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    流菜🍇🐥

    @runayuzunigou

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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチ。女装ルチとTF主くんが遠征を口実にファッションストリートでデートする話です。

    ##TF主ルチ

    デート 駅のホームに、女性の声のアナウンスが響いた。メロディが流れ、電車が音を立てながら滑り込んでくる。行き先表示を確認してから、僕はルチアーノの手を引いた。
     僕たちは、シティの外に来ていた。僕の家から電車で二時間ほどかかる、隣県の大都市だ。行こうと思えばいつでも行けるけど、わざわざ出向くほどでもない。そんな場所だった。
     デュエルの大会が開催されるのは、ネオドミノシティだけではない。シティほど活発ではなくても、全国各地で大会は開かれているのだ。中には、賞金額が大きかったり、プロデュエリストと戦えるような大規模な大会もあった。
     僕たちが参加するのは、プロデュエリスト養成所の公式大会だった。養成所の宣伝を兼ねた大規模な大会で、養成所の生徒を対象にした部門のほか、一般参加者を募る部門も設けられている。優勝した参加者は、プロデュエリストへの挑戦権が与えられるのだ。
     情報を持ってきたのは、もちろんルチアーノだ。どこで仕入れて来るのか、彼はこの手の情報に詳しかった。プロテュエリストとの対戦と聞いて、僕は二つ返事で了承した。
     大会遠征と言ったら、各地の観光だ。前回のこともあって、ルチアーノは僕の思惑を察しているみたいだった。話を持ちかけると、にやにやと笑いながらこう言った。
    「どうせ、向こうで泊まるつもりなんだろ。僕を宿に連れ込んで、いかがわしいことをするんだ。君って、どうしようもない変態だね」
     反論したかったが、僕には言葉が見つからなかった。彼の推測は正しい。開催地を聞いて、僕の頭は宿を取ることで一杯になっていたのだから。
    「そうだよ。僕は、ルチアーノとホテルに泊まりたいんだ。そんな機会は、滅多にないから」
     素直に白状すると、ルチアーノは恥ずかしそうに頬を染めた。自分からからかってきた癖に、改めて指摘されるのは恥ずかしいらしい。頬を林檎のようにしながら、僕を睨み付ける。
    「そんな恥ずかしいこと言うなよ、変態」
     予想外の反応に、今度は僕が恥ずかしくなってしまった。確かに、今の発言は直球すぎたかもしれない。身体が熱く火照り、頬が赤くなってしまう。
    「なんか、ごめん」
     謝ると、彼はさらに赤くなった。鼻を鳴らすと、そっぽを向いて呼吸を整える。落ち着くと、気を取り直したようにこう言った。
    「別に、宿に泊まることは認めるよ。その代わり、日中の行き先は僕に決めさせてくれないかい? 君ばかりが決めるなんて、フェアじゃないからね」
     思ってもみない提案だった。前回の遠征の時は、ルチアーノはそこまで乗り気ではなさそうだったのだ。観光スポットも泊まるホテルも、全部僕が一人で決めた。勝手に選んだから、気に入ってもらえたのか不安だったのだ。
    「いいよ。ホテルの部屋も、一緒に決めようか。僕は、お風呂の大きな部屋がいいかなって思ってるけど」
     ルチアーノを手招きして、端末の画面を見せる。そこには、予約可能なホテルの情報がズラリと並んでいた。あまり大きな声では言えないが、すべてが恋人同士のための宿である。
     案の定、彼は画面を見るなり眉を寄せた。表示されたデータをスクロールしながら、呆れたような声を出す。
    「君は、こんなサイトで宿を探してたのかよ。本当にやる気満々だったんだな」
     僕は、気まずくなって視線を逸らした。確かにそうなのだけど、言葉にされるとすごく恥ずかしいのだ。
    「そんなこと…………は、あるけど……」
    「あるんじゃないか。変態」
     なんか、そういうプレイをされてるみたいだった。肌が熱くなって、下の方がむずむずとしてしまう。自分にこんな嗜好があるなんて、思いもしなかった。
    「あんまり言わないでよ。変な気持ちになるから」
     そう言うと、ルチアーノは目を見開いた。冷たい瞳で僕を見ると、じっとりとした声で言う。
    「…………変態」
     本気の声だった。今の言葉は、そんなに気持ち悪かっただろうか。

     僕とルチアーノは、ホテル付近の駅で待ち合わせをしていた。彼のワープ能力で飛べば一瞬なのだが、任務があるからと言って断られたのだ。僕だけが先に現地に行って、チェックインを済ませることにしたのだ。
