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    AIのべりすとに書いてもらった沖縄戦後の竹雪です。
    私は手動で展開を誘導する文を入れたり、文面や口調などの修正をしたりしています。

    #竹雪
    eighthLunarMonth

    AIのべりすと共作 沖縄戦後・捕虜時代竹雪/1太平洋戦争末期。沖縄戦で日本兵として戦った後、富士部隊は米軍に投降。
    竹之内と雪村はしばらく米軍の捕虜施設で過ごす事になった。
    雪村は成り上がったばかりで、オキナガとしては右も左もわからない赤子のようなもの。
    雪村をオキナガにした責任感から、竹之内は常に雪村を連れ歩き、世話を焼いていた。その様子を見た米兵が「あれが『オチゴサン』ってやつかい?」と二人を指さして揶揄う。英語はわからなかったが、「お稚児さん」という言葉だけで何を言われているのか察し、雪村は腹を立てた。しかし竹之内はそれを止めなかったばかりか、「そうだ」と胸を張って肯定してしまうのだ。この一件以来、ますます二人は目立っていき、ついには基地内の噂話にまでなる始末だ。そんな事など知る由もない雪村だったが、ある時を境にその態度に変化が生じる事になる。それは終戦を迎え、収容所での日々にもようやく慣れ始めた頃だった。
    日本兵の収容所は狭かった。間に合わせで作ったテントの下に簡易ベッドが並び、そこに元兵士たちがすし詰めになっている。むさ苦しい男しかいない禁欲的な軍隊に、雪村のような美少年が入り込んだらどうなるか――。想像するまでもなかった。食事の時間、配給をもらいに米軍の食堂に行くと、皆が一斉にこちらを見る視線を感じた。そしてすぐに目を逸らすのだが、その一瞬の目つきといったらなかった。まるで値踏みされているような気分になるほど露骨な欲望に満ちた目がいくつもあった。やがて彼らの間で囁かれるようになったのが、『オキナガが来たぞ』という言葉である。彼らは自分たちより遥かに若い美青年である雪村の事をそう呼んでいた。雪村自身はもちろん意味がわかっているわけではない。ただ彼らの会話の端々を聞いているうちになんとなく理解していっただけなのだ。
    ある日の事。いつものように夕食を終えて食器を下げに行くと、ボーイが雪村に言った。
    「あの兵士たち、お前みたいなガキに興味はないみたいだから安心しろよ」
    ボーイの言葉の意味を理解するまで少し時間がかかった。だがその時になってようやく自分の置かれた状況を理解したのだ。つまり自分は今まさに性の対象として扱われているという事に。それまで全く意識していなかった事実を突きつけられて、全身の血が逆流するかのような感覚に襲われた。同時に怒りとも屈辱とも言える感情が込み上げてくる。
    (俺は…………!)
    自分が何のためにここに来たのかを思い出した瞬間でもあった。戦争を終わらせるために来たはずだ。それなのにこんなところで辱めを受けるために志願してきたわけじゃない。歯噛みしながら立ち去ろうとした時、一人の兵士が声をかけてきた。彼は他の兵士とは違い、一目見て上等だとわかる仕立ての良い服を着ていた。恐らく将校だろう。
    彼は英語で話しかけてきたが、もちろん雪村には通じない。すると今度は身振り手振りを交えて何かを説明してくれたようだ。だがやはり何もわからず首を傾げるしかない。困ったように笑う彼に、周りの男たちが気まずそうな顔で近づいてきた。
    そこでやっとわかった。彼らが自分を性的な対象として見ているのだという事が。おそらく下卑た笑みを浮かべながら、耳打ちでもしているのだろう。
    なぜ? どうして? 今までまったく気付かなかったという事はありえない。いくらなんでも鈍すぎるではないか。いや、違う。自分だけが知らなかったのだ。それだけではない。もし本当に自分にそういう興味があるとしたなら、何故これまで誰も教えてくれなかったんだろう。
    雪村は愕然とした。今までずっと一緒に暮らしてきて、仲間扱いしていたと思っていた竹之内さえ、実は知っていたのではないかと思うと悔しくて仕方がなかった。しかしもう遅い。こうなった以上はなんとか逃げる方法を考えるしかなかった。
    とりあえずその場を離れようとした雪村は突然腕を掴まれた。驚いて振り返ると、目の前にいる男は確かに見覚えのある人物だった。竹之内と共にいた記憶はないが、雪村は一度見た顔を忘れない。
    名前はわからないが、富士部隊の人間だ。確か「少尉」と呼ばれていた。
    雪村の腕を掴んだまま、少尉は無言のままじっと見つめているだけだったが、「オチゴサン」と呼ばれる存在を初めて目の当たりにした衝撃は大きく、呆気に取られてしまったらしい。雪村は抵抗する事もなくその場に棒立ちになっていた。やがて周囲の男たちから口笛や冷やかしの声が上がる中、少尉は日本語で話し出した――ただしかなり訛りの強い言葉でだけれど――その内容はよく聞き取れなかったのだが(そもそも日本語でさえなかったので)、「ここにいろ」「逃げようとするな」「黙って従え」というようなニュアンスだけは伝わってきた。
    それから雪村は少尉に連れられて宿舎に戻った。部屋に戻ると、少尉はまず雪村をシャワー室に連れ込んだ。
