水父短編集【あついあつい】
真夏の蝉すら鳴かぬ程の高温の中でお主は暑い暑いと言う。
どちらの汗か体液か
しっとりした布団に動かぬまま、ただただお主は暑い暑いを繰り返す。
「暑いな…」
「では離れるか…?」
「離れたら寒いだろ」
暑いと行ったり寒いと行ったり矛盾している男。
今もまだ繋がったまま湿った肌を合わせたままひたすらに暑いと言う。
「暑いな…」
お主以上にワシは熱さで溶けてしまう。
【串刺しを望む】
「ワシは串刺しにされたい」
お前が突然言い出すから俺はなんとも言えない顔をするしかない。
人には色んな癖があると言うがそれは人であれば無理難題だろうなと思う。
コイツが人外だとしても「そうか」とやってやるわけにはいない。
それなのにお前はケケケと嬉しそうに繰り返す。
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