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    流菜🍇🐥

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    ルチにいけないことを教えるTF主の話。センシティブではありませんがセンシティブを匂わせる言葉選びが出てきます。

    ##TF主ルチ

    いけないこと 夜中に目が覚めた時に、彼の姿を探すことが習慣になっていた。そっと隣に手を伸ばして、大きな背中に手のひらを回す。眠りの深いこの青年は、一度眠りに落ちてしまうと、なかなか目を覚ますことが無い。彼に感づかれることなく、その身体に触れることができるのだ。
     何度か背中を撫でていると、彼がもぞもぞと身動きをした。珍しく目を覚ましたらしい。ちらりと僕に視線を向けると、小さな声で言った。
    「眠れないの?」
     僕は布団の中に顔を埋めた。返事は返さなかったが、彼は何かを察したみたいだった。そっと身体を起こすと、上に被っている布を剥がす。
     僕は両手で顔を覆った。顔を見られるのが恥ずかしかったのだ。僕はさっきまで涙を流していて、目元にはその名残が残っている。夜中に泣いていたことは、絶対に彼には知られたくなかった。
     彼は僕を見ると、黙って背中に手を伸ばした。大きな手のひらが、優しく僕の背中を撫でる。その温もりに身体を預けていると、目が冴えてきてしまった。ゆっくりと顔を上げて、青年の顔を見上げる。
     青年は、真っ直ぐに僕を見つめていた。視線が合うと、優しい微笑みを浮かべる。表情を作れずにいる僕を見ると、優しい声でこう言った。
    「眠れないなら、いけないことをしようか」
     その言葉に甘い響きが宿っている気がして、僕は思わず息を呑んだ。俗世の人間の言う『いけないこと』なんて、ろくなことではないに決まっている。身体に力が入った。
    「何をするつもりだよ」
     僕が言うと、青年は布団から這い出した。あやすような態度で僕の頭を撫でる。
    「ちょっと待っててね」
     そう言うと、彼は部屋から出ていった。子供にするような扱いに腹が立ったが、今はそれどころではない。彼は、『いけないことをする』と言ったのだ。いったい何を考えているのか、全く見当もつかなかった。
     落ち着かない気分になって、僕は布団から起き上がった。俗世の人間が言う『いけないこと』とは、時にいかがわしい意味を含むらしい。彼と関わるうちに、僕は変な知識を身につけてしまった。
     僕は、これから抱かれるのだろうか。あいつはとんでもない変態なのだ。もしかしたら、僕の想像を超えるような奇抜な道具を持ち込むのかもしれない。変なことを要求されたら、突っぱねてやろうと思った。
     しばらくすると、彼の足音が聞こえてきた。体内で何かが蠢き、頬が赤くなるのが分かる。羞恥心から逃げるように、僕は壁際へと視線を逸らした。
     彼が布団の中へと足を入れる。がさごそとレジ袋が擦れる音がして、僕の頬に何かが触れた。
    「っ!?」
     予想しなかった感覚に、思わず息が漏れてしまう。頬に触れたものは、妙に固くて、冷たかったのだ。身構えながら視線を向けると、アイスクリームのカップを持った青年の姿があった。
    「ごめんね。気づいてると思ったから」
     申し訳なさそうに青年は言う。余程僕の反応が予想外だったのだろう。それもそうだ。いつもの僕だったら、こんなことで驚いたりはしないのだ。
    「別に、驚いたりなんかしてねーよ。急に冷たいものを当てられたら、誰だって反射が起きるだろ」
     言葉を重ねると、言い訳のようになってしまった。彼に動揺を悟られているんじゃないかと思うと、羞恥心で頬が熱くなった。
    「それで、なんでアイスクリームなんだよ」
     言葉を重ねると、彼は嬉しそうに微笑んだ。カップとスプーンを差し出すと、子供のような声色で言う。
