。僕の中に救う絶望が、ゆっくりと僕を蝕んでいく。記憶なんて邪魔だ。こんなものがなければ、僕は強いままでいられたのに。
     日が暮れると、僕は彼の家に帰った。好きにしていいと言われたから、勝手に冷蔵庫のものを食べ、風呂を入れる。暖かいお湯に浸かりながら、彼のことを考えた。彼は、今頃家族と一緒に楽しい時間を過ごしているのだろう。家族と近況を話し合ったり、親戚とデュエルをしたりしているのだ。そこに、僕は混ざることができない。僕は秘密の恋人で、家族に紹介することなどできないのだから。
     どうして、彼には家族がいるのだろう。親戚がいて、帰る家があって、血縁という繋がりがあるのだろう。僕には、彼しかいないのに。
     風呂から上がると、ベッドの上に上がった。布団の中に潜り込み、頭まですっぽりと包み込む。彼の匂いを感じながら、ベッドの中で横になった。
     二人の時は狭く感じるベッドも、一人だとだだっ広い。この広い家の中に、僕はひとりぼっちなのだ。彼は、この家に一人で暮らして、寂しくなかったのだろうか。
     そんなことを考えていると、眠気がやって来た。彼の匂いに包まれながら、ゆっくりと眠りに落ちる。
     早く、帰ってきてほしい。口には出せないけど、心の底からそう思った。

     翌日は、任務を押し付けられてしまった。いつもなら面倒臭いだけだが、今だけはありがたかった。任務についている間は、彼のことを考えなくてすむ。憂さを晴らすように相手を痛め付け、任務をこなしていった。
     彼の部屋に帰ると、すぐにベッドに入った。彼の匂いに包まれながら、静かに涙を流す。絶望が、僕の胸を覆い尽くしていた。破滅の未来、消えていった両親、そして、未来を救うという僕の使命。それは重石として僕の上にのし掛かって、ゆっくりと僕の心を蝕む。この空白を埋められるのは、彼だけだったのに。
     気がついたら、眠りの世界に落ちていた。ゆらゆらと微睡みながら、甘い夢を見る。彼の腕の中でなら、僕は安心して眠れるのだ。彼の温もりを、この身で感じたかった。

     最終日は、早めに家に戻った。いつ帰ってきてもいいように、リビングに陣取る。デュエル雑誌を捲りながら、時間が経つのを待った。
     七時になっても、彼は帰ってこなかった。そんなものだろうと思い、ゲームを拝借して時間を潰す。八時になっても、帰ってくる気配はない。時計は刻一刻と時を刻み、ついには九時になった。
     彼は、帰ってこないつもりだろうか。両親との暮らしが心地良くなって、帰りたくなくなったのではないだろうか。僕のような生意気な子供と暮らすよりも、愛してくれる両親と暮らした方が幸せに決まっている。
     僕は、見捨てられたのかもしれない。因果応報だ。こんなことになるなら、もっと素直になっていれば良かった。後悔に襲われ、涙が滲む。
     その時だった。
     ガチャリと、玄関の方で音がした。ドタドタと音がして、人影が姿を現す。大荷物を抱えて部屋へ入るその姿は、ずっと待ち望んでいた彼のものだった。
    「ただいま、ルチアーノ」
     荷物を置きながら、彼は僕に笑いかける。
    「おかえり、相当遅かったじゃないか。何してたんだよ」
    「親戚の人がいろいろ持たせてくれてね。荷物をまとめるのに手間取ってたんだ。運ぶのも大変だし、困っちゃうよ」
     能天気に彼はいう。その気の抜けた声に、なんだか腹が立った。
    「その様子なら、相当楽しかったんだろうな。良かったよ」
     突き放すように言うと、彼は少しだけ驚いた顔をした。僕の顔を見つめて、にっこりと微笑む。
    「一人にしてごめんね。寂しくなかった?」
    「寂しがるわけないだろ!」
     勢い余って、強い語調になってしまう。こんなんじゃ、図星であることがバレバレだ。こんなの、神の代行者らしくない。
    「いいから、とっとと片付けてこいよ。話はそれから聞いてやる!」
     捨てゼリフを吐くと、鼻を鳴らしながら部屋を出た。こんな態度じゃ、愛想を尽かされるに決まってるのに。どうしても素直になれない自分が、心の底から憎いと思った。

