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    pheas357

    @pheas357

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    pheas357

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    以前北の盾になる南というネタを出した時、ふと逆もいいよねとなって(・ω・)
    カプとしては特に意識してませんでしたがそこは左右含めご自由にヽ(・ω・)
    前に書いた話とは特につながりはありません。

    やっぱり性癖に正直にケガさせたり苦しめたりしてる…………

    元ネタというか、ポケマスのエレキブルの話、話しぶりがすごく現実味というか絶対あれ本人の実体験だよなぁっていう(゚∀゚)

    町外れの緑地帯に試料を集めに行きたいというダツラに成り行きで同行する形でネジキもついていく。最近あまり出かける事も無く、散歩がてらくらいの軽い気持ちだった。
    何十年か前、町と少し離れた山の間に、当時の実力者が様々な草木を植えたり地形を整えたりして作ったらしい。山には強力な野生ポケモンが生息するというが、この場所が緩衝地帯になっているのか町の周辺にやってくる事は緑地帯完成以降無かったと聞いている。
    今回は町からそう離れる事もないため、2人ともポケモンは連れていなかった。

    空き地のようになった場所に出た時、向こうの木立ちの方で何か大きな音が聞こえた。音はあちらこちら行ったり来たりしながら、それでも少しずつこちらへ近付いてくるようだ。
    2人で顔を見合わせてから身構える。その数秒後、茂みの中から突然野生のエレキブルが飛び出して、こちらへ向かってきた。
    少数ながら山には生息しているというが、まさかこれほど町に近い所に現れるとは思わず、2人ともポケモンを連れて来なかった事を後悔する。が、エレキブルは突然向きを変えて、明後日の方向へ走って行く。
    と思えばまた急に向きを変えたり、立ち止まったり、吠えたりと、行動には全く目的意識が感じられなかった。
    「町に行ったらまずいぞ!」
    「……て言ってもどうするの?!」
    2人でどうしたらいいかと考える。何かを狙っているというより、暴走しているだけのようだから原因を取り除く事さえできればおとなしく山へ帰ってくれるだろう。
    ダツラがエレキブルの前へと飛び出す。
    「おれが気を引くから、その間になんとか調べてくれ!」
    「わかった!」
    エレキブルがダツラの目の前を横切った……と思ったら急角度で向きを変えてダツラに向かって突進する。とっさに横っ飛びで躱すが、予測していなかったためにうまく着地が出来ず、バランスを崩してしまう。よろけながらもどうにか踏みとどまったものの、そのわずかな時間が決定的な隙となる。
    何メートルか走っていった後に再び向きを変えたエレキブルが、今度は明らかにダツラを狙ってきた。
    「!!」
    反射的にネジキが飛び出す。ネジキにしては結構な速さでエレキブルよりも先にダツラに体当たりした。完全な不意打ちに、今度こそダツラが地面に転がる。
    一瞬前までダツラが立っていた位置に、入れ替わりでネジキが立つ。この後どうするかを考えていなかったネジキは次の行動をとれず、その場で動きを止めてしまう。気が付いた時にはすぐ目の前にエレキブルが迫っていた。先ほどから攻撃態勢に入っていたエレキブルは全身が帯電して毛が逆立っている。
    ネジキは逃げようとしたが間に合わない。ほぼ無防備な状態で、自分の数倍はありそうな量感の巨体と高圧電流の直撃を同時に受けてしまう。
    「────ッ!!」
    強烈な衝撃に全身を貫かれてネジキは悲鳴を上げたが、本当に声が出ていたのかどうかはわからない。
    そこで、記憶は途切れた。