     一人での遠出は久しぶりだった。いつもはルチアーノと一緒だったから、なんだか新鮮な気持ちになる。新幹線から見える景色を見ながら、彼にもこの景色を見せたかったと思った。
     宿に向かうと、一人でチェックインを済ませる。モニターの表示に苦戦しながらも、なんとか部屋までたどり着いた。今回の部屋は、白を貴重にしたシンプルなデザインだった。入り口付近に大型のテレビとソファが設置され、奥には大きなベッドが鎮座している。テレビ下のアメニティには、紅茶やコーヒーのパックが置かれていた。
     キャリーケースを置くと、すぐに部屋を出る。急がないと、約束の時間に遅れてしまう。ルチアーノは、遅刻にうるさいのだ。
     小走りで駅へと向かうと、階段を登った。息を切らしながら構内へ入り、ルチアーノの姿を探す。周囲は人で溢れていて、人を探すのはなかなかに難しかった。諦めてルチアーノが見つけてくれるのを待つことにする。
    「今日は遅刻しなかったんだね。偉いじゃないか」
     背後から、聞き慣れた男の子の声が聞こえた。ルチアーノだ。わざわざ後ろから声をかけるということは、何かを企んでいるのだろう。そう思って、覚悟を決めてから振り向いた。
     覚悟を決めたにも関わらず、僕は言葉を失ってしまった。そこに立っていたのは、ワンピースに身を包んだ美少女だったのだ。ルチアーノは、僕がプレゼントした青いワンピースに身を包んでいた。髪は青いリボンで飾り、足をブーツに納めた姿は、一見するとどこかのお嬢様のようだ。いつも着けている仮面は外されていて、パッチリとした両目が晒されている。唇はぷるぷると濡れていて、頬はほんのりピンク色に染まっていた。
    「どうしたの? そんな格好して。女の子の格好なんて嫌なんじゃなかったの?」
     僕が尋ねると、彼はからかうようににやりと笑った。その場でくるりとターンをして、スカートの裾を見せつける。
    「驚いたかい? 君が喜ぶと思って、着てきてやったんだよ。今日は、君が何よりも楽しみにしてるデートの日だからね」
     からかうように笑う姿は、いつものルチアーノと同じだった。何度もこの姿を見ているが、未だに顔を会わせるときにはドギマギしてしまう。女の子の姿をしたルチアーノは、どこからどう見ても美少女なのだ。
    「びっくりしたよ。そんな格好をするなんて思わなかったから」
    「わざわざホテルを予約するくらいなんだから、これくらいのサービスはしないとね。…………行こうよ、お兄ちゃん」
     作り物の声を上げながら、ルチアーノは僕の手を引く。いつものことなのに、心臓がドキドキしてしまう。ちょっとまごつく僕を見て、彼は楽しそうににやにやと笑った。
     改札を通り、プラットホームへと上がる。目的地までは、ここから電車で二十分ほどかかるらしい。はぐれないようにしっかりと手を繋いで、電車へと乗り込む。平日の昼間なのに、車内にはそこそこの乗客が乗っていた。
     ルチアーノは、ちらりと僕を見上げた。口角を少しだけ歪めると、からかうように目配せをする。既に、彼のいたずらは始まっているらしい。僕に現地集合を持ちかけたのも、このためだったのだろう。気を取り直して、大きく深呼吸をした。
     何度目かのアナウンスを聞いた頃に、ルチアーノは行動を起こした。僕の手を強く引っ張ると、笑いながら振り返る。
    「ここだよ。お兄ちゃん」
     手を引かれるままに、僕は電車から降りた。周囲の大人たちが、微笑ましいものを見るような視線を向ける。きっと、年の離れた兄妹か、近所の子供の面倒を見る学生か何かだと思っているのだろう。僕たちが肉体関係を持つ恋人同士だなんて、誰も思わないだろう。
     降りた場所は、若い女の子に人気の観光地だった。女性向けのショップが立ち並ぶ、いわゆるファッションストリートと言われる場所だ。普段のルチアーノからは考えられない選択だった。
    「ここに行くの!?」
     驚きの声を上げると、彼は楽しそうに笑った。甲高い声が、僕の鼓膜を刺激する。外見に似合わない嗜虐的な笑みに、心臓がどくんと鳴った。
    「お兄ちゃんは、私の服を選ぶのが好きなんでしょう? たくさん選ばせてあげるから、ついてきて」
     女の子の声で言うと、ぐいぐいと手を引っ張る。今日は、ずっとこの調子でいくつもりらしい。こんなの、絶対に心臓が持たない。
     ルチアーノが向かった先は、若い女の子向けの服屋だった。ショーウインドーには、フリルとレースに彩られた可愛らしい服に身を包んだマネキンが並んでいる。男が入るには勇気のいる店だったが、彼は迷わずに僕を引きずり込んだ。
