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    流菜🍇🐥

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    カドショに行く主ルチの話、その2です。プレミアカードについての捏造が多く含まれます。

    ##TF主ルチ

    プレミアカード カードショップのショーケースを見ていたら、一枚のカードが目に止まった。特価品コーナーの片隅に、青眼の白龍が並んでいたのだ。
     青眼の白龍は、かつては世界に数枚しかないレアカードだった。海馬コーポレーション社長であり、バトルシティ参加者であった海馬瀬人が、エースとして従えていたことで有名なモンスターだ。今では何種類かの記念カードが発行されていて、希少ながらも一般市民の手に渡っている。
     僕は、そのカードをまじまじと見つめた。二重に覆われたスリーブには、『傷あり特価品』と書かれた値札が貼られている。特価と書かれてはいるが、簡単には買えない価格だ。識別ナンバーを調べたところ、バトルシティ三十周年の記念品であること分かった。
    「何を見てるんだよ」
     隣から声をかけられて、飛び上がるほど驚いてしまった。視線を向けると、ルチアーノが呆れ顔で僕を見上げている。買い物を終えて、レジから出てきたのだ。
     今日は、ルチアーノの買い物に付き合っていた。カードプロテクターがほしいと言われて、一緒に買いに来たのだ。メーカーごとの特徴を教えて、気に入ったものを選んでもらった。彼が会計をしている間に、僕はカードを眺めていたのだ。
     ルチアーノは、僕の見ていた棚に視線を向けた。中に並んだ高価なカードたちを一瞥すると、淡々とした調子で言う。
    「何か、欲しいものでもあるのかい? 買うなら今のうちだぞ」
     ここに並んでいるのは五桁を超える値札のカードばかりだ。簡単に買える値段ではなかった。
    「見てただけだよ。じゃあ、帰ろうか」
     ルチアーノの手を取って、ショーケースに背を向ける。ルチアーノが、小さな声で「ふーん」と呟くのが聞こえた気がした。

     翌日は、単独行動だった。ルチアーノはイリアステルの任務があると言って、朝早くから出掛けてしまったのだ。特にやることも無かったから、遊星たちのところへ出掛けていた。
     家に帰ると、ルチアーノが待ち構えていた。僕がリビングに入ったのを見ると、落ち着かない様子で立ち上がる。僕の前に歩み寄ると、そわそわしながら何かを差し出した。
    「これ、やるよ」
     僕は驚きながらそれを受け取った。ルチアーノが何かをくれるなんて、滅多に無いことだ。何かを企んでるんじゃないかと思った。
     それは、カードショップの袋だった。手のひらに乗るくらい小さな袋の中に、何枚かのカードが入っている。テープを剥がすと、中からカードを取り出した。
    「えっ!?」
     中身を見て、思わず声を上げてしまった。それは、複数枚のカードなんかではなかったのだ。二重のスリーブに包まれたきらびやかなカードが、袋の中には収まっていた。貼り付けられた値札には、『傷あり特価品』の文字がある。
     そう、彼からのプレゼントは、昨日僕が見ていた青眼の白龍だったのだ。驚いてしまって、なかなか言葉が出てこなかった。
    「どうして、これを……!?」
     僕が言うと、ルチアーノはにやりと笑った。困惑する僕を満足そうに見つめながら、堂々とした態度で言う。
    「僕からのプレゼントだよ。欲しかったんだろう?」
    「そうだけど、どうして分かったの?」
    「見てたら分かるよ。君の視線は、そのカードに釘付けだったんだから。気づかない方がおかしいぜ」
     僕は恥ずかしくなった。見つめていた自覚はあったけど、改めて指摘されると、なんだか気恥ずかしい。
    「でも、これってかなりの値段だったでしょ。そんな簡単に渡して大丈夫なの?」
     おずおずと尋ねると、彼はにやりと笑った。からかうように含み笑いをする。
    「そんなもの、僕にとっては大したことないよ。遠慮なく受け取りな」
     ルチアーノは余裕綽々だ。彼にとっては、本当に大したことないのだろう。なんだか、彼が遠く感じた。
     僕は恐る恐るスリーブを外した。中から、青眼の白龍を抜き取る。バトルシティ記念版の青眼は、背景がキラキラと光っているのだ。光に当てながら、その美しい造形を眺めた。
    「ねぇ、本当に良かったの? こんないいもの、僕にはもったいないよ」
     震える手を押さえながら、スリーブの中にカードをしまう。袋の中に戻すと、元あったようにシールを閉じた。
    「なら、別のやつに渡そうか。旧サテライト辺りのやつらなら、高値で買ってくれるだろ」
     とんでもないことを言われて、僕は息を飲んだ。こんなに価値のあるものを裏社会に流すなんて、彼は何を考えているのだろうか。
    「何を言ってるの!? そんなの、ダメに決まってるでしょ!」
     慌てる僕を見て、彼は楽しそうに笑った。大きく息を吸うと、笑みを含みながら言う。
    「だったら、君が持ってればいいだろ。君は、売りも捨てもしないんだから」
     そんなことを言われたら、受け取るしかない。彼の手元に残していたら、どんな扱い方をするか分からなかった。
     とは言え、ただ貰うだけなのも申し訳ない。僕には、何も返せるものがないのだ。これでは、ただの施しになってしまう。
    「なんか、申し訳ないな。こんな高価なもの、僕にはなかなか買えないんだから」
     呟くと、ルチアーノはにやにやと笑った。僕に顔を近づけると、囁くように言った。
    「だったら、カードの分もしっかり働いてもらうぜ。それなら気にならないだろ」
     その表情を見て、僕は思った。彼は、初めから僕を操るためにカードを買ってきたんじゃないだろうか。僕の良心を動かせば、思い通りに動くと思ったのだろう。
    「もしかして、最初からそのつもりだったの?」
     尋ねるが、彼は誤魔化すように目をそらしてしまう。
    「さあな」
     僕の推測が正しいとしたら、それは恐ろしい罠だった。そんなことをされたら、僕は断れなくなる。改めて、ルチアーノの賢さを思い知った。
    「ルチアーノって中々に策士だね」
     僕は言う。彼は返事を返すことなくソファへと戻っていった。答えたくなかったのだろう。その後ろ姿を眺めてから、僕はカードをしまうために部屋へと戻った。大切なものだから、鍵つきの引き出しに閉じ込める。
     明日は、ディスプレイケースを買いに行こう。せっかくの記念品なのだから、飾らないともったいない。できれば、セキュリティのしっかりしているものがいい。
     僕は部屋を出た。恐ろしい取引とは裏腹に、心はうきうきとしていた。
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