    地面に倒れたダツラが顔を上げる。むきだしの腕を擦りむいたらしく、わずかに顔をしかめるが、そこで目に映ったのはネジキの間近に迫ったエレキブルの姿だった。叫ぼうとしたが口が動かない。両者がぶつかった瞬間、ダツラには時間が止まったように感じられた。
    再び世界が動き出す。宙を飛んだネジキの体が、ダツラの近くに生えていた木に叩きつけられて地面に落ちた。そのまま動かない。
    エレキブルはそれ以上2人には目もくれず、また明後日の方向へ走っていって止まった。こちらに背を向けた状態で、それ以上は動かずにじっとしている。
    痛いほどの動悸を感じながら、エレキブルを刺激しないように静かに、それでも出来るだけ急いでダツラはネジキに駆け寄る。脈も呼吸もある事を確認して、少しだけほっとしながら右肩を掴んで軽く揺する。
    ほどなくしてネジキが目を覚ます。何度か顔をしかめながらも、よろよろと立ち上がった。
    「お……、おい、まだ動かねえ方が……」
    「大丈夫……、それよりあのエレキブル、お腹にケガしてるよ」
    まだ少しふらつきながら、林の中に入って行って、薬になりそうな草を探して集める。幸い広範囲にたくさん植えられた種類だったため、必要な量はすぐに集まった。ネジキが届かない木の実はダツラが採集する。
    「無理するなよ、一度ちょっと休め」
    そう言って、調合はダツラが担当した。
    「しっかし、よく分かったな」
    「近くに来た時、毛が立ったからね。一瞬だったけど隙間から傷が見えたよ」
    あんな一瞬でよくそこまで分かったものだと思いながら、完成した薬を手に取って、そこで考え込む。
    「薬は出来たけどよ、どうやってつけるんだ?」
    エレキブルはさっきと同じ場所でまだじっとしていた。おとなしくしていてくれればいいが、近付いたらまた襲ってくるかもしれない。
    「ぼくにまかせて」
    ネジキが薬をとってエレキブルの方へ向かって歩き出す。休んだためか先ほどよりずっとしっかりした足取りだった。
    近付いてくる気配を感じたのかエレキブルが振り返った。
    「おい、ネジキ……!」
    「大丈夫だよ、刺激しないようにして」
    こちらを向くことなくそう言って、そのままエレキブルにゆっくりと近付く。
    ネジキが何事か話している……、というより歌に近いかもしれない。抑揚をつけながら、エレキブルに向かって語りかけているようだ。聞こえる限りではシンオウ語に近いようだが、ダツラの知っている言葉ではなかった。
    ネジキが薬を持った手をエレキブルに向かって伸ばす。手が触れる瞬間、思わずダツラは両目を閉じた。
    それからゆっくりと目を開ける。エレキブルはおとなしくネジキにされるままにしていた。
    手当てを終えてネジキが少し下がる。エレキブルはゆっくりと背を向けて、そのまま山の方向へと去っていった。
    見送ってから、ネジキもゆっくりとダツラの方へ戻ってくる。
    「よかった、傷の痛みで暴れてたんだね」
    「ああ、……それよりさっきのは」
    「あれ、シンオウでは昔、野生のポケモンに襲われそうになった時に、呪文を唱えておとなしくさせてたんだって。多分聞き慣れない声だから何だろうって思って動きが止まるんだろうけどね。知ってはいたけど実際に使うの初めてだし、ぶっつけ本番でどうなるかと思ったけど、うまくいってよかったよ」
    言いながら、へたり込むようにしてその場に座る。
    「おい、ネジキ……!」
    焦ったように声をかけるダツラに笑みを向ける。
    「大丈夫、ちょっと気が抜けただけだよ、念のために、一応これから病院は行くけど」
    少し時間をおいてから立ち上がって歩き出す。ダツラもネジキの傍について、一緒に町へ向かって歩き出した。

    木に当たった時にケガをしたらしく、息をするごと、足を踏み出すごとに左の胸と肩に痛みと不快感が走り、ネジキは苦労して1歩分前を歩くダツラについていった。普段2人で歩く時には、ダツラがネジキにペースを合わせてくれるので、何の苦労もなく一緒に歩く事が出来た。今もダツラは普段と同じペースで歩いている。ずっとなんでもないようなふりをしていたから、このペースで十分ついて来れると思っているはずだ。
    電撃を受けるところは見られていたから、黙っていても病院に行くことは勧められただろう。それなら先に自分から申し出て、これ以上心配させないように、と思っていた。ケガの方はわざわざダツラに話して余計な心配をさせなくても、病院で一緒に診てもらえばそれで大丈夫と考えた。
    しかし、計算が甘かったらしい。歩くうちに痛みが酷くなり、貧血でも起こしたように頭がぐらぐらしてきた。これでは病院まで持つかどうかわからない。
    気にすれば余計に気になるのだと、不調からなるべく気をそらして、ダツラの背と自分の両足に意識を集中する。右、左、右、左、と一歩ずつ念じながら、ダツラとの距離を一定に保ち続けた。
    不意に酷い耳鳴りがして、フィルターでもかかったように視界が歪む。足の動きが止まった。意識して止めたのではなく、体がどうしても動かない。両目が強制的に閉ざされそうになる。
    それでも必死で気力を振り絞り、どうにか片足を踏み出そうとしたが、心身共に既に限界だった。
    『……もう、だめ……』
    下ろした脚が力を失い、膝ががくりと折れた。一瞬遅れて反対側の脚と上半身からも全ての力が抜け落ちる。
    朦朧としてまともな思考力も無くなった頭の隅で、起き上がれ動け歩けと命じる声がするが、指先すら動かす力もなく、それどころかその残された意識も大きな力で闇底に引き込まれるようで、抗う事は出来なかった。
    突然、声が聞こえて体が持ち上がる。肉体と共に意識も浮上するようだった。
    わずかに開いた目が像を捉える。
    そこに存在する声と姿の主が何者か認識できるだけの力は最早残されてはいなかった。ただ、目と耳から絶対的な安心感が伝わる。
    『助かった、自分は助かる』
    迷う事無く、その感覚に体も心も全て委ねる。
    痛みも焦りも消えて、限りない安らぎに満ちた闇がネジキを包み込んだ。

