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メモキバオニ
未来設定なので、イメージ15~16才くらいのオニです。捏造ばっかり
前提として、ゲーム時間軸あたりに「二人でワイルドエリアにドラメシヤを捕まえに行った」というイベントが発生している謎時空です
この二人なら何でもオッケー!という人はどうぞ
「一回死んだのに、生き返ったんだって」

「近付くとのろわれるらしいよ」

「おれ、あいつにちょっかいかけて、帰り道ゴースに怪我させられたっていうやつ知ってる」

知らん振りしようと思えば思う程、彼らの言葉が頭の上に細かい砂のように降りかかってくるようだった。少しずつ降り積もっていくそれらのせいで、今やしっかりと前を向くことがむずかしい。
なんであの時、一緒に死んでしまえなかったのだろう、と考えて、ああまたやってしまったと思う。散々そういう風に考えるのはやめなさい、と先生に言われているのに、いつまで経ってもぼくは前に進めている気がしない。ぼくにとっては、ポケモンと一緒にいる時だけが息しやすい。ポケモンバトルも自分がここにいていいんだと思えるからいい。スクールでの陰口は時が経つにつれて少なくなったけれど、だからと言ってここは特別楽しくはなかった。みんな、興味を失ったら今度は無関心だ。必要以上に関わってくる子はほとんどいないか、いてもジムリーダーの仕事で遊ぶ時間も限られているので、すぐに離れていってしまう。自然、なにもない時間はジムの近く、街の遺跡などでポケモンたちと過ごすことが多くなった。
そんな日々とも、とりあえずは今日でお別れだ。帰り際、数人声をかけてくる子もいて(ファンだった、とか、応援してる、とか)、それに答えながら、自分が普通の子供だったら彼らと仲良くなれたのだろうか、とどこか他人事のように考えていた。外へ出ると、校門に見慣れた、いや、この風景では全く見慣れない長身が立っている。サングラスに口元が隠れるパーカー。彼は「変装だよ、変装」と言うが、学生たちが遠巻きに好奇の目を向けているのが目に入っていないのだろうか。いつも思うが全く隠せていないのだ。
昨日、電話越しにスクールまで行こうかなァなんて言っていたのを冗談だと思って聞いていたが、まさか本当に来るとは思わなかった。冗談だと思っても、ちゃんと来ないでって言ったはずなのに。

「お、お疲れさん。卒業おめ」

「もう、こっち」

「っと、なんだなんだ」

そろそろ人集りになりそうな雰囲気だったので、呑気な彼を引っ張ってその場から離れようと急ぐ。しばらく歩いて後ろを伺おうとすると、大人しく引きずられて、にへらと笑うキバナと目が合った。憎たらしい。

「来ないでって、言いましたよね……」

「いやぁ、やっぱりめでたい日じゃん。会いてーなー、て思って」

だからって学校まで来ることない、と反論すると、怒んなよ、と頭をくしゃと撫でてくる。振り払うように頭を振るが、最後に前髪をすいてから大きな手はゆっくり離れていった。

「卒業おめでとう」

「……ありがとう、ございます」

昔から何かと僕のことを気にかけてくれた彼から祝ってもらえるのは、純粋に嬉しい。彼だけじゃなくて、過去自分がもっと幼い頃にお世話になった人たちからも今後色々とお祝いがあると聞いて、くすぐったい気持ちが募る。

「今日はジム閉めてんだろ?」

「はい、僕は開けてもいいって言ったんですけど…」

「いいんだよスペシャルな日だ。そして、オレさまも今日はもうジムの受付閉めてきた」

「へ?」

「というわけで付き合ってもらう」

歩きながら言われた言葉に驚いて彼を見ると、「とりあえずオレとお前だけでお祝いな」といたずらっ子のように笑って言う。戸惑いが混じって何も言えずにいるのをネガティブに受け取ったのか、他に予定あるなら諦めるけど、と逃げ道を用意してくれるのは彼の気遣いだ。強引なようで、ちゃんと人のことを考えている。気付いたのは、出会ってからしばらくしてからだったけども。

「い、いえ、ないです……えーと、ありがたく、祝われます…?」

「よろしい。じゃあ、一旦帰って着替えだな」

制服デートもイイけどな、と軽口を叩くにやけた顔にまたくだらないこと言って、と呆れて溜め息を吐くと、「最近オレさまに冷たくない?」と眉をへにょりと下げる姿がしょんぼりしたポケモンみたいでおかしい。



こいつの家に入った回数は、片手で足りる。一人で住むには広すぎる間取り。出会った頃はそれが際立っていたが、程度が違えどそれは今も変わらない。遺されたあいつがここに住み続けると決めたのならば、何も口出しはしないと決めているが。
ちょっと待っててください、と私室へ引っ込む背中を見送って、リビングのソファに腰を下ろすと、すい、とドラパルトが寄ってきた。見たことある顔だな、と思っていると、後ろからドロンチが顔を出す。おや、と二匹(合計五匹)を見比べていると、後ろから「あの時のドラメシヤです」とバスルームに向かったオニオンが通りすがりに教えてくれる。

