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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。カドショでカードを探す二人が見たかったので書きました。デュエルの知識が無いのでルチのデッキ改築案は合ってるか分かりません。

    ##TF主ルチ

    カードショップ その日、ルチアーノは珍しく不調だった。意気揚々と先攻を宣言すると、デュエルディスクから排出された手札を見て、あからさまに顔を曇らせる。モンスターを一体だけ伏せると、退屈そうな顔でエンドを宣言した。
     僕はデュエルディスク操作した。フィールド情報を開いて、伏せられたモンスターを確認する。浮かび上がった文字列は『スキエルA』だった。
     僕はルチアーノの様子を窺った。つまらなそうに唇を尖らせながら、がら空きなフィールドを睨んでいる。きっと、いい手札が引けなかったのだろう。
    「何見てるんだよ」
     ルチアーノが尖った声を出す。僕の視線に気づいたようだ。不機嫌そうな様子に不安になりながらも、思いきって言葉を告げる。
    「いや、大丈夫かなって思って」
     僕の判断は、あまりよくなかったようだ。心配されたことが癪だったのか、ふんと大きく鼻を鳴らす。僕を睨み付けると、突き放すように言った。
    「これが大丈夫に見えるかよ。君がしっかりしてくれないと、負けるかも知れないんだぞ」
     そんなことを言われても、僕にはどうすることもできなかった。相手は、こっちが手札事故を起こしていることなんてお構いなしに盤面を広げていく。むしろ、チャンスだと思っているくらいなのだ。次々とモンスターを並べて、僕たちの退路を塞いでいく。スキエルのパーツは簡単に破壊され、ルチアーノは思いきり吹き飛ばされた。
     ルチアーノはゆっくりと立ち上がると、手のひらで服の汚れを払った。体勢を立て直すと、黙って相手を睨み付ける。一言も喋らないところから、本気の怒りが感じられた。
    「おい」
     ルチアーノが言葉を発した。その言葉が自分に向けられていると気づくまで、少し時間がかかってしまった。もう一度呼び掛けられ、ようやく返事をする。
    「どうしたの?」
    「何とかしろよ。もう、後が無いんだからな」
     そんなこと言われても。そう言い返しそうになったが、寸前で呑み込んだ。ルチアーノは怒っているのだ。何を言っても通じないだろう。
    「僕のターン!」
     天に祈りながら、僕はカードをドローする。トラップカードだった。何とかなるかもしれない。
     僕は、必死になって抵抗した。ここで負けたら、ルチアーノがどんな態度に出るのか分からない。とばっちりを食らうのは嫌だった。
     そんな祈りも虚しく、僕たちは押しきられてしまった。必死に抵抗を試みたが、盤面の差は簡単には埋められない。じりじりとライフポイントを削られ、なぶられるように倒されてしまった。
     デュエルディスクを片付けると、ルチアーノは黙って真下を向いた。両手をきつく握りしめて、渾身の捨てゼリフを吐く。
    「今日は調子が悪かっただけだ。次こそはぶっ潰してやるからな!」
     その声が泣きそうに震えていることに気づいて、僕は息を飲んだ。相手は気づいていないようだが、ルチアーノはかなり傷ついている。俯いているのは、涙を隠しているのかもしれない。
    「ルチアーノ、大丈夫?」
     相手から離れると、僕は恐る恐る声をかけた。彼は下を向いたまま、小さな声で言う。
    「帰るぞ」
    「え?」
    「帰るんだよ。作戦会議だ」
     ルチアーノはつかつかと歩き出した。待ってくれる様子はない。対戦相手に頭を下げて、僕は彼の後を追った。

     家へ帰ると、ルチアーノはどさりとソファに腰をかけた。大胆に足を組んで、苛立たしそうに鼻を鳴らす。そこに、泣いているような様子はなかった。少しだけ安心する。
    「ルチアーノのデッキを見せてみてよ」
     僕が言うと、彼はあからさまに嫌な顔をした。拗ねた子供のように唇を尖らせながら、表情を崩して睨み付ける。
    「これは僕が神から授かったデッキだぞ。人間なんかに分からないさ」
