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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチの香水ネタの続きです。龍可ちゃんに香水の匂いについて尋ねられる話。導入の部分が微妙にセンシティブです。

    ##TF主ルチ

    移り香 部屋に足を踏み入れると、微かに甘い匂いが漂ってきた。部屋の中央では、ルチアーノが優雅に横たわっている。彼が顔を上げると、シーツの上に垂らされた赤い髪がさらりと揺れた。
     ルチアーノが甘えるような視線で僕を見る。彼が香水をつけている時は、触れてほしいという合図だった。言葉で示せない彼は、こういう手段で僕に意思表示をする。
     僕は、ルチアーノの隣に寝そべった。甘い匂いを肺に流し込みながら、彼の頭を撫でる。髪がさらさらと揺れ、漂う香りが強くなった。
     彼は、黙って僕に身を委ねている。手のひらを動かして、形の良い耳をなぞる。ルチアーノの身体が、小さく跳ねた。
    「してもいい?」
     尋ねると、彼は恥ずかしそうに僕から視線を逸らした。自分から誘ってはくれるものの、言葉で同意を取らされるのは嫌いなのだ。頬をほんのりと赤く染めて、嫌々といった声色で言う。
    「好きにしろよ」
     同意は取れた。両手を前へと伸ばすと、片方でTシャツの裾を捲った。もう片方の手は、下の方へと伸ばしていく。真っ白なお腹に顔を近づけると、ふわりと甘い匂いがした。
     この匂いだ。バニラのように甘ったるくて、でも、決して不快ではない人工の香り。この匂いを吸っていると、僕は、この男の子を味わいたいと思ってしまう。
    「いただきます」
     無意識のうちに、そんな言葉を呟いていた。
    「気持ち悪いこと言うなよ」
     上の方から、ルチアーノの呆れ声が響く。そんなものは少しも気にせずに、僕は彼の肌へと唇を押し当てた。

