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    グレムル前提のヒスムル(仮)27話
    前提のグレムルパート再び

    グレムル前提のヒスムル(仮)27ロージャに言われた通り3日だけ休暇を取った後、ヒースクリフとムルソーは再び工房に出勤した。

    実はヒースクリフはかなり気まずかった。

    ヒースクリフが所属しているのは設計部署で、グレゴール(ついでにマルセルも)と同じ部署だったのだ。

    休んでいる間にムルソーとしていた事を思うと気が重かった。

    「……俺……おっさんとどんな顔して会えば良いんだろ……」

    試しにムルソーに聞いてみると、ムルソーは何とも言えない顔でこちらを見た。

    「……あまり匂わせない方が良いだろうな。」
    「でもおっさんは多分……大体予想付いてるだろ?むしろその為に俺も休ませた感じするし……」
    「……そうだな。」

    ムルソーは歩きながら少し考えた後、前を向いたまま言った。

    「……今のように申し訳無さそうにしていれば良いのではないだろうか。」
    「……まあ、そうかもしんないな……」

    寛容なグレゴールの事だ。
    気にするなと言って笑って済ませてくれるだろう。

    「ただ……念の為、あまり喋り過ぎないように。」
    「分かってるよ。て言うかあんた、随分……おっさんに気使ってるな?」
    「……珍しいか?」
    「うん。」

    グレゴールとよく小さな事で喧嘩していたのを思い出すと、何だか新鮮に思えた。

    「……」
    「……?」

    ムルソーは何かを考え込んでいるようで、何も言わずに再び歩き始めた。


    出勤ボタンを押して上へ上がると、グレゴールとマルセルの姿が見えた。

    「……ぁー……おはよ……」
    「おはよー、ゆっくり休めた?」
    「ま、まあ……」

    マルセルから目を逸らしてチラリとグレゴールを見ると、こちらをじっと見詰めるグレゴールと目が合った。

    グレゴールは無表情のまま視線を元の場所に戻した。

    「……」

    勘付かれたのだろうか、それともあれが普通の動作だったのだろうか。

    珍しくもないグレゴールの後ろ姿が何となく話しかけ難いオーラを放っているような気がする。

    マルセルは気まずそうなヒースクリフに気付いてか気付かぬか、グレゴールとの話を再開した。

    (……俺も……いつも通りにしてりゃあ良い筈だ……)

    そう思って輪の中に入ると、ある程度会話の区切りが付いた頃にグレゴールが目線だけを上げてヒースクリフを見て来た。

    「……所で……どうだったんだ?休みは。」
    「ど、どうだったって、何が。」
    「気分転換は出来たか?」
    「……ま、まあ……」

    なんだか責められているような感覚に陥って頭を掻いていると、グレゴールがこんな事を聞いて来た。

    「……あいつ、どっか出掛けようとか言わなかったか?」
    「……出掛けたけど……」
    「やっぱりな。あいつ、休みの日でも動かないと落ち着かないらしくて……決まってどっか出掛けようとするんだよ。」

    目線を設計書に下ろしたグレゴールの口元に漸く笑みが見えてヒースクリフは緊張が解れるのを感じた。

    「実は……映画観に行ってさ……」
    「お、タイトル当ててやろうか?エクス・マキナだろ?」
    「すげえ、よく分かったな。」
    「あいつ、あの映画観ると毎回寝るくせに好きらしいんだよなぁ……」
    「あ、好きなんだ……つーかあれ何回もやってんのか?」
    「そうそう。人工知能の倫理改正案ってのがあってな……アレに出て来るようなアンドロイドは良くないってイメージを植え付ける為だろうな。」
    「へえ〜……」

    こんな二人の会話の様子を、マルセルはじっと見つめていた。

    「あ、そう言えばあのアンドロイドさ……」

    グレゴールが不意にヒースクリフに顔を寄せて囁いて来た。

    「ムルソーに似てるような気しなかったか?」
    「……正直……まあ、うん……」
    「だよな?前それ言ってみたら『貴方がそう感じるのならそうなんだろうな』って返されたんだよな。」
    「……否定はしないんだな……」
    「一応自覚はあるんだろうよ。自分が他人からしたら得体の知れない存在って言う自覚は。」
    「へ〜……」

    マルセルが感嘆の声を漏らすと、グレゴールとヒースクリフがマルセルに振り向いた。

    「……聞いてたのか……?」
    「え?うん。でも混ざってる訳じゃないから好きに話してて良いよ。」
    「ああ、こいつは俺達の関係知ってるから大丈夫だよ。何なら俺が話したから。」
    「……よく話したな……」
    「まあ、こいつの察しが良かったからバレた形で話すようになったんだけどな。」
    「おじさんが分かりやすいだけですよ〜。」