    「その、神から授かったデッキで負けたんでしょ。ちょっと見せてよ」
    「神が間違ってるって言うのかい? 人間の癖に、神に逆らうつもりか?」
    「そうじゃないって。いいから、貸してよ」
     僕はルチアーノのポケットへと手を伸ばした。いつも隣で見ているから、どこにデッキが収まっているかも、手に取るように分かるのだ。予想外だったのか、ルチアーノの反応は遅かった。指先でデッキケースを探り当てると、抵抗される前に抜き取る。
    「何すんだよ! 変態!」
     頬を赤く染めて、ルチアーノが僕を睨み付ける。突き刺さる視線を無視して、デッキをケースから取り出す。カードを広げると、中身を確認した。
    「ふーん。ルチアーノのデッキって、こんな感じなんだ」
     僕は感心の声を上げる。神が組んだだけあって、デッキの中身は綺麗にまとまっていた。スキエルを中心に、破壊を誘発したり攻撃力をあげるためのサポートカードが入れられている。一人で戦うには、十分に強いデッキだと言えた。
    「なんだよ。文句あるのかよ」
     ルチアーノが唇を尖らせた。人間に負けた挙げ句、デッキを品定めされているのだ。屈辱を感じているのだろう。
    「改善点はいくつかあるね。二人で戦うとなると、使いづらいカードがいくつかある」
     そう、僕たちがしているのはタッグデュエルなのだ。二人のデッキの力を合わせて、相手と戦う必要がある。一人で完結するデッキでは、仲間に寄り添うことができないのだ。
    「なんだよ。僕に命令する気かい? 人間の癖に」
     ルチアーノが僕に詰め寄る、デッキを奪い返そうと伸ばされた手を、身体を引いて交わした。机の上にカードを並べて、思い付いた案を話していく。
    「まず、一族の結束は外そう。墓地を機械族で揃えるのは難しいからね。攻撃力を上げるためのカードなら他にもあるし」
    「君が僕に合わせればいいだろ」
    「そうもいかないんだよ。ここは譲ってほしいな」
     そう言って、僕はカードを机の隅に避ける。ルチアーノは、納得いかないと言った顔で隅に追いやられたカードを見つめた。
    「次に、ゴースト・コンバートだね。これは減らしてもいいと思ってるよ」
    「なんでだよ。このカードはな何でも無効にできるんだぞ。強いじゃないか」
    「スキエルがいなかったら、何もできないでしょ。今日みたいなことが起きたら、ただの紙切れだよ」
    「うぅ……」
     ルチアーノは悔しそうに口を閉じる。今日の敗北が相当堪えているらしい。なんだか押しきれそうだ。
    「同じ理由で、インフィニティ・フォースも保留」
     手を伸ばして、カードを隅へと移動させる。これでだいぶ枚数が減った。対策カードも詰めれるだろう。
    「スキエルのパーツも、こんなに要らないと思うな。パーツばかり手札に回ってきても、何もできないでしょ」
    「スキエルは絶対に外さないからな。これは、僕が神の代行者である証なんだ。絶対に手放すもんか!」
    「分かってるよ。使い勝手の良いカードだけを残すんだ。パーツの効果を見せて」
     スキエルパーツの上位互換は、四種類もあった。あまり使われているところを見たことがないから、なんだか新鮮な気分だ。テキストを見ると、なかなか恐ろしい効果を持ってることが分かる。
     ルチアーノと話し合いながら、デッキの中身を入れ換えていく。データベースとにらめっこしながら、ほしい効果のカードを探し出した。ルチアーノは直接データベースに接続できるようで、僕の要求を満たすカードをすぐに提示してくれた。変えてもらうだけでは不公平だから、僕もデッキを差し出す。カード同士が噛み合うように、二つのデッキを調整した。
    「とりあえずは、こんな感じでいいかな」
     カードリストを端末に登録しながら、僕は大きく息をついた。いつの間にか、夕食の時刻を過ぎている。すっかり集中してしまっていた。
    「神から授けられたデッキだったのに……」
     ルチアーノは少し不満そうだ。納得してもらうには、実際に使ってみるしかないだろう。分かってくれるといいのだけど、少し心配だ。

     翌日の午前に、僕たちはカードショップへと向かった。新しいデッキには、持っていないカードがいくつかあったのだ。ルチアーノの手を引いて、デュエリストで溢れる路地裏を歩いていく。
