雪降る街のフェアリーテイル 物語の始まりはいつだって雪の降る朝だった。
この街は春を知らない。そのせいでこの街で手に入る書物の大抵の舞台は雪が降っている。ページをめくる手を止めて青葉つむぎはひっそりと息をついた。図書館は静謐だが、憂鬱さを隠すにはあまりにも明け透けだ。
今日も変わらず、既に起床したときからハルツの街に雪は降っていた。
けれどこの時期には珍しく控えめにしんしんと降り積もっているから、どこか調子外れな朝だった。
街に一つある大きな図書館へ来る頃には雪は普段通りの顔をしてごうごうと降り積む。返却期限を少し過ぎてしまった本たちは故郷に戻れると嬉しそうにしている気がして、自然保護官の激務で本を借りるのは少し控えるかと思ってしまうぐらいだ。
7078