「おお、独り立ちしたのか」

ひゅい~と鳴くドロンチが頭の上のドラメシヤをあやしているのを見て、なんとなく時の流れを感じて感慨深くなってしまった。なんか今のジジくさいな、と自分で自分にツッコミを入れていると、今度は素早い動きでソファに乗り上がってきたヤミラミが、しきりにオレの上着をふんふんとかぎ始める。手であしらっても諦めないので、がっと脇に手を入れて赤ん坊に高い高いするみたいに持ち上げた。

「わりぃな、これはお前にはやれねーんだわ」

むずがっていたヤミラミが、オレの言うことを理解したのかしてないのか、ふいっと突然興味をなくしたようにオレの手から逃げ出して、部屋の奥へ姿を消した。

「……お待たせしました」

「おう」

もう大分暖かくなってきているというのに、現れたオニオンは結構着込んでいる。その理由はいくつか思い付くが、まぁこれから行く予定の場所はガラルでも特別寒い方なので丁度いい。どこからともなく現れたゲンガーをボールに促したオニオンと外に出るともう日が暮れ始めていた。

「よっし、今夜はもう食えねーってくらい食わせてやるからな!」

「う…お、お手柔らかに……」

思わずといった風にお腹を押さえて眉を寄せるオニオンに笑って、二人でタクシー乗り場に向かった。



夜の冷えた空気の中、キルクスタウン名物からのぼる湯気がふわふわと空へ吸い込まれていくのを眺めながら広場までゆっくり歩く。言われた通りに散々お肉やらなにやらを食べさせてもらい、楽しかったけれども少々お腹が重い。明日の朝ごはんはいらないかなぁなんて考えていると、広場のオブジェの近くで彼が足を止めた。

「随分前にここ来たとき、お前ゲンガーにアイス食われたよな」

「え…ぁ、ありましたね、そんなこと」

ワゴンで見たアイスが当時の自分には少し珍しくて、折角買ってもらったのに半分くらいを相棒に食べられてしまったのだ。いたずら好きのポケモンたちには慣れていたつもりだが、あの時は結構真面目にゲンガーを怒って、ぽかんという顔をされた記憶がある。
彼が足を止めたので自分もそれにならって立ち止まっていると、ばっと突然彼が振り返って真剣な顔で僕を見つめた。驚いて固まっていると、大きく深呼吸した彼は、外に出てからずっとしまっていた手をポケットから出して、僕の手をすくい上げる。少しは差が縮まったとは言え、何年経っても印象は変わらない。大きくて指が長い、時には過酷な天候をも操って荒々しいバトルを繰り広げているが、どこか品のある彼を表しているような手。

「これから先、お前はもっと色んなことを経験して、色んな人と出会うだろう。昔からお前は自分の足で立ってたし、オレ…たちが手助けしたことなんてあんまりねーけど、」

そう区切って、彼は徐に僕の手のひらの上へ何かを置く。

「変わらずオレは、お前を見守ってる。いや、余計な世話かもしんないから、見守ることを許してほしいっつーかなんつーか……あー」

カッコつかねーな、と頭をかく彼を見、そして自分の手のひらを見る。小粒のストーンが街灯の光を反射してキラキラ輝いているそれは、小さなアメジストが埋め込まれたブレスレットだった。

「これ…」

「ああ、卒業祝い……つーのは建前で、本当はただオレさまがあげたかっただけ」

少し太めの金属で、輪っかの留め具を外すと腕に嵌められる様になるようだ。理解が追いつかなくてただただそのブレスレットを見つめていると、上から「迷惑か?」と少しトーンが落ちた声が聞こえて、慌てて顔を上げる。

「迷惑なら、」

「ち、ちがいます!迷惑なんかじゃ」

ないです、という言葉は夜の空気に溶けていく。なんと返事をしたら良いか、いくら考えても言葉が纏まらない。その内に大きな手のひらは離れていって、自分の手のひらにはきらめくブレスレットだけが残っている。
とりあえず帰るか、と未だ思いを巡らしている僕を見かねて彼が明るく空気を変えようとしてくれるのを、申し訳なく感じながらもやはり言葉が出てこなくて、黙って頷き彼の背中を追った。



少し上がっていきませんか、と再びオニオンの家の前まで送り帰したところで控えめに声をかけられる。一応ブレスレットは突っ返されなかったが、実は先程から我ながら少し重すぎただろうかと心配していた。買う直前までストーンをジェイドにしようかと迷って、結局アメジストにしたという事実も、後から考えると独占欲丸出し。なんとなくこのまま話をしていたらボロが出そうな気がしたが、帰り際にこんな言葉をかけられたのは初めてで、まぁ少しくらいならと自分に言い聞かせて了承すると、ほっとしたようにどうぞ、と扉を開けているのでそれに従って中へ入る。
昼と同じようにソファに座り、紅茶を淹れると言うのでありがたく待っていると、ゲンガーやゴーストらもソファに集まってきて、一緒に何かを待っているようだ。
二人分の紅茶と、集まってきたポケモンたちのためのおやつを手にしたオニオンが戻ってきて、ちょっとしたパーティーみたいになってきた。いつもこうなのかと聞くと、少し甘やかしたらこうなっちゃいました、と恥ずかしそうに呟く。気持ちは分からないでもないので、楽しそうでいいな、と返し、珍しいにぎやかなゴーストポケモンたちを眺める。