     ベッドに潜り込むと、頭の上まで毛布を被る。遠くからは、彼がシャワーを浴びる音が聞こえていた。
     しばらくすると、彼が部屋に戻ってきた。僕の隣に寄り添って、そっと頭を撫でる。
    「ごめんね、寂しい思いをさせて」
     宥めるような態度で、彼は言葉を告げる。
    「別に、寂しくなんてなかったよ」
     この答えが嘘だということは、とっくにバレているだろう。もう、隠す気もなかった。
    「僕は、ルチアーノの気持ちを考えてなかったよね。ルチアーノをひとりぼっちにして、家族の元に帰って」
    「別に、何もおかしくないだろ。君は、まだ子供なんだから」
    「そうだけど、僕が家を空けたら、ルチアーノはひとりぼっちになっちゃうでしょ。そうしたら、ルチアーノに寂しい思いをさせることになる」
    「別に、一人には慣れてるよ。寂しくなんてない」
     そうだ。僕は、一人が寂しかったわけではない。僕はずっと一人だったし、寂しいと思ったことは無かったのだ。心の空白を埋める術を、僕は身に付けていたのだから。
     僕は、嫌だったのだ。彼が、僕よりも両親を選んだことが、僕のことを隠したまま、一身に親の愛を受けていたことが。僕には彼しかいないのに、彼には僕以外の家族がいる。それが、僕は許せなかったのだ。
     分かっている。全ての人間には親がいて、親は子供を愛し、子供は親を愛するのだ。当たり前のことなのに、許せなかった。
     僕は、わがままになってしまった。彼の愛を一番に受け、一番の座をほしいと思ってしまう。まるで、人間のようだ。神の代行者らしくない。
     僕が黙っていると、彼は迷ったように口を開いた。
    「実は、両親に話したんだ。恋人がいるってことを」
    「へ?」
     今、この男はなんと言ったのだろうか。恋人がいる? それは、僕のことを話したということだろうか。
    「もちろん、詳しいことは言ってないよ。付き合ってる人がいて、将来は結婚を考えてるって言っただけ。どんな子って聞かれたから、かわいい子だって答えたよ」
    「写真とかは、見せてないだろうな」
     僕は尋ねる。神の代行者という立場上、むやみに一般人に正体を晒すわけにはいかないのだ。彼が両親に写真を見せていたら、記憶を消さなくてはならなくなる。
    「見せてないよ。ルチアーノの立場はちゃんと分かってるから、安心して」
    「なら、いいけど」
     答えると、彼は黙り込んだ。沈黙に耐えきれず、僕の方から口を開く。
    「なんで、僕のことを話したんだよ。僕のことなんて話しても、何の特もないだろ」
    「僕は、両親にルチアーノを紹介したいんだよ。アンドロイドだなんて、言っても信じてもらえないかもしれないけど、ルチアーノのことを受け入れてほしかったんだ」
    「なんで、そんなこと考えるんだよ。一般人に正体を明かしたら、面倒なことになるだろ」
    「僕の両親は、無関係な一般人じゃないよ。だって、ルチアーノは僕の家族になるんだから」
     彼の言葉を聞いて、僕は何も言えなくなった。彼は、僕を家族として受け入れようとしている。自分一人ではなく、家族ぐるみでだ。自分の両親を、僕の両親にしようとしている。
     僕は、ゆっくりと寝返りを打った。彼の側に寄り添うと、胸に顔を押し当てる。彼は、優しく僕を抱き締めてくれた。
    「君って、本当に変なやつだよな」
     そう言うと、彼は困ったように笑った。
    「ルチアーノのことが好きなだけだよ」
     もう、抵抗はなかった。布団から顔を出すと、彼の唇に唇を押し当てる。舌を伸ばすと、唇をこじ開けて口内に侵入した。
    「んっ……!?」
     彼が、困惑したように声を上げる。しかし、それも最初だけで、すぐに口づけに応じてくれた。
     しっかりと舌を絡め、お互いの唾液を交わし合う。息が切れると、ようやく顔が離れた。零れた唾液が、唇から滴り落ちる。
     僕は、彼の腕を掴んだ。強引に引っ張って、胸の上に当てる。
    「しろよ」
     これが精一杯だった。僕は、かわいい恋人になんかなれない。素直にはなれないし、甘えることだって不得手だ。それなのに、わがままばかりで要求が多い。
     彼は、そんな僕を伴侶に選んでくれた。愛して、家族になろうとしてくれている。だから、僕も歩み寄らないといけないのだ。人間という生き物に。
     彼の指先が、寝間着の下へと潜り込んだ。肌に触れられ、甘い刺激が身体を駆け抜ける。その感触に身を委ねながら、僕は彼に身体を預けた。
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