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    流菜🍇🐥

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    TF主ルチが猫カフェに行く話。今日のレポみたいな話です。ルチにふわふわで小さな命と触れ合ってもらいたかっただけです。

    ##TF主ルチ

    猫カフェ 町を歩いていると、女性に声をかけられた。片手にちらしの束を抱え、にこやかに微笑んで僕を見ている。目と目が合うと、手に持っていたちらしを差し出された。
    「よろしくお願いします」
     僕は、差し出されたちらしを受け取った。どこの宣伝かも分からなかったし、あまり関心はなかったが、目が合ってしまった以上、避けるわけにはいかなかったのだ。
     ちらしを渡し終えると、女性はすぐに別の通行人へと声をかけた。にこやかに笑いながら、手に持っていたちらしを差し出す。差し出された相手は女性を一瞥すると、すぐに視線を逸らして去って行った。
    「君って、変なところで真面目だよな。あんなもの、わざわざ受け取らずに通りすぎればいいのに」
     ちらしを配る女性の姿を見ながら、ルチアーノは呆れたように言う。
    「そうはいかないでしょ。配る方も大変なんだから、無視はできないよ」
    「別に、相手は気にしてないだろ。見ろよ。みんな通りすぎてるぜ」
     道行く人々に視線を向けると、ほとんどの人がちらしを避けて歩いていた。世知辛い対応だが、女性はめげずに配り続けている。
    「ちらし配りって、大変なんだなぁ」
     僕が呟くと、ルチアーノは乾いた声で笑った。僕の持っているちらしを奪い取って、興味深そうに視線を向ける。
    「で、これはなんのちらしなんだよ。…………猫カフェ?」
     僕もちらしに視線を向ける。そこには、猫の写真と共に、『猫カフェ にゃお』という文字が印刷されていた。どうやら、オープンしたばかりの猫カフェの広告らしい。
    「猫カフェみたいだね。ルチアーノは、猫カフェって知ってる?」
    「そんなもの、知るわけないだろ。なんだよ、猫カフェって」
     ルチアーノは言う。それなりに俗世の知識には詳しいようだが、猫カフェは知らないみたいだった。
    「猫カフェっていうのは、猫と触れ合えるお店のことだよ。僕も行ったことがないから、あんまり分からないんだけどね」
    「ふーん」
     ルチアーノは気のない返事をする。ちらしに視線を落とす姿を見て、いいことを思い付いた。
    「そうだ。今度、ここの猫カフェに行ってみようよ。ルチアーノは、猫と遊んだことないでしょ?」
    「はあ? 別に、興味ないよ。猫なんてただの獣だろ?」
    「そんなこと言わないで、行こうよ。きっと楽しいよ」
     説得するような語調で僕は言う。実は、以前から猫カフェというものに興味があったのだ。ルチアーノにも動物との触れ合いを体験してもらえるし、いい機会になると思った。
    「どうせ、君が行きたいんだろ。いいよ、付き合ってやる」
     ルチアーノは諦めたように言う。気のないそぶりをしているが、視線はちらしに向けられたままだった。