    「おい、起きろよ」
     気がついたら、耳元で声がしていた。ぼんやりする頭で目を開けて、声の主を視界に捉える。普段着に身を包んだルチアーノが、僕を覗き込んでいた。
     毛布をたくしあげて、服を着ていないことに気づいた。夜中に服を脱いだまま、疲れて眠ってしまったのだ。少し恥ずかしくなって、再び毛布を被り直す。
     時計を見ると、九時を少しすぎたところだった。太陽は高く昇り、眩しい日差しを部屋へと差し込んでいる。眩しくて、思わず目を瞑った。
    「眠そうな顔してるな。一人じゃ起きられないなんて、子供みたいだぜ」
     僕から顔を離すと、ルチアーノはからかうように笑みを浮かべる。白い布がひらりと揺れた。
    「出かけるの?」
    「ちょっと気になることがあってね。これから調べに行くのさ。君は、僕が何も言わずに出掛けたら寂しがるだろ。だから、わざわざ起こしてやったんだ」
     ルチアーノはそう言うけど、本当は彼が寂しかったのかもしれない。こういうところでも、この男の子は素直じゃないのだ。
    「ありがとう。行ってらっしゃい」
     声をかけると、彼は嬉しそうに笑った。どうやら、今日は機嫌がいいらしい。本当に、世界で一番かわいい恋人だ。
     洗面所に向かうと、浴室でシャワーを捻った。お湯を身体に浴びながら、昨晩の痕跡を流していく。さすがに、このままでは出かけられなかった。
     服を着ると、じんわりと汗が滲む。日が昇らない時間でも、夏場の浴室は熱がこもって暑い。窓を開けると、涼しい風邪を全身に浴びた。
     部屋に戻り、一日の予定を考える。今日は、特に急ぎの用事は無かった。
     ベッドに腰をかけ、ぼんやりと部屋の中を見渡す。最近は常にルチアーノに振り回されていたから、一人の時に何をしていいのか分からないのだ。WRGPが始まっているから、遊星たちに会うこともできない。
     ルチアーノは、毎日こんな気持ちだったのだろうか。僕とタッグを組むまでは、人間たちの様子を観察していたのだと、いつだったかに彼は話してくれた。その任務はずっと座っているばかりで、デュエルもできないのだという。そんな日々を過ごしていたから、彼は喜んで僕とタッグを組んでくれた。
     結局、何も予定は決まらなかった。せっかくだから自分の好きなところに行こうと思い、鞄を持って家を出る。チョーカーをつけることは忘れなかった。
     家から出ると、シティ繁華街へと足を運んだ。この通りの片隅には、カードショップの並ぶエリアがある。目ぼしいものがあったら買おうと思ったのだ。
    「○○○?」
     不意に、後ろから声が聞こえた。振り返ると、大きな鞄を抱えた龍可の姿がある。彼女は僕を見ると、にこりと微笑んだ。
    「龍可? 随分久しぶりだね。元気にしてた?」
     僕は尋ねる。WRGPでライバルになるから、僕たちはあまり顔を合わせないようにしていたのだ。大会で当たらなかったから、龍可に会うのも一ヶ月ぶりくらいだった。
    「わたしは元気よ。遊星たちも、いつもと変わらないわ。○○○は?」
    「僕も、いつもと同じだよ」
     社交辞令のような挨拶をすると、龍可はおかしそうに笑った。可愛らしい笑い声を上げると、いつもの調子に戻って言う。
    「なんか、おかしいわね。友達同士なのに、まるで知らない人みたい」
     彼女の言葉を聞いて、僕も笑ってしまった。言われてみれば、確かにその通りだ。久しぶりすぎて、どう言葉をかけていいのか分からなかったのだ。
     少し話をすると、緊張は解けてくれた。龍可の隣に並ぶと、代わりに荷物を運ぶ。話を聞くと、遊星に頼まれた買い物らしい。
    「そういえば、今日は龍亞と一緒じゃないんだね」
     尋ねると、彼女は思わせぶりに笑った。ませた女の子の表情で僕を見上げる。
    「今日は別行動なの。わたしたちも子供じゃないんたから、いつでも一緒にいるわけじゃないのよ」
     そう言う彼女は、すごく大人びて見えた。しばらく会わないうちに、雰囲気が変わっている。戦いを重ねるうちに、少しずつ成長しているのだろう。
    「そっか。そうだよね。来年は中等部になるんだもんね」
     言葉にすると、途端に現実味が増してきた。龍可も、中学生になるのだ。子供の成長は早い。
     町には、燦々と日の光が差している。眩しい太陽に焼かれる僕たちを、通り抜ける風が束の間の間だけ冷やしてくれる。服をはためかせてTシャツに籠った熱を追い出していると、龍可が不思議そうな顔をした。
    「なんだか、いい匂いがするわ。何の匂いかしら?」
     僕には、心当たりがなかった。鼻をすんすんと鳴らして、匂いの出所を探す。
    「匂い? そんなものあるかな? 僕には分からないけど」
    「お菓子みたいな、甘い匂いがするの。柔軟剤かしら?」
    「…………あ」
     そこで、僕はようやく気がついた。その匂いは、僕の服から発せられているのだ。ここ数日、ルチアーノは香水をつけていたが、わざわざ洗濯物を分けたりはしなかった。一緒に置いていたことで、香水の香りが移ったのだろう。
    「どうしたの?」
     龍可がこちらを見る。動揺を見透かされてるんじゃないかと思って、心臓がドクンと鳴った。
    「最近、洗濯物に柔軟剤を入れるようになったんだ。そんなに匂うかな?」
     平静を装って答えると、彼女はにこりと笑った。
    「いいえ。いい匂いだと思うわ」
     そのまま、僕たちはしばらく黙っていた。心臓がドクドクと鳴って、汗が流れてくる。動揺を欠かすだけで精一杯だった。
     そんな僕の気持ちを知っているのか、龍可はさらに言葉をつづける。
    「この匂い、知ってる気がするの。確か、ルチアーノくんも同じ匂いの服を着てたわよね」
     僕は、心臓が止まるんじゃないかと思った。まさか、龍可がルチアーノと会っていたとは。その上に、匂いまで覚えているなんて。
    「龍可は、ルチアーノと会ったの?」
    「ええ。この前、アカデミアの前で会ったのよ。同じ匂いを身に付けてるなんて、二人は仲良しなのね」
     にこりと笑いながら、彼女は言う。僕には、その笑顔が全てを見透かしているかのように見えた。彼女は、全てを察した上で喋っているのではないかと、僅かにでも思ってしまう。そうだとしたら、とても恐ろしいことだった。
     もしかしたら、ルチアーノはこうなることを予測して香水をつけていたのだろうか。僕に匂いを移して、自分のものであると主張するつもりだったのだろうか。聡明で独占欲の強い彼のことだから、そこまで考えていたとしてもおかしくない。
     僕は、ルチアーノの手のひらの上で踊らされていたのだ。そう思うと、少しだけルチアーノが恐ろしく感じた。
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