    ヒースクリフはそう言ってグレゴールと共に笑うマルセルが少し怖くなった。

    (バレるかも……)

    仮にバレたとしてマルセルがグレゴールに話すかどうかは分からないが、逆にマルセルにバレる程ならグレゴールにもバレる可能性がある。

    (気を付けよう……いや、変に気張らずに自然体を装っておかないと……)

    一人で考え事をしているヒースクリフをグレゴールは横目に見ていた。



    「おじさん、なんか今日ピリピリしてません?」
    「え?」

    午後の煙草休憩中、マルセルがそんな事を言って来た。

    「ずっとヒースクリフ君見てましたよね?」
    「……ぁ〜……そうかぁ……?」
    「そうですよ〜、多分ヒースクリフ君は気付いてませんでしたけど。」
    「……」
    「何か気になる事あるんですよね?」
    「……まあ……な……」

    気になって仕方が無い事があった。
    それで胸がざわつくぐらいには。

    「もーー、気掛かりになるんならなんでムルソーさんと一緒に休ませたんですか〜。」
    「く……っ、俺だって言った後に後悔したけど遅かったんだよ……」
    「あれ、私もしかして退路絶っちゃいました?」
    「……いいよ……あれはヒースも休ませるべきだったんだし……はぁ……ちゃんと休んでるならともかく。」

    休養と言う名目とは言え、3日も二人きりだったんだ。
    もしかしたら……

    「背中押した上で嫉妬するくらいなら最初から譲らなきゃ良いのに……おじさんは人に甘いのに女々しいんだから。」
    「ぐぬ……はぁ……」

    分かっていた。

    大人らしく譲るか、女々しく絶対に譲らないかの二つしか無いと。

    だが、ヒースクリフの今までの様子を見て来たからこそ……自分の嫉妬をぶつけたくないと思っていた。

    「まあ、適度に発散した方が良いと思いますよ。つっても言うだけなら簡単な話ですけど……」
    「そうだなぁ……それは思うんだけど……」

    根本を解決しないまま誤魔化そうとしても結局は爆発する事を俺は知っていた。

    「……あ、そろそろ戻んなきゃですね。」
    「そうだな……」

    二人で煙草を灰皿スタンドに入れて、下へ降りて行った。

    降りる途中、気になって事務室を階段から覗くと、ムルソーのいつも通りの後ろ姿が見えた。

    それを見て階段を降りようとすると、不意にムルソーがこちらを振り向いた。

    「……っ、」

    目が合う前にさっさと階段を降りた。



    殆どのフィクサーが退勤したであろう時間、俺は誰も居ない喫煙室でたった一人、煙草を吸っていた。

    煙を吐き掛けた際に曇った窓ガラスに何の気無しに小指でニコちゃんマークを描いてはまた吹き消して猫やら何やらを描いて無意味な時間を過ごしていた。

    結局、休みの間に一線を超えたのかどうかは聞けず終いだった。

    (……やっぱセックスしたのかな……)

    恐らくそうなのだろうとは思う。

    「……フーー……」

    正直、俺は後悔していた。

    自分も休んで脇から見守っていれば良かっただろうか、と。

    勿論、そんな事をしても何にもならない事は分かっている。

    だが……もう少しだけ、俺との関係を長引かせられるのなら……

    「……ハァ……またしょうもない事考えちまってるな……」

    小指で薬指を擦り、ムルソーがくれた指輪を弄る。

    『私なりに、想いがあっての物だと……思ってほしい。』

    そう言ってくれたのだから、信じないと。

    だが……どうしても、疑いたくなってしまった。

    いつまで、三人の関係で居られるのか。

    それを気にしてしまった。

    ヒースクリフとの関係はどんどん進展して行くのに対して、俺との関係は殆ど変わりの無い物だったから。

    でも……これ以上、どう関係を発展させたいのか、自分でも分からなかった。

    やる事はやるし、別に他人同士ってレベルの心の距離がある訳でもない。

    ……もう少し、俺を見てくれるようになれば俺は満足するのか?