    「見て、かわいい服ばっかだよ。お兄ちゃんはどれが好き?」
     わざと大きめの声を上げると、僕を棚の前まで引っ張る。店内にいる女の子が、奇妙なものを見るように視線を向けた。心なしか、店員さんもこっちを警戒している気がする。今すぐに出ていきたかった。
    「僕は外で待ってるから、一人で見てきてよ」
     気まずさに耐えきれずに提案するが、ルチアーノは許してくれなかった。僕の手をしっかり握りしめると、強い力で引き留める。
    「だめだよ。約束したんだから、ちゃんと守らないとだめなの」
     ルチアーノは、意地でも僕を逃がさないつもりだ。こうなったら従うしかない。彼は、一度決めたら譲らないのだ。
     ルチアーノは次から次へと服を持ってきた。言っておくが、僕には女の子の服というものが分からない。服の分類も分からないし、トレンドなんてもってのほかだった。
    「ねえ、これはどうかな?」
     ワンピースを身体に当てながら、ルチアーノは言う。女の子らしいデザインだが、今の彼にはよく似合っていた。
    「似合ってるよ」
    「そう? じゃあ、こっちは?」
     そう言って、彼は別のワンピースを手に取る。黒と白のツートンだった。ちょっとメイドさんみたいだ。
    「似合ってる。かわいいよ」
     何を示されても、僕にはそんな返事しかできなかった。僕は、ファッションには疎いのだ。どれを着ても、かわいいということしか分からなかった。
    「ちょっと、ちゃんと見てるの? さっきから似合うとかわいいしか言ってないでしょ」
     頬を膨らませながら、ルチアーノは尖った声を出す。パフォーマンスなのは分かっているが、やっぱりドキリとしてしまう。心臓に悪かった。
    「だって、僕には分からないんだよ。女の子の服なんて」
     僕が弁明すると、彼は大きくため息をついた。可憐な容姿も相まって、生意気な女の子のようだ。
    「もう、頼りないなぁ。次に行くよ」
     服を戻すと、彼は僕の手を引っ張った。お店を出て、次の店へと連れ込まれる。今度は、ストリート系ファッションのお店のようだった。
     ここでも、僕はさっきと同じような反応しかできなかった。差し出される服を、片っ端から誉めていく。お世辞ではなく、彼にはどんな服も似合うのだ。
     彼は、僕の反応が不満みたいだった。僕の服を掴んで顔を引き寄せると、低い声で言う。
    「君、真面目に見てるのかよ。さっきから、同じようなことしかいってないじゃないか」
    「ちゃんと見てるよ。どれも似合ってるから、ひとつに選べないんだよ」
     答えると、彼は頬を赤く染めた。恥ずかしそうに俯くと、小さな声で言う。
    「なんだよ。誉めたって、何もでねーぞ」
     少し嬉しそうだった。少女の格好で照れる姿を見ていると、こういうのも良いなと思ってしまう。
    「僕は、どんな服でもいいから、ルチアーノが好きなものを選んでよ」
     そういうと、彼は俯いたままもじもじした。何度か身動ぎをすると恥ずかしそうに言う。
    「僕は、君が選んだやつが良いんだよ」
     反則だった。人前じゃなかったら、抱き締めていただろう。彼は、僕が選んだ服が良いと言ってくれたのだ。
    「僕が選んだものなら、なんでも良いの?」
    「変なもん着せたら、お仕置きだからな」
     俯いたまま、彼は言葉を続ける。頬が赤く染まっているところに、本気であることを感じられる。
    「分かってるよ。今日は、ちゃんと選ぶから」
     そんなことを言われたら、かわいいで流してなんかいられない。彼の持ってくる服を見比べながら、僕の素直な感想を伝える。
    「その二つなら、こっちのワンピースの方が好きだよ」
    「こっちの方が似合ってるような気がするな」
    「これを着てみてもらってもいい?」
     ルチアーノは、文句ひとつ言わずに僕の意見を聞いてくれた。いつもからは考えられない素直さだった。女の子の振りをしているからだろうか。
     その後も何件かお店を回って、ようやく二種類の服に絞りこんだ。ストリート系のパンツスタイルと、ガーリーなワンピースだ。これ以上は絞り込めそうにない。二つとも買うことにした。
    「次のデートには、この服を着てくるから、楽しみにしててね」
     華のような笑顔を見せながら、ルチアーノは女の子の声で言う。
    「楽しみにしてるね」
     言葉を返すと、嬉しそうに笑い声を出した。いつものきひひ笑いではない、優しい笑い方だった。
    「次は、どこに行こうか」
     尋ねると、彼は嬉しそうに顔を上げた。僕を見上げると、弾んだ声で言う。