    「夜中に食べるアイスって、悪いことをしてる気分になるでしょ? ルチアーノにも、この気持ちを味わってほしかったんだよ」
    「はあ?」
     心の底から呆れた声が出てしまった。夜中のアイスで喜ぶなんて、まるで子供みたいだ。こんなことを勿体ぶった言葉で称した彼に呆れつつ、変な期待をして踊らされた自分にも腹が立った。
    「それが『いけないこと』なのかよ。ただアイスを食うだけだろ」
     呆れながら返すと、彼はにやりと笑った。勿体ぶった仕草でレジ袋を手に取ると、自慢げな声で言う。
    「実は、それだけじゃないんだよ。ほら」
     彼は、レジ袋をひっくり返した。どさどさと音を立てて、中に入っていたものが布団の上に落ちる。それは、クッキーやカラースプレーのような菓子類だった。
    「なんだよ、それ」
    「これは、アイスのトッピングだよ。クッキーは砕いて混ぜてもいいし、間にサンドしてもいい。カラースプレーは、上に乗せるとおしゃれな感じになるでしょ。この小粒チョコやラムネは、食間が面白くなるかなと思って」
     完全に子供の遊びだった。僕が、アイスのトッピングで喜ぶと思ったのだろうか。そもそも、僕は甘いものなど好きではないのだ。
    「そんなもので喜ぶなんて、君は子供みたいだな」
     もう、呆れることしかできなかった。溶け始めたアイスの蓋を開けると、スプーンで掬って口に入れる。冷たくて甘い固まりは、すぐに溶けて液体になった。
     隣では、青年がクッキーを食べている。アイスを乗せたり、カラースプレーをかけたりして、それなりに楽しんでいるようだ。視線が合うと、残ったカラースプレーを差し出された。
    「ルチアーノもかけてみる?」
    「要らないよ」
     断ると、残りをアイスの上に流し込んだ。よくそんな甘いものが食べられるものだと、少し感心してしまう。味覚がどうにかしてるんじゃないだろうか。
     アイスを食べ終わる頃には、身体の異変は無くなっていた。彼に呆れたことで、変な考えは消え去ったのだ。どうして、一番にそんなことを考えてしまったのかと、後悔が胸に押し寄せる。
    「ルチアーノ」
     不意に、彼が声をかけてきた。糖分を摂取して満足したのか、声が弾んでいる。
    「なんだよ」
    「僕が『いけないこと』って言った時、変なことを考えたでしょ」
    「はあっ!?」
     突然の指摘に、一瞬で頬が熱くなった。回路に電流が流れて、まともな思考ができなくなる。気づかれていた? いつの間に? 考えるが、理由に心当たりなんかなかった。
    「僕が、そんなこと考えるわけないだろ! 君と一緒にしないでくれるかい?」
     慌てて言い返すが、頬の熱は下がってくれなかった。彼は微笑ましげに笑うと、そっと僕の頭を撫でる。
    「誤魔化そうとしても無駄だよ。ルチアーノのことは、一番近くで見てるから。態度がおかしいことくらい分かるよ」
     全部バレていたのだ。この青年は、僕がそういう想像をすると知った上で、『いけないこと』という言葉を使ったのだ。狡猾な作戦に、怒りが沸き上がった。
    「お前のせいだぞ! お前が変なことばかりするから、僕は変態になったんだ!」
     噛み付くように言うと、彼は申し訳なさそうな顔をした。髪の間に指を入れながら、諭すような声で言う。
    「ごめんね。でも、えっちなルチアーノもかわいいよ」
     この期に及んで、そんな妄言を吐くのか。羞恥と怒りが身体を駆け抜け、身体が熱を持つ。
    「それ以上言ったら、張り倒すからな!」
     大きな声で言うと、彼の手を振り払って布団の中に潜り込んだ。身体が燃えるように熱くて、頬が火照っている。この姿を、彼には見られたくなかったのだ。
     この男は、いつの間にここまで狡猾になったのだろう。近いうちにお仕置きしなくてはと、心の底から思うのだった。
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