「…で、何か話したいことでもあんの」

「は、はい」

つかの間夜のおやつパーティーを眺めてからオニオンに話を促すと、先程まで持っていたバッグの中からハンカチに包まれたブレスレットを取り出してきた。

「まずは、ちゃんとお礼が言えてなかったので、今日は色々とありがとうございました」

「ん、どういたしまして」

「それと……これ、一度受け取ってしまってから言うのも申し訳な」

「ちょっと待った」

え、という顔で固まるコイツに、やはり予感が当たったと内心焦ってきちんとオニオンに向き直る。

「あげたもの返されんの、ちょいキツいんだけど……」

「ぁ、あの、それは本当に申し訳ないと思っているのですが、でもこれは」

やっぱり受け取れません、とだんだん語尾を小さくしながらオニオンはブレスレットを差し出してくる。多少覚悟していたこととは言え、わりと本気でショックを受けている自分。なにせ今まで、誰かにあげたプレゼントを返された経験などない。

「……理由、聞かせてもらえるか」

そう言うと、すうっと表情を無くしたオニオンは、ブレスレットを握っていた手をゆっくり下ろして俯く。ああ、オレが今からコイツに喋らせようとしていることは、きっとコイツがずっと抱えてきて、他人に見せたくないようなものなんだろうなと察しながらも、今回だけは逃げ道を用意してやれない。やらない、と言う方が正しいかもしれないが。

「…父からもらった、という懐中時計があるんです」

ぽつりと漏らした声は小さくてとても聞き取りにくかった。しかし、いつの間にか騒いでいたポケモンたちはみな姿を消し、リビングは物音ひとつしなくなっていたので、自分の呼吸の音さえもオニオンの声を遮りそうで、知らず知らず吸う息も吐く息も短く浅くなっていた。

「ぼくは幼かったので、よく覚えていないのですが、ぼくが気に入って離さなかったので、そのまま、あげてしまうことにしたそうです。それで、その日もぼくは、その時計を持っていて、その時計は、今もその時の時間で止まったままです」

小さいながらもこいつが発する言葉一つ一つが、雪のようにこのリビングに降り積もっていく。その時、がいつを指すのか、その時間で止まったまま、ということが、こいつにとってどういう意味を持つのか、考えようとして胸の辺りがぐっと締め付けられる。

「ぼくが持っていたものだから、と荷物に入ったままになっていたそれを、捨てることも出来ずに、かと言って、直して使う気にもなれなくて…今もその懐中時計は、その時を指し続けているんです」

「…」

「見たくないのに、時々手に取って見ちゃう。辛くなるって分かってるのに、懐かしいような、そうでもないような」

「…わかった」

「え、」

オレは強く握り締めすぎて色を失っているオニオンの指に自分の手のひらを押し付け、言葉をさえぎった。虚ろな目をしたオニオンがゆるゆると顔を上げ、は、と息を吐いた。

「わかったよ」

そう言って、オレはオニオンの手のひらからブレスレットを取り上げる。

「ちょっと重かったよな、ブレスレットなんて」

「い、いえ、うれしかったんです、ほんとに」

「でも、お前の重荷になるようなら、ダメだな」

ぽん、と空いてる手をオニオンの頭に乗せると、昼間みたいに振り払われることはなく、少しくすぐったそうに首を竦める姿がどうしようもなく愛らしい。

「よし、これは俺が使う」

「えっ」

「それもダメ?」

「だ、ためじゃないけど…」

なんだか、ちょっと恥ずかしいです、と困った顔なんて見せるから、そのなめらかな頬に指をすべらせて、そのまま細いあごに指をかける。

「オレさまとお前しか知らないんだから、恥ずかしがることねーよ」

「そう、かな…」

「でも意識してくれんのはイイ」

「もう」

オレが茶化したと思ったのか、呆れてという感じでティーカップを手に取りキッチンに逃げる後ろ姿を見て、この距離感を他人が見たらどう思うのだろうかと考え口元が緩む。ここまで大事に、大事に見守ってきたのだ。スクールなどでの人付き合いが上手くいかないと零していたのをいいことに、この距離感を築いてきたのだ。外を向きそうになったら、優しく顔の向きをこちらに戻して、肩を引き寄せるのも触れるのも全部オレの日頃のキャラにかこつけて、優しく囲ってきた。生まれたばかりのポケモンにすり込むように。
逃げ道?そりゃ、少しくらい手を弛めないと、目敏いやつとかがいるし多少は用意してあげていた。だがオレはあの時、一緒のテントで夜を明かした時に決めたのだ。手を伸ばすからには、絶対に手に入れようと。我ながら本当に長い間耐えていると思う。