    「クレープが食べたい!」
     またもや、予想外の答えだった。彼は、本気でこのデートを演じきるつもりらしい。そうなったら、僕もとことんまで付き合うしかない。
    「いいよ。どこのお店にする?」
     ルチアーノに手を引かれて、クレープ屋を選ぶ。どれも似たり寄ったりで、あまり違いが分からなかった。
     結局、駅に近いお店で食べることにした。僕は苺とアイスクリームのクレープを、ルチアーノはベリーのクレープを注文する。出来立てのクレープを受け取ると、少し離れた場所で食べることにした。
    「うわぁ。予想はしてたけど、すごい甘いんだな。食事メニューにしておけばよかったぜ」
     普段の声に戻って、ルチアーノは呟いた。外見と声のギャップに、心臓がドキドキしてしまう。今日だけで、何回ドキドキしているのだろう。宿に帰ったら、この分の仕返しをしようと思った。
    「クレープなんだから、甘くて当然だよ。この甘さが醍醐味なんだから」
    「君のやつは、アイスまで乗ってるんだろ。そんなものよく食べられるよな」
     文句を言いながらも、彼はクレープを食べきった。口直しをしたいからと、たこ焼きまで食べていた。彼に付き添って、僕も同じメニューを食べる。
     食べ終わる頃には、すっかり日が暮れていた。宿に帰るには、ちょうどいい時間だ。
    「じゃあ、そろそろ宿に帰ろうか」
     ルチアーノは恥ずかしそうに頷く。これから行う行為を想像したのだろう。言葉だけで照れるなんて、変態なのはどっちなのだろう。
     帰りの電車は、行きよりも混んでいた。ルチアーノの小さな身体を引き寄せて、電車に乗り込む。人間に押し潰されないように、僕の身体で庇うことにした。
    「ルチアーノ、大丈夫だった?」
     電車を降りると、真っ先に声をかけた。電車の中で、僕たちはぴったりくっついていたのだ。苦しい思いをさせていたかもしれない。
    「別に、なんともないよ」
     頬を赤く染めながら、ルチアーノは言う。怒っているのかと思ったが、そうではないようだった。困惑する僕を見ると、足早に歩き始める。
    「いいから、早くホテルに行こうよ」
     僕は、黙ってその後に従った。町を通り抜けてホテルへ向かうと、エレベーターに乗り、部屋の鍵を開けて中に入る。ドアを閉めるまで、僕たちは一言も話さなかった。
     ロックがかかる音を聞くと、ルチアーノはくるりとこっちを振り向いた。頬を赤く染めたまま、小さな声で言う。
    「やるぞ」
    「え?」
     僕は、思わず聞き返してしまった。彼の言葉が理解できなかったのだ。僕の言葉を聞くと、彼は煩わしそうに鼻を鳴らした。あからさまに不機嫌な態度で、言い聞かせるように言葉を吐く。
    「だから、やるって言ってんだよ。とっとと服を脱げ」
     ルチアーノが自分の服に手をかける。チャックを下ろそうとしたところで、思わず止めてしまった。
    「待って!」
    「なんだよ」
    「服、着たままでしてほしい」
     僕が言うと、彼は頬を真っ赤に染めた。じっとりとした目で僕を睨んで、湿った声で言葉を吐く。
    「…………変態」
     だって、仕方なかったのだ。この格好のルチアーノは、この世のものとは思えないほどに美しい。こんな可憐な女の子から男の子の声がすることに、僕はドキドキしてしまうのだ。
    「だって、ずっとドキドキしてたから」
     素直に白状すると、彼は恥ずかしそうに下を向いた。僕の手を引くと、部屋の奥へと歩き出す。
    「ほら、とっととベッドに行くぞ」
     ルチアーノの後ろ姿を見ながら、僕は納得していた。電車を降りた時の奇妙な態度は、照れだったのだ。あの密着で、彼のスイッチが入ってしまったのだろう。
     こんなの、まるでデートだ。一緒に服を選んで、ご飯を食べて、ドキドキしながら宿に帰る。こんな恋人同士のようなことをできるなんて、半年前は思いもしなかった。
    「何にやにやしてるんだよ」
     幸せに浸っていると、ルチアーノの冷たい声が降ってきた。いつの間にか、こっちを振り返っていたらしい。じっとりとした瞳を見つめ返して、素直な気持ちを伝える。
    「幸せだなって思って」
     僕の言葉を聞くと、彼は呆れたように眉を寄せた。じっとりとした表情を見せると、大きくため息をつく。
    「君って、変なやつだよな」
     僕は、本当に幸せなのだ。ルチアーノに何を言われても、その気持ちは変わらない。その呆れ顔すらも愛おしくて、僕はにこりと笑った。
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