    背後の物音に振り返る。目に映ったものを脳が理解するまでに、やけに時間がかかった気がした。
    「おい、どうした!」
    叫びながら駆け戻る。
    「ネジキ!しっかりしろ、ネジキ!!」
    倒れたまま動かない体を起こそうと左肩に手をかけた時、かすかな呻き声がした。
    しっかり抱き起してから、もう一度触れてみた。左の肩と胸周辺がかなり熱を持っていて、服越しでも熱くなっているのがわかった。位置からして、さっき木に当たった時にケガをしたのだろう。その後ずっとこの状態で動き回っていたのだろうか。ちょっと休ませるではなく、もっと強く止めるべきだったという思いが広がる。
    大声で名を呼びながら右肩を軽めに叩く。開いた目がダツラの方へ向けられてはいたが全く焦点が合っていなかった。体の方も力が抜けきったままで、おそらく目を開くだけで精一杯なのだろう。
    「ネジキ!しっかりしろ!」
    ひたすら叫び、呼ぶ。ほんの一瞬、ネジキがわずかに笑ったように見えた。そんな事をするようには思えなかったが、それでもこれが実はただの悪ふざけで、このまま笑いながら起き上がってくれるのではないかとどこかで期待してしまう。
    しかし、そのまま目が閉ざされる。ぐったりした体は、もうどれだけ呼びかけても揺すっても何も反応を返さなかった。ただ、多少不規則ながら続いている呼吸が、まだ命がある事を示していた。
    途方に暮れそうになるが、すぐに切り替える。黙っていて事態がよくなるわけではない。今は病院に向かっていたのだから、このまま病院へ行かなくてはとダツラはネジキを抱いて立ち上がった。
    少しでもケガや呼吸の負担が少ない体勢を取らせてから歩き出す。本当は走りたいところだったが、衝撃を与えないようにするためと必死で気持ちを押さえ込んだ。
    ただ病院の建物が見えてから先は、我ながら珍しい慌てぶりだったと思う。

    病室で椅子に座ったまま、もうずっと動かずにいる。時折腕の擦り傷が痛みを訴えるが全く意に介さない。今のダツラにとっては、目の前で力無く横たわるネジキの姿だけが現実だった。
    ダツラの話を聞いた医者は驚いていた。本当ならとても動けるような状態ではなかったらしい。途中までとはいえ、よく自力で歩いていたと言われて今度はダツラの方が驚いた。
    そしてそれを思うほど後悔がつのる。それだけの辛さにどうして気付く事が出来なかったのかと、さっきからそればかり頭の中で繰り返していた。
    「ネジキ……、頼む……、起きてくれよ……」
    手を伸ばして額の辺りを撫でる。
    と、かすかに眉が動く。
    「ネジキ!」
    少し強めに呼びかけてみる。少しの間をおいて、ゆっくりと目が開かれた。
    「……だつらさん……?」
    まだ目の焦点が合っていないが、顔を少しだけこちらに向けて声を発する。
    「ああ、気が付いたか?」
    泣き声になりそうなのを堪えながら言葉を返す。顔は本当に泣きそうになっていたかもしれない。
    「…………」
    まばたき、というよりはもっとゆっくりと、ネジキが目を何度か閉じたり開いたりしていた。
    そして、先程よりはもう少ししっかりとダツラを見る。
    「……痛むか?」
    泣き声にならないように、出来るだけ普段通りの声で話そうとしたが、幾分低くなってしまった。
    「……、まだ、ちょっと」
    言いながら右手をゆっくりとついて体を起こそうとした。が、すぐに腕の力が抜けてしまう。
    息をつこうとして、傷が痛んだのか少し顔をしかめながら不規則に呼吸する。
    「無理するんじゃない」
    固い表情と声で言う。
    「……ごめんなさい……」
    消え入りそうな声でネジキにそう言われ、ダツラは一瞬答えに詰まる。威圧感を与えてしまったかと、できるだけ優しく頭を撫でて、
    「……あやまるこたあ、ねえよ……」
    きつく閉じた両目から涙があふれる。
    「……助けてくれて、ありがとな……」
    「……ぼくが、したくて、やったことですから…………」
    緩慢な動きでネジキが伸ばした指先が、涙を拭うようにそっと触れた。
    「だつらさんも……、ぼくのこと、たすけて、くれるでしょ?」
    「っ……、当たり前じゃねえか」
    頬に触れていたネジキの手を、両手で握りしめる。
    「ん……、わかってる……」
    力無く、かすかに笑みを浮かべる。
    「ちゃんと、たすけてくれるって、わかってたから……」
    「?」
    「だつらさんが、いてくれたの、わかったから、もうだいじょうぶだって……たすけてもらえるって……」
    道中で倒れた時の話らしい。自分の存在に絶対的な安心と信頼を感じてくれていた事に、改めて痛みに気付く事が出来なかったという後悔と、同じだけの愛しさがあふれる。
    「ネジキ……!」
    これ以上は声にならない。握る手に更に力がこもる。応えるように、弱々しく、それでも確かに、ネジキもダツラの手を握り返した。
    「……いいんです……、だつらさん、たすかって、ぼくも……」
    そこまでで言葉が途切れ、手から力が抜ける。
    それでもダツラはネジキの手を離さなかった。
    同時に今なら顔を見られる事はないと、ダツラはそれからしばらくの間泣き続けた。
    次に目覚めた時少しでも元気になってくれていたらいいと願い、同時にそれまでには涙が止まっていてくれないと少し困ると思いながら。
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