「…じゃ、そろそろ帰るな」

「あ、」

「お茶、ごちそーさま」

そう言ってさり気なくブレスレットを手首に嵌める。少し小さめだが、まぁそこまで気にならない。大きさジャストのものを買わなくてよかった。

「あ、あの、こちらこそ、今日はありがとうございました」

「おう。また今度、みんなでな」

「はい」

玄関まで見送りに来たオニオンが、俺の手首を気にしてちらりと下を向く。腕をあげて似合う?と聞けば、こくりと頷く小さな頭。そりゃそーだ、俺のお気に入りのブランドだから。

「ぼくがするより、キバナさんのほうがカッコイイです」

「うーん、オレさまはお前に似合うと思ったんだけどな」

一度くらい付けてみるか、と問えば、オニオンは申し訳なさそうに眉を下げて首を振る。それを見て、ああ本当に嫌なんだな。オレがあげたものを、オレにまつわるものを、オレが居なくなった後に見るのが、と思うと脳がしびれる。そっか、と引き下がって、それからいつもの別れ際のように、おでこに小さくキスを落とす。

「じゃあな、おやすみ」

「…はい、おやすみなさい」

ゆるく目を閉じていたオニオンが、その瞳に少しのさびしさを滲ませてオレを見上げた。それに笑って、手を離した。
歩き出して感じる肌寒さと、手首の重み。もうすぐだ。もうすぐ、あいつを丸ごと全部オレのものにしてやれる。なんと長い道程だっただろう。まぁ、その過程もなんだかんだで楽しかったからいいけども。
身に付ける系のものがNGというのは今回のことでハッキリした。本当なら全身コーデを考えて服とかも贈ってやりたかったけど、これだとちょっと難しそうだ。ならばもうますます、内側から刻み込んでやらないといけない。楽しみだなァ、スクール卒業したし、もういつでもいいか。
今度こそ堂々とニヤける顔を隠さずにタクシーのおっちゃんに声を掛ける。

「ナックルまでよろしく!」

「はいよ!」

手首のアメジストが街灯できらきら光っていた。こうなるとジェイドじゃなくてアメジストで大正解。そうそう、オレが生きている間あいつを手放すなんてことあるはずがないけど、あの懐中時計みたいにその後もあいつの中に居続けられるのいいよな。今から遺書でも書いとくか。このブレスレットも含め、今後あいつを思ってとっとくもんは全部、オレの死後はオニオンに譲る、って。あいつどうするかな、断るかな、捨てるかな。それとも、捨てられずに取っとくかな。あいつが先に死んだら、オレはあいつのもの、何か欲しいけどな。
そんなことを考えながら、真下の街の光で薄暗く輝くブレスレットを指先で撫でる。なんだかあいつの心臓を直接愛でているみたいで、背筋がぞくぞくした。7266 文字

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メモ暁の空/会話ばっかり小話/にわか廉麟に頼まれたように、大机に広げられた地略図に付けられた印と、その付近の目印となるような建物を眺めて、次に捜索する方向を思案していると、背後で扉が開く音がした。振り返ると、衣擦れの音とともに藍滌がゆっくりとこちらへ歩いてくる。

「あいつらは」

「休んでおる。嬌姫は大分ぐずついておったが」

「……そうか」

悪気があった訳では無いが、自国では長い年月で慣れさせた己の粗っぽい物言いで氾麟の気持ちを煽ってしまったのは流石に理解している。それでも、これだけの人数、しかも麒麟と王を動かしての捜索で事態が芳しくないとなると、焦燥からつい言動が素に近くなってしまう。その焦燥は自分のものだけでないと頭では分かっていながらも。

「万事上手くはいかぬと、予想はしていたが…」

「やはり、真に身を持って味わうのは、わけが違うの」

仮にも我ら王が、黙って図面を眺めて憂慮することしか出来ないという事実。藍滌はああ言って、確かにそれも一理あるが、その実こいつもいつものような勢いを失っているように思う。いつもは憎らしいほど鷹揚に構えてすました顔に憂いが滲む。

「…この方角には、大きく、銀鼠に光る建物が多くあったと申しておったな」

「ああ、夜は人気がないようだが」

「夜に光がないのであれば、ここ一帯は人家ではないのであろ。少し起点をずらしてみた方が良いかもしれないね」

二人で意見を述べながら地略図を改めていく。ここ最近、麒麟たちが蓬莱へ行っている間はこういったことやあるかないかほどの自国からの報せに目を通すくらいしかやれることがない。藍滌は、少しでもここ慶国の金波宮が(自分にとって)過ごしやすくなるようにあれこれと口出しをしては女史を困らせているようだが、それもこいつなりの気の休め方なのかもしれなかった。
考え込んで図面を見つめる真摯な横顔が見慣れず、なんとはなしに見ていると、こちらに気付いた藍滌が眉を寄せた。

「なんじゃ」

「いや…」

まさか憂いを帯びた貌が珍しくて、などと本音は言えずに濁す。するとつん、と顔を背け片手を顔に持ち上げようとして、はたと自分の手を見つめる藍滌に、ああ、と察して机の上に置いてあった扇子を差し出した。