    そんな事を考えていた時だった。

    背後から突然、両腕を伸ばされたかと思うと誰かに抱き締められた。

    「ぅおっ⁉︎誰だ⁉︎」
    「私だ。」
    「ムルソー?」

    やたらと強く抱き締めてくるムルソーの腕に手を添えて、ムルソーの顔を見上げた。
    相変わらずの無表情だが、どことなく幼く見えた。

    「どうしたんだよ、急に?」
    「今日は一緒に帰ろうと思ったから。」
    「いや、いきなり抱き付いて来た事の説明が付いてないんだけど?」
    「久しぶりにセックスをしようと思って。」
    「………あっそ……」

    平気で性欲を丸出しに出来るこいつの根性には毎度呆れさせられる。

    「……」

    でも今日は、そんな気になれなかった。

    「……気が乗らないのか?」
    「え?」
    「機嫌が悪そうな顔をしている。」
    「……な……っはは……そんな訳無いだろ。嬉しいよ。」

    別に嫌な訳ではない。

    だが……段々と不安が募って来た。

    これからするとして……俺は優しく出来るだろうか……?

    「……ぁ……それより、さ。」
    「何だ?」
    「ヒースとは……もう、済ませたのか?初夜。」
    「……ああ。」
    「はは……やっぱそうかぁ。うん、そうだよな。」
    「……」

    ムルソーがじっと俺を見つめて来る気配がした。
    今日程伸ばしっぱなしの前髪に助けられた事は無いと思う。

    「……その……ヒースは……優しかったか?」

    どうして、自分から答えを聞きたくない事を聞いてしまうのだろう。
    本当はそんな事、知りたくなかったのに。

    「……ぎこちなさはあったな。」
    「……そっか。」

    言葉を濁しているような気がした。
    ……そのぐらいのデリカシーはあるか。

    「……それが……気になったのか?」
    「……はは、まあ……な……」

    煙草のフィルターを弄りながら、どうにか誤魔化そうとした。

    何故か、焦燥感が胸に満ちていた。

    「……グレゴール?」
    「何だ?」
    「……何を、考えているんだ?」
    「……」

    何を?

    そんなの、俺にも分からなかった。

    「……不安なのか?」

    そう……かもしれない。
    でも……それよりも、醜いような気がする。

    俺……俺は……

    「……大丈夫だよ……」

    不意に。

    ヒースクリフが、ムルソーを殴ったあの日の事を思い出した。

    いつだって、ムルソーが最後に頼るのは、俺だった。
    だから、俺は……

    俺が、こうなったら、終わりなのに。

    「……グレゴール、」
    「なあ、ムルソー……」

    考えに、考えて……問い掛けた。

    「俺か、ヒースが居なくなった時……どっちの方が、悲しい……?」

    消えたかった。
    ただ、消えたかった。

    全部ぶち壊す前に……
    こんな事を聞いて、消えても良い理由を作ろうとした。

    「……」
    「……なあ、どっちなんだよ……お前の中では、どっちの方が……」

    最後まで言う前に、凄まじい嗚咽が込み上げて来た。

    息が苦しくなって、死ぬかと思った。

    「……順位を付けてほしいのなら……私には、出来ない。」
    「……っ、はあ……?」
    「……どちらも、変わらないから。」
    「そんな訳、ねえだろ……?だって、お前……泣いてたじゃねえかよ……!ヒースが、お前の事殴った時……!」

    『……私は貴方が死んでも気に留めない。だから貴方も、私が死んでも何とも思わないでほしい。』

    俺にはそんな事、言ったくせに。

    「………」
    「……ハァ……ほんっと……くだらねぇ……」

    俺が、俺自身が……下らない。

    煙草を握り潰して、灰皿に入れて喫煙室を出ようとした時だった。

    「……グレゴール。」
    「……何だよ……?」
    「……昔、貴方は私の一部分を好きだと言ってくれたな。」
    「……?」
    「……貴方は、私のどこが好きになってくれたんだったか。」

    確かに昔、そんな感じの事を言った気がする。

    「……忘れてしまったんだ。どこだったんだ?グレゴール。」
    「……」

    確か……

    「……いつも、ちゃんと真面目に応えてくれる所……」

    時々嫌な顔もするけど、頼んだらちゃんとやってくれる所だった筈だ。

    「……そうだったのか。」
    「……何だよ、今更そんな話して……」
    「……貴方は、いつも我慢していたな。」
    「いや……ほんとに、何だよ……」

    そう言ってムルソーを見た時だった。

    ムルソーが、俺の左手を掴んで引っ張ったかと思うと……自分の胸に押し当てた。

    「……いきなり何してんだよ、お前……」
    「……私が必要としている時は、側に居てくれて……ある時は自分の出る幕じゃないと判断して、踏み込んで来ない時もあった。」
    「……」
    「私はそんな貴方に……甘えていた。」