     翌日の午後、僕たちは繁華街に来ていた。目当てはもちろん、猫カフェである。もらったちらしの住所を見ながら、目的の建物を探す。
     ちらしのお店は、ビルの真ん中に入っていた。古ぼけたエレベーターに乗って、カフェの入っている階へと向かう。
     建物は年季が入っていたが、カフェのフロアは綺麗だった。ピカピカの扉を開けると、中へと入る。僕たちの姿を見て、受付の女性が声をかけてきた。
    「いらっしゃいませ。初めてのご利用ですか?」
    「はい」
     答えると、女性は料金の説明をしてくれた。ここのお店は三十分ごとの時間制で、利用料金にフリードリンクが含まれているらしい。ドリンクは別室に用意されていて、紙コップで自由に飲んでいいそうだ。入室時には、猫にあげるおやつの袋がひとつずつ貰えた。
     ルチアーノの手を引いて、僕は猫たちのいる部屋へと入っていく。室内はそれなりに広くて、猫たちのための設備が整えられていた。床やキャットウォークの上では、何匹かの猫がくつろいでいる。
    「これが猫カフェってやつかよ。カフェっていうから、猫を見ながら食事ができるのかと思ったけど、触れ合いコーナーって感じなんだな」
    「動物と食事をするのは難しいと思うよ。衛生法とかがあるからね」
     僕が答えると、ルチアーノは納得したように返事をした。そんな話をしている間に、猫たちが僕たちの近くへと寄ってくる。僕たちがおやつを持っていることを、経験則として知っているのだろう。
    「見て、猫ちゃんたちが来たよ」
     ルチアーノに声をかけると、僕は床にしゃがみこんだ。猫に視線を近づけて、おやつの袋を開ける。
     群がってくる猫たちに、均等になるようにおやつをあげた。猫たちはかなり人に慣れているようで、臆することなく僕の足へと前足をかけてくる。頭に触れると、おとなしく撫でさせてくれた。
    「かわいいね。ほら、ルチアーノもおいでよ」
     声をかけると、ルチアーノは恐る恐る近づいてきた。おやつの袋を開けると、猫たちが一斉に彼へと視線を向ける。猫たちに囲まれて、珍しく怯えた表情を見せた。
    「なんだよ。そんなに僕の方に寄ってきて。ぶつかっても知らないぞ」
     猫の圧に押されたのか、少しだけ後ずさっている。見たことのないルチアーノの姿に驚きつつも、助け船を出そうと声をかける。
    「そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。目線を合わせて、おやつをあげてみて」
     ルチアーノが恐る恐るといった様子で腰を下ろした。おやつの袋を見ると、猫たちが膝に手をかける。戸惑ったように猫を見ながらも、ルチアーノはおやつをあげていく。
     僕は、彼の隣に座って猫の背中を撫でた。整えられた毛並みはふわふわで、柔らかな体温を感じる。猫たちは食べることに夢中で、少しもこちらを気にしなかった。
     おやつが無くなると、猫たちは思い思いの場所へと去っていった。動物らしく、現金な仕草だ。近くに残った猫の背に触れながら、ルチアーノに声をかける。
    「意外だったな。ルチアーノは、動物が苦手だったなんて」
     僕が言うと、ルチアーノは不愉快そうに頬を膨らませた。僕の方をちらりと見て、納得いかないといった態度で言う。
    「別に、苦手なわけじゃないよ。ただ、怖いだけでさ」
    「怖い?」
    「猫は、僕たちよりも小さいだろ。うっかりぶつかったりしたら、潰れちゃうかもしれないぜ」
     ルチアーノらしい理由だった。彼の力は人智を軽々と超えるのだ。否定することもできなかった。
    「なんか、ルチアーノらしい理由だね」
     そう答えると、僕は室内を見渡した。猫カフェらしく、室内には猫のおもちゃが置かれている。猫じゃらしを手に取ると、猫の方に差し出した。
     僕が猫じゃらしを動かすと、猫たちが視線を向けた。動きを早めたり、ゆっくりにしたりして、猫たちの関心を引き付ける。何度か繰り返していると、ついに一匹が食いついた。
     猫と遊ぶ僕の姿を、ルチアーノは少し後ろから眺めていた。最初は呆れていたようだが、楽しそうな僕を見て興味を持ったのか、近くにあった猫じゃらしを手に取る。僕の隣に座ると、同じように猫じゃらしを動かした。
     一匹の猫が、ルチアーノの猫じゃらしに手を伸ばす。ちょこちょこと手を動かす猫を見て、ルチアーノは楽しそうに口角を上げた。
    「ほら、ここだぞ。今度はこっちだ。捕まえてみな」
     小さな声で話しかけながら、ルチアーノは猫へと向き合う。子供らしい姿に、思わず口角が上がってしまった。
    「何笑ってるんだよ」
     僕の視線に気づいたのか、ルチアーノは不満そうな声をあげる。
    「かわいいなって思って」
     答えると、彼は恥ずかしそうに背を向けた。その姿もかわいらしくて、連れてきて良かったと思った。
     一時間はあっという間にすぎていった。あの後、僕たちはおやつを追加で購入して、猫たちと写真を撮った。ルチアーノは恐る恐る猫の背中を撫で、命の温もりを感じていた。
     僕は、ルチアーノに延長の確認をした。僕は延長してもいいと思ったのだが、ルチアーノは首を横に振った。猫との触れ合いに飽きているようには見えなかったから、無防備な姿を見せたことが恥ずかしかったのかもしれない。精算を済ませて建物から出るまで、彼は口数が少なかった。
    「猫カフェはどうだった?」
     尋ねると、ルチアーノはちらりと僕を見上げた。少しだけ考えるような素振りをすると、噛み締めるように言葉を紡ぐ。
    「命を感じたよ。あんなに小さくても、猫たちは生きてるんだな」
     ルチアーノらしい答えだった。彼は、人間以外の生き物と触れ合ったことなどないのだろう。彼にとってプラスになってくれるなら、僕にも連れてきた甲斐があったと思える。
    「今度は、動物園に行こうか。猫以外の生き物がたくさんいるよ」
     そう言うと、彼は不満そうに唇を尖らせた。前に視線を向けたまま、拗ねたように言う。
    「別に、興味ないよ。僕は子供じゃないんだから」
     僕がルチアーノを動物園に連れていきたいのは、彼が子供だからではない。彼は、動物と触れ合ったことがないのだ。生き物と触れ合うという体験を、彼にも知ってほしかったのだ。
     ルチアーノは、少しずつ人間らしい情緒を覚え始めている。彼の変化を見ていくことが、僕の一番の楽しみなのだ。
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