「物を投げるなんて、お前だって少なからず気が揺らいでいたのだろう」

「…猿がものを深く考えずに口を開くからじゃ」

そう言って俺の差し出した扇子を受け取る藍滌が、小さく溜息を吐く。

「…お前も少し休んだらどうだ。気疲れというのもある」

「それはお互い様だろうよ」

今度こそ扇子を片手に持ち「あの娘に何か用意させようかね」と言いながら扉へ向かう藍滌を見送って、ふと立ち止まったあいつが扇子を口元に当てたままゆるりと振り返って俺を見る。その姿から何故か目が離せない。

「お主も来るかえ」

「あぁ…いや、俺はもう少し、」

そう言って図面に視線を下ろしてからもう一度藍滌を見ると、じとりとした視線が返された。それに首を傾げてなんだと問うと、「鈍い猿よの…」と溜息をつかれ、思わずはあ?と声が漏れた。

「皆まで言わせるか。無粋な」

「な、んだと…」

そうして気色ばんでいる間にも藍滌は扉を開けさっさと部屋を出ていってしまった。一体何なんだ、と思っている内に、は、とあいつの意図に気付いて一人呆ける。いや、これが自国や範でのやり取りならば少し気が利いたかもしれないが、まさか今ここで、という思いが強く、だがそう考えている内にも足は扉へ向かっていた。
毎回毎回なんでこうも勿体ぶった言い方しかできんのだ彼奴は、とごちながら、かすかに歩廊に残っている嗅ぎなれた衣香を辿る。向かう先で待っているであろう嫌味を紡ぐ口は早々に塞いでやろう。1557 文字

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メモ過去捏造朝、部屋に入ってきたら「おはよう、天外くん」と言う。

「おはよう、天外くん」

それから、「よく眠れた?」か「今日はいい天気だよ」が50%のかくりつ。

「今日はいい天気だよ」

だからぼくは、自動操作(オートマチックコントロール)みたいに「おはようございます」「外に行きたい」と言う。これはたっちゃんが最近学校で流行ってるげーむにあるしすてむだって教えてくれた。もう何年もつみかさなってきたほうそくに対してのぼくのはんのうにぴったりのことばだと思う。ある言葉をかけられたら、こう言う。ある質問をされたら、こう答える。ぼくは、彼らがどのような答えを求めているのか分かるようになった。それはきっと、ぼくが生きる世界がまだ小さいからだろうなとなんとなく分かるけど、ぼくはここと、自分のうち以外のことを知らないのでなんとも言えない。
あのかんごしさんは、おりがみをおるのがじょうずだから、なんでじょうずなのか聞いたら、それはいっしょうけんめい勉強したからだ、と言っていた。ぼくをみてくれる先生は、さいきんかみがたを変えたから、なんで変えたのか聞いたら、かのじょ、ができたんだって。
カーテンを開けてくれたかんごしさんがこちらを向いて笑う。「今日は何して遊ぼうか」「お友だちは来てくれるかな」

「今日は何して遊ぼうか」

「…外でおえかき」

「天外くんはお絵描きが大好きだね~」

「「少しさむくなってきたから、上着を忘れないようにしよう」」

かんごしさんが、ぼくの熱を測りながら目を丸くしてこちらを見る。

「…うん、そう、そうだよ」

かんごしさんはそう言って、熱を測ってから、朝ごはんまでもう少し待っててと部屋を出ていった。この世界は全部オートマチックコントロール。そしてぼくはたぶんみかんせい。みかんせいだからここにいる。どこがいけないの、と聞けば先生はお腹の中だって言うけど、ぼくはちがうんじゃないかと思ってる。きっと頭の中。なおさなきゃ。ぼくにはなにかが足りない。みんなにもなにかが足りない。ぼくはずっとみかんせいのまま。でも何がたりないのか分からない。だから、確かめるために中を開けてみる。

「天外くん!!」

すごい顔をしたかんごしさんがぼくの手をつかんでなにかさけんでる。段々とめのまえがぼやけていく。たいようのひかりはまぶたを通すとうす赤くみえるんだ。赤はだいすき。



いつか、真っ白の壁、カーテン、ベッド、服、体温計全部がいやだ、とあいつが言っていたから、次に会ったときに家にあったポスカ6色をあげた。うれしそうな顔をしてポスカを見つめる天外に、「ちゃんとかんごしさんに聞いてからかきなよ」と言えば、ポスカから目を離さずに「うん!」と答えるから、聞いてないな、自分が聞いておこう、と思ったのを覚えている。

「これ見たことない」

「ポスカっていう。水性だから、にじんじゃうけど」

「すいせい?」

「かいてあるだろ。水に、性」

「へー!」

早速ベッドに備え付けてある机に何かをかき始めようとしていたから止めて、スケッチブックを渡す。ざらざらした紙に天外が色を付ける(一体何をかいているのかおれには分からないから、色を付けているとしか言い様がない)のを少し眺めて、それから頭に巻いてある目新しい包帯に目を移す。頭に怪我でもしたのだろうか、その包帯どうしたんだ、と聞いたら、スケッチブックから顔を上げずに「かいぼう」と答えが返ってきた。

