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    流菜🍇🐥

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    ルチが悪い企みをしてるTF主ルチです。ルチがTF主くんに裏の意味のあるプレゼントを渡す話。

    ##TF主ルチ

    印籠 あの青年は、なかなかにモテるらしい。デュエル大会で名を連ねるデュエリストである上に、誰に対しても愛想の良い性格をしているから当然である。不動遊星の友達であることも、彼の人気を高める要因のひとつらしかった。
     その事実を、僕は最近になって知るようになった。チームニューワールドとしてパーティに参加すると、人々は彼に興味を示すのだ。大半は不動遊星やジャック・アトラスに纏わる質問だったが、稀に彼自身のことを尋ねたり、チームへと勧誘しようとする者もいた。
     なんだか、面白くなかった。あの男は僕が見つけたデュエリストなのに、横取りしようとする者がいるのだ。彼も、一応は断るものの、嬉しそうにヘラヘラと笑っているし、見ていて気分の良いものではない。
     あの男は、僕の所有物なのだ。彼自身にも周囲の人間にも、それをわきまえてもらわないといけない。そのためには、誰が見ても僕の物であることが分かるような印が必要だと思った。
     僕は、とある人間にコンタクトを取った。チームニューワールドのスポンサーであり、イリアステルの協力者でもある、企業の社長を勤める男だった。彼の会社では、Dホイールの部品の他に、アクセサリーを製造しているらしい。印となる装飾具を頼むには、もってこいの相手だと思った。
    「君に、用意してほしいものがある」
     そう言うと、彼は黙って頷いた。僕がどんな難題をぶつけても、この男は文句ひとつ言わずに仕事を遂行してくれた。もちろん、用途を探るような真似もしない。便利な男だった。
     彼は、一週間も経たずに例のものを献上してくれた。それは、外からは見えないように桐の小箱に入っている。蓋を開けると、銀色に光る装飾具が二つ、丁寧に並べられていた。
     僕はほくそ笑んだ。これがあれば、彼が僕の物であることは一目瞭然だろう。箱をポケットの中に押し込むと、僕はその場を離れた。

     その装飾具の出番は、以外と早くに訪れた。チームニューワールドの一員として、食事会に参加する機会があったのだ。彼もプロデュエリストのパーティーには慣れてきたみたいで、戸惑うことなく正装に身を包んでいた。
    「君に、プレゼントがあるんだ」
     そう言うと、彼は不思議そうに首を傾げた。身に纏っている衣装は整っているが、仕草は子供そのものである。なぜ、人々はこの男を欲しがるのが、到底理解などできなかった。
    「僕にプレゼント? 珍しいね」
     心底驚いたという様子に、少しだけムッとした。彼は、僕のことをなんだと思っているのだろうか。意地悪をしたい気持ちになって、尖った言葉を吐いてしまう。
    「僕だって、プレゼントを渡すことはあるさ。それとも君は、僕が貢がれるばかりで贈り物をしないと思ってたのかい?」
    「そんなことないよ。ただ、珍しいなって思って」
     慌てたように言う彼に、少しだけ気持ちが晴れた。全く、僕は何をしているのだろう。まるで子供みたいだ。
    「いいから、大人しく受け取れよ。君は僕からの施しを受けるのが好きなんだろ」
     そう言うと、桐の箱を差し出した。僕の手のひらに乗るくらいの箱だから、彼の手に乗るとさらに小さい。箱を受け取ると、彼はそっと蓋を開けた。
     中に入っていたのは、銀色のネクタイピンだった。全体的にシンプルなデザインだが、隅にインフィニティのマークがついている。僕の所有物であることを示すアイテムだった。
    「これは、何?」
     彼は中身を取り出すと、まじまじと見つめた。どうやら、本気で用途が分からないらしい。子供は知識が乏しくて困る。
    「それは、ネクタイピンだよ。ネクタイをシャツに止めるためのものなんだ。君は何も知らないみたいだから、僕がつけてあげるよ」
     ネクタイピンを手に取ると、彼の前で膝をついた。シャツとネクタイに手をかけ、ピンで止める。スーツにネクタイピンを着けた姿は、なかなかに様になっていた。
    「ふーん。なかなかに似合うじゃないか。いい感じだぜ」
     そう言うと、彼は鏡に視線を向けた。そこに映る自分の姿を見て、首を傾げる。
    「ネクタイピンって初めてつけるから、あんまり分からないな。これで合ってるの?」
    「君は、僕を疑うつもりなのかい? 僕がつけてやったんだから、合ってるに決まってるだろ」
     僕が言うと、彼は納得したようだった。隣ににじりよると、自分の分のネクタイピンを見せる。
    「いいことを教えてやるぜ。それは、僕とお揃いなんだ」
     囁くように言うと、彼は目を見開いた。僕の目を見つめると、驚いたように言う。
    「じゃあ、これはお揃いなの?」
    「そうだよ。君の好きなお揃いなんだ、大切にしろよ」
     彼は嬉しそうな顔をした。僕の方を見て、満面の笑みで言う。
    「ありがとう。嬉しいよ」
    「分かったなら、とっとと行くぞ。僕たちはVIPなんだ。遅刻はできないからな」
     彼の手を引くと、ワープ機能を起動する。こんなことで喜ぶのだから、簡単なものだ。
     会場の門を潜りながら、僕はほくそ笑んでいた。彼のネクタイには、僕の贈ったネクタイピンが輝いている。これは、彼が僕の所有物であることを示す証だった。
     彼は知らないだろうが、ネクタイピンには所有の意味があるのだ。ネクタイピンをプレゼントとして送る意味など、調べればいくらでも知ることができる。これが僕のものだと知ったら、人々は僕が彼にとって何者であるかを知るのだろう。
     それに、僕の贈ったピンには、インフィニティの紋章が型どられているのだ。インフィニティは、僕たちの所属する組織を示すものだ。このマークを見たら、勘のいい政治家なら僕たちの正体に気づくだろう。独占欲を示し、彼を繋がりで縛るために、僕はネクタイピンを贈ったのである。
     彼の着けたネクタイピンを見て、何人かの人間が驚いたように距離を取った。ここにも、イリアステルに荷担する人間が潜んでいるのだろう。彼らはこの青年を見て、恐怖を感じるはずだ。この青年は、星護主の直属の部下だからだ。
    「ルチアーノ、どうしたの?」
     にやにやと笑う僕を見て、青年は不思議そうに尋ねた。政治的駆け引きの真っ只中にいるのに、呑気なものだと思ってしまう。まあ、この男は何も知らないのだが。
    「別に、なんでもねーよ」
     そう答えて、思わず笑みを溢す。そう。彼は、何も知らないのだ。自分が何を示しているのかも知らずに、呑気にパーティに参加している。
     それは、なんて面白いのだろう。まるで、印籠を見せびらかすドラマの主人公みたいだ。そんなことを考えて、僕はほくそ笑んだ。
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