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    グレムル前提のヒスムル(仮)28話
    もう30話近いのか……随分長くなってしまったなぁ……いつもの事ではあるけど

    グレムル前提のヒスムル(仮) 28話朝起きると、寝室の扉は開いており、ヒースクリフはもう家を出た後のようだった。

    「……」

    浮かない気分のままムルソーと一緒に家を出て、出勤した。

    「あ、おはようございまーす。」

    こちらに背を向けたまま椅子に体育座りをしているヒースクリフと、その傍らに立っているマルセルが居た。

    「……ヒースクリフ……」

    ムルソーはヒースクリフに近付こうとしたが……

    「……寄るな。節操無し。」
    「…………、」

    ヒースクリフの冷たい言葉に再びダメージを負って上へ上がる事になった。

    「……その……ヒース……」
    「……何だよ。」

    あ、俺は会話許されてるんだな、と思いながらもグレゴールは諭すように言葉を掛けた。

    「あいつも反省してるから、さ……許してやってくれないか?これ以上冷たくされるとあいつも流石に泣いちまうからさ……」
    「……そうなったら……」

    前髪の隙間から鋭い紫色の瞳が覗いた。

    「あんたに慰めてもらうんだろうな。あの人は。」
    「………」
    「もういいよ。邪魔なんだろ、俺の事……暫くここで寝泊まりするからその間イチャついてろよ。」

    最後の言葉の幼さにひっそりと笑いながらグレゴールは仕事に取り掛かった。

    一方その頃ムルソーは。

    「………」

    いつも通りにデスクに向かっている筈なのに、その全身から醸し出す重い雰囲気で事務室を満たしていたのだった。



    午後20時。
    殆どのフィクサーが退勤している時間になったが、ヒースクリフはまだ自分の席に座っていた。

    家に帰った所でムルソーとグレゴールはまだ仕事をしている筈なので、二人に会う心配は無い事は分かっていた。

    だが、帰る気にはなれなかった。

    このままで居るべきではない事が、分かっていたから。

    今のヒースクリフはあの頃とは違い、冷静だった。
    どう謝るべきかも分かっていた。

    ……例え、自分の本心に背く謝り方であってもそうするべきだと。

    「……」

    ヒースクリフは重い腰を上げてムルソーの居る3階へ上がった。

    ムルソーは予想通り、フロアでたった一人作業をしていた。

    ヒースクリフが扉を開くと手を止めて、こちらを振り返る。

    「……、」

    その目が僅かに見開かれて、目線が下へ降りて行く。

    「……ムルソー……昨日は……ごめん。」
    「……」
    「……あんたと、おっさんの時間も……考えるべきだった……のに……」

    本当は、まだ憤っていた。

    自分が寝ている同じ屋根の下で、卑猥な行為をしようとしていた事。

    お互いに乗り気に見えた事。

    「……私も、すまなかった。貴方を居ない者のように扱ってしまって。」
    「………」
    「……本当は、そのつもりではなかったのだが……貴方にとってはそう感じただろう。」
    「……何だよそれ……スリルでも味わいたかったのかよ……?」
    「………」

    ムルソーの顔を見るにそのようだった。

    「……ほんっとロクでもねえな、あんた……」
    「……、」
    「馬鹿正直に言って人の事怒らせるしさ……その時は自分が正しいって思ってそうな所とか……見てて割と引くけど……」

    ヒースクリフは頭を掻いて天井を見上げた。

    「それでもなんか嫌いになれねえのが……悔しい……」
    「……」

    ヒースクリフは気恥ずかしさを隠すように溜め息を吐いた後、ムルソーに背を向けた。

    「晩飯作っとくから……帰って来いよ。」

    そう言ってフロアを出ようとすると、後ろから抱き止められた。

    「ありがとう。」

    それだけを言って、ゆっくりと離れて行った。

    「……そー言う所がズルいって言ってんだよ……」

    ムルソーの微かな笑い声が聞こえて余計に悔しくなった。



    「あの人ほんと何なんだろうな……なんか妙に上手いんだよ……人心掌握ってやつ?」
    「分かる……分かるぞ、ヒース……あいつはあれが厄介なんだよ……」

    後から帰って来たグレゴールがシンクの前でビールを片手に苦い顔で言った。

    「……なんか悔しい……なあオッサン、ムルソーが嫌いな食いもん無いか?入れたいんだけど。」
    「俺が知る限りじゃ無いな……顔色も変えずに何でも食うから……」
    「よし、じゃあ高カロリーメシ作るぞ。」
    「お、良いな?それ。」

    ヒースクリフは米をフライパンの下に敷き詰めるとトマト缶をその上に掛けてマヨネーズとチーズを掛けた。

    「「うまそ〜〜……」」

    ヒースクリフがフライパンに蓋をしてタイマーをセットすると、グレゴールが不意に気まずそうな雰囲気を出して来た。

    「……その……ムルソーはさ……俺とは、どっちかって言うとセフレに近い関係だったから……体のコミュニケーションが、多くなっちまうんだよ。まあ、少なくとも俺とは、だけど。」
    「……そうなのか?」
    「はぁ……まあ……あいつには色々あったからな……つっても人伝にしか聞いた事無かったけど。」
    「……色々?」
    「……あいつによく話し掛けてた同僚が居たんだけどな。そいつが外勤で一緒になった時に死んだんだとさ。」
    「……」

    その時、愛する者を亡くして後を追うように死んだ同僚の話をムルソーが話していた時の事を思い出した。

    「それで人間関係自体拒むようになって……俺とも恋人らしい事は……まあ、その……ほぼ無かった訳だ。」
    「……そう、だったんだな……」
    「……あいつも随分変わったよ。」

    グレゴールは嬉しそうに微笑んでいたが、不意に口角を下げると横目でヒースクリフを見て来た。

    「……あのな。ヒース。実は俺……あんさんに、嫉妬してたんだ。」
    「……俺に?」
    「あんさんの方があいつの恋人らしかったから。」
    「……、」
    「まあ、親子に近いっちゃ近かったけど……それでもムルソーはあんさんの方が好きなんじゃないかって思ってたんだよ。」
    「……なんか……ごめん。」
    「謝んなくて良いんだよ。俺が大人げ無いだけだからな。」
    「……俺は……おっさんの方が恋人っぽい気がしてたんだけど。」
    「……あんさんのイメージはどっちかって言うと夫婦なんじゃないか?」
    「……そうかも。」

    喧嘩ばっかだったしなぁ、と言う言葉を飲み込んでヒースクリフは白く曇ったフライパンの蓋を眺めた。

    出来上がった料理を二人でつついていると、ムルソーが帰って来た。

    「……ただいま。」
    「「おかえり〜。」」
    「……風呂を先に済ませて来る。少し待っていてくれ。」
    「はいよ。」

    ムルソーはさっさと風呂を済ませると、取り皿に料理を掬い取って食べ始めた。

    「……うん。美味しい。」
    「………」
    「……?どうかしたのか?」
    「いや……カロリーとか気にされるかと思ってたから……」
    「この程度であれば許容範囲だ。」
    「あっそう……」
    「……何故そんな顔をされるのか分からない。」

    かくして3人は元通りの生活に戻ったのだった。
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