「かいぼう?」

「うん。ぼくの頭の中、なにが足りないんだろうっておもって」

さらりとそんなことを言う幼なじみになんと返せばいいか分からなくて見つめていると、天外は「やっぱりおえかきってたのしいね」と笑った。

「たっちゃんもオートマチックコントロールはいやだよね」

「は?」

「?ぼくたちって、オートマチックコントロールでしょ?」

「ちがう」

「そうだよ」

かんごしさんもせんせいもおかあさんもおとうさんもたっちゃんもみんなそう。こいつは何を言っているんだ。

「きっとみんな、なにかがたりないんだよ。でもなにが足りないんだろう、どうしたらオートマチックコントロールじゃなくなる?」

おれは天外の口を手でふさいだ。だけど、目をまん丸くしたあと、すうっと悲しそうな目をしたから、おれは手を離した。

「たっちゃんも、みんなと同じことする」

そう呟いて、天外は今度こそ備え付けの机に色を付け始めたけど、おれはそれを止めることが出来なかった。1876 文字

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メモ放課後ライヴの前にあったこと適当講義想像




「ことばには重さがない」

 故に、持ち運びが可能である。過去に起こったことを、あたかも今起こったことのように語ることができる。例えや仮定の話なども。フィクションとはこの流れの中で生まれた。言葉を使って相手と一旦距離を置くことによって、後々、あの言葉の意味はどういう意味だったのだろう、もしかしてこういう意味だったのか、と想像力が生まれる。だが、これは行き過ぎると不安を煽り、自らが作り出したフィクションに侵される可能性もある。
想像力とは、また欠損の意識からも生まれる。そして、欠損の意識から生まれた想像力は、恐怖を生み出す。完璧な生物などいないが、仮にいるとすると、おそらくその生物は想像力というものが著しく乏しいだろう。つまり、完璧であるが故、何も恐れる必要もなく、また、己以外の生物が完璧でないこと、完璧でない状況を想像することが出来ない。平易な言葉を用いるなら、理解や思いやり、同調というものだ。ちなみに、一般に言う精神病質、サイコパシーを持つ人間は、こういった想像力が不足している者が多いと言う。皮肉なことだが、理論上完璧とされる資質の一つとして想像力の無さが挙げられる可能性があるということは、社会に仇なすと言われる精神病質を持つ者ほどそれに近いということだ。

「おや、話が逸れてしまった」

ことばに話を戻そう。人間がことばを使うことによって、複雑な社会的関係を築けるようになったことは前回説明した。動物の場合、同種族間であっても、まず出会ったら受け入れられるか、受け入れられないかの二択である。好きでも嫌いでもない、どっちつかずの関係を保つことは、動物界においてごく稀だ。実は、ことばを得る前の人間も、おそらくそうであっただろうと言われている。だが、ことばを得たことによって、その“直観力”が段々と衰え、見聞き、感じたことよりも、ことばの方を先に信じてしまうようになった。これも、人間が自ら作り出したフィクションに溺れる原因の一つだろう。相手が嘘をついているのか本当のことを話しているのか、見極めるために重さのないことばを解体し、咀嚼し、解釈しようとする。しかし、人が、人を理解するために、ことばは必要なのか?そもそも、人が他人を真に理解することは可能なのか?ことばによって築かれ得た社会的関係は多様化したとしても、近年アライバー、バンデッド問わず、人と人同士の繋がりが希薄していく傾向にある。これは世間の核家族化、SNSの普及等原因と思われるものを挙げたらキリが無い。ここで、わたしは改めて"ことば"が我々に与える影響についてもっと…、

「深く考えていきたい。本日の授業はここまで、続きは…そうだ、先月から伝えている通り、来週は休講なので、再来週に」



「…教授、質問、いいでしょうか」

「あぁ、どうぞ」

「先程の話だと、人間にとってことばを得たことは、動物としては…退化、したような印象を受けました」

「うん、それで」

「しかし、現にことばによる恩恵というものは計り知れません。これは有史以前、先史時代と比べたら明らかですが…」

「…もちろん、文化的、社会的観点では間違いなく言葉の重要性は揺るがない。だが眩くん、これは動物行動学の授業だということを忘れないでくれ」

「あぁ、」

「再来週にその辺りの説明もするが、最終的には、ことばに対して云々、ではなく、ことばを使う側、つまり我々人間側の問題だ。我々人間が、ことばをどう扱うか、扱うべきなのか、それを考えていくことになる」

「…なるほど、理解しました」

「よろしい。では、また後で」

「はい…あ、そうだ教授、やはり来週は俺も行きます。今後の参考にでもなれば」

「ああ…楽しみだな」1555 文字

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メモトラトラ未履修の内にパート2捏造しかないです



少しの休憩のつもりだった。昼食を取るための時間、食事をしてから、少しだけ静かに横になろうと思ったのだ。その為に、隆景らには自分の居場所だけ伝えて、空き部屋の簡易ソファで目を閉じる。確かに疲労は感じているのに、いつものように入眠までが途方もなく遠い。嫌でも慣れたその道程を、今日もまたゆっくりと歩き始める。辿り着けることの方が少ないのだが。眠るために歩くとは、と我ながら詩人にでもなったような気分だった。
おそらく目を閉じてからそんなに時間は経っていないだろう。意識が浅いところを彷徨いながら、なにかが動く気配に目を開ける。最初に目に入るのは閉じた時と同じ無機質な天井、次いで視線を横にすると、ひょこひょこと動く色素の薄い頭が見えた。頭、頭?と驚いて上体を起こすと、その頭の持ち主が顔を上げる。