    左手が、頬に移動させられた。

    「……都合の良い時だけ、貴方を利用した。」
    「……」
    「……いつか苦しくなる事を恐れて、突き放す事もした。」
    「……」
    「私は……そうやって貴方を苦しめただけだった。」

    ムルソーは目を閉じたまま、左手に頬擦りをした。

    「貴方はずっと、私達を第一に考えていたのに。」
    「……俺は……そんなんじゃ……」
    「分かっている。全てが貴方の本当の意思ではなかった事も。」
    「……」
    「……私が押し付けた役割に、苦しんでいたんだな?」

    ムルソーはやけにまっすぐと俺を見つめて来た。

    「……グレゴール。私は……もう貴方に我慢をさせないようにしたい。……いや……貴方の醜い部分を、見たい……」

    緑色の瞳の奥に、ドロリとした物が見えた。

    「……私に、見せてくれないか。グレゴール。私だけに……」

    思えば俺は……今まで、ムルソーの汚い部分を見た事が無かった気がする。

    なんだかんだで、隠されて来たような気がする。

    それが、今……曝け出されている。

    「……ははっ……」

    俺も、ムルソーの前でだけは、曝け出しても良いんだと思ったら……何だか全てがどうでも良い事だったような気がした。

    「……お前も……俺に全部見せてくれるんだよな?」

    ヒースに見せてない物も、全部。

    「……勿論、そのつもりだ。」

    ムルソーがそう答えた瞬間に唇を奪って……体を壁に押し付けて、服に手を掛けた。

    「ムルソー……」

    ムルソーの左手を握って、指輪を擦り合わせる。

    「お前の旦那って席だけは絶対誰にも譲らないでくれよ……?」
    「……それを望むのなら、早く自分の工房を開いて婚姻を結ばなければならないな、グレゴール。」
    「まーたそんな事言って煽りやがって……」

    軽く笑ってからムルソーの左手を握り締めた。

    「見てろよ。いつか必ず本物の婚約指輪付けさせてやるからな。」
    「……楽しみにしている。」

    薄く笑みを浮かべるその唇に食い付いて、体に手を伸ばした。



    「……はーー……」

    ムルソーと二人で帰って来たは良いが、何だかベッドでは寝づらくてソファで寝る事になった。

    だってベッドにはヒースクリフが寝ていて。
    その横でムルソーと隣り合って寝るのは流石に冷静になった頭が許さなかった。

    「……仕事場でしたのがそんなに恥ずかしかったのか?」
    「……なんか……不貞行為したなって思ってよ……」
    「……ふっ……」
    「くそぉ……さっきはめちゃくちゃ興奮したのに今はすげーー嫌な気分……」

    天井を仰いで目を手で覆う。

    「だが、興奮は増しただろう?」
    「……そりゃぁな……」
    「……なら……今はどうだ?」

    ムルソーがそんな事を言いながら平気で俺の股間を触って来た。

    「…………お前、イカれたか?」

    ついそんな事を口走ってしまった。

    「初めにイカれた場所で私を襲ったのは誰だ?」
    「くっ……お前も乗り気だったくせに……」
    「少しぐらい罪を重ねた所で大して変わりは無い筈だ。そうだろう、グレゴール?」
    「……」

    ニィッと目を細めるムルソーから目を離せなかった。

    (……エロ……)

    本当に、その言葉しか出て来なかった。

    「さあ……どうしてほしい?」

    もどかしく股間を撫でられて、ごくりと唾を飲み込んで、要求を口にしようとした時だった。

    「……ムルソー……?」
    「ッ……!」

    ムルソーが目を見開いてサッと手を引っ込めた。

    「……ヒース……クリフ……」

    ムルソーの背後には、ヒースクリフがドン引きした顔で立っていた。
    ……一番慄いているのは俺だった。

    「あ、あんた……おっさんに何してんだよ……」
    「こ、これは……その、すまない……ヒースクリフ……」
    「やっぱあんた、俺が寝てる間におっさんとやるつもりだったんだな⁉︎」
    「っ、違う……!今はただフェ……」
    「ホテル行け!!」

    ヒースクリフは凄い剣幕でそう叫んでからドタドタと足音を立てて寝室に入ると凄い音を立ててドアを閉めた。

    「っ……ヒースクリフ……」

    ムルソーが部屋に近付くと。

    「入って来んな!!ケダモン!!」
    「…………、」

    ムルソーがこの世の終わりかのような顔をして静止していた。

    「………俺……悪くないよな……?」

    返事は返って来なかった。
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