     ルチアーノは、カードショップというものを知らないみたいだった。キョロキョロと周囲を見回しながら、僕の後を付いてくる。彼のデッキは神が作ったものだと言っていたし、ショップという場所には用事がなかったのだろう。
    「これが、カードショップってやつかよ」
     店内に並ぶショーケースを眺めながら、ルチアーノが呟いた。入口のすぐ側には、お店イチオシのカードが並べられている。歩み寄って値札シールを見ると、彼は顔をしかめた。
    「結構するんだな。紙切れ一枚に千円かよ」
    「そういうものなんだよ。ものによるけど、高いものは何万もするよ」
    「ぼったくりだろ。買うやつなんているのかよ」
     いるから商売として成り立っているのだが、それは言わなかった。イリアステルの幹部である彼は、カードを買うという行為をしたことが無いのだろう。人間の価値観が伝わるとは思わなかった。
    「で、目的のカードはどこなんだい?」
     ルチアーノに急かされて、僕は店内を見回した。テーマや種類ごとに分けられたショーケースの中から、リストアップしたカードを探す。在庫を確認したら、今度は足りないカードの確認だ。
    「これとこれとこれは、ショーケースにあったよ。この二つは無かったから、ストレージから探さないとね」
    「ストレージ? なんだよ、それ?」
     疑問符を浮かべるルチアーノを引っ張って、僕は店の奥へと移動した。壁際に並んだ棚の中に、ケースに立てられた大量のカードが並んでいる。ケースには分類を仕分けるシールが貼られていて、中身が分かるようになっていた。
    「この中から探すんだよ」
     そう言うと、僕はケースのひとつを取り出した。中のカードを取り出して、一枚ずつ確認していく。一通り目を通すと、ケースを元の場所に戻した。
     ルチアーノは、そんな僕を呆然とした顔で見つめていた。ケースの山と僕の手元を見比べて、眉にしわを寄せる。
    「もしかして、これ全部を確認するつもりかい」
    「そうだよ。魔法カードのものだけだけどね」
     答えると彼はあからさまに嫌な顔をした。面倒くさいのだろう。僕だって、たまに面倒に感じることがあるのだから。
    「全部って、すごい量だぞ? 本当に見るのか?」
    「カードを見つけるまでね。ほら、ルチアーノも手伝って」
     僕が言うと、彼もしぶしぶストレージに手を伸ばした。ケースの中身を取り出して、カード名を確認していく。
    「うわぁ、このスリーブ、べたべたするんだけど」
     顔をしかめて言うと、カードの山をケースに突っ込む。相当不快だったのか、ケースを戻したきり、次を調べる様子はなかった。
    「僕は手伝わないからな。君が探せよ」
     そう言い残して、店内の物色を始めてしまう。仕方がないから、僕一人で探すことになった。
     何軒かお店を回って、ようやく全てのカードを買うことができた。ルチアーノは手伝ってくれなかったから、ほぼ僕一人の成果だ。我ながら、自分を誉めたくなる。
    「人間って、あんなに面倒くさい方法でデッキを準備してるんだな」
     呆れたような口ぶりで、ルチアーノが言った。
    「こだわる人はね。ストラクチャーデッキでもデュエルはできるから、そっちを選ぶ人もいるよ」
    「わざわざ高い金出してカードを買うとか、人間って変なやつらだよな」
     ルチアーノは言う。僕には当たり前になっていることだったから、なんだか新鮮だった。
    「最初はそう思うんだけどね。すぐに慣れるんだよ」
     カードを鞄にしまいながら、僕は言う。隣から、ルチアーノの気の無い返事が聞こえた。
    「帰ったら、新しいデッキを試してみようね」
     僕が言うと、彼は黙ったまま頷いた。相変わらず気の無い返事だが、嫌がっているわけでは無さそうだ。
     ルチアーノとカードショップに来るなんて、初めての経験だった。もしかしたら、最初で最後になってしまうかもしれない。そう思うと、彼を連れてきて良かったと思うのだった。
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