「おっはよぉございまーす!」

「お、おはようございます…」

不思議な色合いの瞳を見開いて挨拶をされ、思わず反射で返してしまってから、状況を整理しようと部屋を見回した。彼がいること以外に変わったところは、と思いながら視線を巡らせて、最後にソファの肘掛けにかけていた自身のコートを見て、呆然とした。

「こ、これは…」

「お絵描きだよ~!」

見事にお絵描きされていた。自分の白いコートが。色とりどりの、なんだろうか、絵具ではなさそうだが、どう考えても洗濯で落ちるようなものでもなさそうだ。本当に見事なアートと化したコート、それもそのはずで、なんと言ったって希代のアーティストが自ら描いたのである。これが自分のコートでなく、キャンバスに描かれたものだったなら、手放しで賞賛したことだろう。

「……」

言葉を無くして今も描き続けられるコートを見つめて、横になる前とはまた違う意味で途方に暮れていると、ノックの音が聞こえた。「コウ様、そろそろお時間です」という隆景の声に、咄嗟にまずい、と思って待ってくれと声をかけようとしたが、その前に開いてしまった(おそらく俺が眠っていると思ったのだろう)扉、そして律儀に時間を気にしてくれた隆景が部屋に入ってくる。

「……」

「……」

「あっ、たっちゃん!やっほー!」

ああ、出会ってしまったと思いながら額を抑え、馴染みの大音声が響くのを待つが、予想とは違い、部屋の中には比作さんが口ずさむ鼻歌が漂うだけだった。おや、と隆景を伺うと、眉間の皺をいくらか深くした隆景が、大きな溜め息を吐いて「申し訳御座いません」と言う。

「今すぐ新しいコートを手配いたします」

「あ、あぁ…」

「どうしたんだよこんなとこで、って、うわぁ、これはまた…」

派手にやったなァ天の兄貴、と隆景の後ろから信乃が半笑いで顔を覗かせる。

「わざわざ頭領の上着になぁ…」

「だぁって、真っ白白~だと、寂しいよ?」

「うぅん、そう、か…?」

比作さんの隣に座った信乃が、どうやらもう描き足りたらしい俺のコートを、みんなに見えるように目の前に広げた。広げると、それはさらに見事な色の組み合わせで、もう笑うしかないという感じである。俺は、今後このコートを着こなせるだろうか。一瞬真剣に悩んでしまった。

「…コウ様、本日の会議が終わるまでにはご用意が出来そうです、それまでは俺のジャケットを、」

「着ないの?」

いつの間にか立ち上がって俺の隣にいた比作さんが、真っ直ぐにこちらを見つめて問うた。

「え、」

「真っ白白だと、きっと眠れないから、お絵描きしたんだよ」

「…」

その瞳の虹彩は、なんとも言葉では表現の出来ないものだ。吸い込まれそうな、何もかもを見透かすような。こんなに間近で彼の目を見ることは今まで無かったので、思わずその色合いに見入ってしまった。自分だって人目を引く瞳をしているのに、不躾にも他人の顔をまじまじと見つめてしまい、はっと我に返ってコートに視線を移す。

「天外、」

「…」

「…頭領!」

隆景と比作さんの間に妙な空気が流れるのを遮るように、信乃が俺に「一回着てみてくれよ」と笑いかけてきた。

「おれは、それ着てる頭領、見てみたい」

「…」

「…うん、そうだな」

「コウ様、」

戸惑う隆景に笑ってみせて、まだほのかに画材独特の匂いがするコートを羽織る。この部屋には鏡がないから、自分の全体像がどうなっているか見ることが出来ないので、前の三人を伺う。
その表情は三者三様ではあるが、信乃が真っ先に「いけてるぜ頭領~!」とにこにこしながら俺の後ろに回ったり裾を広げたりしているので、それほどまでに浮いているということはないらしい。

「ありがとう、信乃」

「うん、正直ちょーっと心配してたが、これはありだぜ」

「はは、よかった」

先程から黙ったままの隆景にもどうだろうかと問うと、「よく、お似合いです」と複雑な表情のまま、静かな声で答える。

「あと数時間で今日の会議は終わる。その後の懇親会までに、新しいコートが手に入れば大丈夫だ」

流石にこれで街中を歩くのは勇気が要る、と言うと、「承知しました」と頭を下げる。

「おれはそのままでもいいと思うけどな」

「そうか…?」

「…コウ様、そろそろ」

「ああ、そうだった」

扉まで促す隆景について部屋を出ようとして、ふと思い出して後ろを振り返る。

「…二人とも、先に行っていてくれ、すぐに追いかける」

「…はい」

「りょーかい!」

二人が出ていった部屋の中、宙を見つめたまま動かない比作さんに「これは俺が頂いてもいいのですか」と聞くと、きょとんとした顔をされる。

「貴方の作品なのでは、」

「ちがうよ、それはきみのためのもの」

にっこり笑ってそう言う彼に、俺はもう一度コートを見下ろして、そして急になんだかおかしく思えて笑ってしまう。

「そうですか、では、ありがとうございました」

「んーん!どういたしまして!」

今度こそドアノブに手をかけると、「たっちゃんをよろしくお願いします」とおだやかな声が背後から聞こえて、驚いて振り返る。ゆるりと微笑む彼が、なんだかこの世の者とは思えないほど淡く目に映る。思わず、見てはいけないものを見てしまったような気になって目を逸らそうとして、踏みとどまる。

「…俺の方が、世話になっています」

「…」

「ですが、ヘッドとして、努力は惜しみません」

そう、彼の顔を見て言い切ると、比作さんは徐に近付いてきて、ぽんぽんと俺の頭を軽く叩いて部屋を出ていってしまった。突然のことで声も出なかった俺は、今しがた叩かれた頭に手をやり、その感触を思い返す。不意に泣きたくなるような懐かしさが身体を襲って、少しだけ胸が苦しくなった。2786 文字

pi8pi

メモドロップ前後に考えてた小話治療のあと
「天の兄貴、スマホ鳴ってるぜ」
「おお?ピポピポもっしも~し?」
『お前…今どこにいる…』
「えーっとぉ…オンドゥー、ここどこ?」
「〇〇駅の近く、だな」
「ニアザ〇〇ステーションであります!」
『ん…オンドゥー…?まさか信乃と一緒なのか?』
「ピンポンピンポーン!」
『何故…いや、それはこの際置いておこう…それよりも仕事が終わったら連絡しろと言っただろうが!』
「ありゃ、わすれてた~ごめごめりんご!」
『全く世話の焼ける…信乃にかわれ』
「ほいほーい。はい!」
『隆景だ。悪いがソイツがそこから動かないよう見張っておいてくれ』
「お、おお、いいけど、ここまで来たら家が近いし、とりあえず連れてっていいか?」
『まさか!!コウ様の勤務外時間にご迷惑をおかけするには…』
「別に家で待つぐらい、と、天の兄貴!俺から離れるなって」
「ん?うい!」
「手繋いでような、そう、大丈夫だと思うぜ」
『…クッ…致し方なし…くれぐれもコウ様のお邪魔にはならないよう…』
「分かった分かった!じゃあ、待ってるな~」
『ああ、頼む』
(へぇ~隆の兄貴と天の兄貴って、仲がいいのか…)
「デュクシ!デュクシ!どしたの?」
「いや、なんでもねーぜ。さぁいこ、こっちだ」
「アイアイサー!」

雷我と利狂(雷我ドロップ聞く前で、公式より低クオリティの会話)

「アンタ…カケルさんの代わりのつもりか?カケルさんの代わりに俺の面倒見てやろうって、そういう心積りなのか?何年も、何年もカケルさんのこと、教えなかった癖に…今更なんなんだよ」
「…」
「ふざけんじゃねェ!俺はもうお守りが必要なガキじゃねぇんだ、ほっといてくれ」
「…」
「…ハッ、まただんまり。いつもいつも、アンタといると、吠えてる俺が阿呆に思えてくる」
「…そんなつもりは、」
「うるせえ!もう俺にいちいち構うのは止めろ。…迷惑だ」

生物における利他的行動
→血縁でない個体レベルでの利他的行動には、必ず見返りがある(守る代わりに血を貰うなどの互助関係)
→この場合雷我にカケルの意志を継がせることが自己犠牲の見返り
→血縁説だとしても、カケルの意志=遺伝子と考えれば説明できる
→だけど、普通に罪悪感&庇護欲もあったらいいなって話


2

「人は、言葉によって、他人とどっちつかずの距離感を保って様々な社会的な関係を築くことが出来る。動物の世界は、ある程度の学習能力を持つ種でさえ、基本的には受け入れられるか、拒否されるかの二択だ。あるいは、食うか、食われるか」
「…」
「自身の状況を正確に伝えることのできる言葉があるお陰で、人間は『これは今は言わなくてもいい』『落ち着いたら話そう』『話せば分かる』というように、物事や争いを保留の状態で置いておくことが出来る」
「…だから?」
「しかしそれは、裏を返せば、それらは伝えられなければ全く意味が無い。外的要因によって、言葉、つまりは感情を伝える手段が封じられてしまった人間の、なんと脆いものか。その苦悩、苦痛はいかほどのものか」
「…ふん、それが、あんたがここにいる理由ってことかよ」
「…ま、ざっくりと言ってしまえば、そんなところだ。もちろん、それだけではないがね」
「…はァ。もういいか」
「ああ、つまらない話に付き合わせてしまってすまなかった。ではまた、」
「…」

(カケルさんと同じ顔、同じ声、同じ髪、同じ指、同じ、)
(同じじゃねェ、同じじゃねェ、同じじゃねェだろ…)1445 文字