    脱衣所で服を脱がされ、温かいお湯を浴びせられる。その間も少尉は何も言わず、無表情に雪村を見下ろし続けていた。彼の意図が読めないまま体を洗われ、髪も洗い直された。そして再び部屋に戻ってくると、少尉は雪村をベッドに座らせ、自分も隣に腰を下ろす。そしておもむろに雪村の手を握り締めたかと思った次の瞬間、雪村の手を引くようにしてベッドに押し倒した。一瞬の出来事だったので何をされているのかわからないほどだったが、すぐにキスをされているのだと悟った。それもディープなやつを。生まれて初めての経験に、雪村は戸惑いを隠せなかった。
    少尉の舌が唇を割って侵入してくる。生暖かい感触に背筋がゾクッとする。反射的に顔を離そうとするが、がっちりと頭を押さえられていて動かせない。そのまま何度も角度を変えては貪るように吸い付かれ、息継ぎの合間に漏れそうになる喘ぎを必死に堪えていると、不意に体が宙に浮かび上がった。
    ベッドから降ろされていた。
    抱き上げられているのだ。しかもさっきとは比べ物にならないくらいの至近距離から真っ直ぐに見据えられて、雪村は思わず目を逸らしてしまった。
    そのまま部屋の隅にあるソファの上に運ばれ、乱暴に投げ出される。
    次に感じたのは首元への痛みだった。まるで肉食獣のような鋭い牙が皮膚を破り肉へ食い込んでくる。あまりの痛さに悲鳴を上げる事もできなかった。
    血を吸われている。そう理解するのに時間はかからなかった。
    噛みつかれた牙から、体の中に熱い液体が流れこんできている。
    自分の体の一部分が作り替えられているような感覚に襲われた。それは恐怖であり、同時に快感でもあった。このまま血液だけでなく魂まで抜かれてしまうのではないかという不安と期待が入り交じり、頭の芯が痺れていくような錯覚に陥る。そのせいだろうか――。
    (ああ…………俺死ぬのかな)
    そんな考えがふと頭をよぎり、雪村は自らの死を意識した。
    その時――
    「雪村!!」
    竹之内の声が頭の中で響き、はっと頭が覚醒する。
    同時に雪村の体にかかっていた力が緩むと、噛みついていたはずの歯が離れていった。見れば少尉が雪村の首元に手を当てて脈拍を確認しているところだった。そしてゆっくりと立ち上がると、何事もなかったかのように去って行く。
    その後、しばらくしてようやく我に返った雪村は、自分が一体どんな状況にあったのか思い出し、慌てて起き上がって周囲を確認した。どうやらここは医務室のようだったが、誰もいない。窓の外はまだ暗く、夜明け前だという事がわかった。
    夢…………? いや違う。あのリアルな感触は今でもはっきりと残っている。それに…………。
    雪村は無意識のうちに首元に触れた。傷は治っているが、まだ少しヒリヒリする。
    あの時の感覚が蘇り、下半身が疼き始める。だが今はとにかく落ち着かないと。
    雪村は深呼吸を繰り返しながら、今見ていた夢の事をできるだけ思い出そうと努めた。しかしどうしてもぼんやりとした記憶しか残っていない上に、何よりショックが大きかったようでほとんど何も覚えていなかった。ただ一つだけハッキリしている事があるとすれば、自分は間違いなく男であるはずなのに、なぜか女のように抱かれる夢を見たということだ。それもかなりアブノーマルな方法で――。
    雪村は改めて自らの下腹部へと視線を向けた。そこには当然のごとく男性のシンボルが存在しているのだが、なぜかズボンの上から見てわかるほど股間の膨らんでいて、明らかに通常時とは異なる形状をしていた。いわゆるテントを張っている状態なのだ。これでは誰が見ても一目瞭然だろう。こんな状態では、たとえ相手が上官であっても誤魔化す事はできなさそうだ。
    とりあえずこの場を何とか切り抜けないと――。
    雪村は急いで服を着ると、そそくさと医務室を出た。幸いにも誰にも会うことなく収容所に戻る事はできたのだが、入口の前に竹之内が立っていた。
    雪村は何事もない様子で横をすり抜けようとしたが、そうはいかなかった。
    竹之内は雪村の腕を掴むと、有無を言わさず自分のベッドに連れ込む。そして、
    耳元で囁くように聞いてきた。
    「何があった?」声色には怒りが含まれているが、雪村を気遣う優しさも感じられる。だから雪村も素直に答える事にした。
    正直に話せばきっとわかってくれるはずだ。竹之内なら。
    雪村は全てを話した。
    少尉にキスをされ、血を吸われた事。それでも最後まではしなかった事。女のように抱かれる夢を見た事。気づいたら医務室にいた事。
    全てを包み隠さずに話すと、竹之内は静かに、
    そして真剣に聞き入っていた。
    やがて全てを聞き終えた後、 竹之内は言った。
    ――君が見たのは、血を飲まれる事で起こる副作用だ。
    「血を……? どういう事です? オキナガって、何なんですか?」
    「言ったろう。オキナガはやや特殊な体質だ。日に当たれず生活時間帯が普通の人間とは違う……それだけだ。それだけ、なんだが……」
    竹之内は言い淀む。
    「人間と同じで、たまに君のような……外見の者に噛みつき、血を啜りたがる奴がいる」
    「血を……!? でも、どうして…………」
    「さぁ…………俺にもわからない。ま、詳しい話はまたいずれ。それより問題はこれからの事だ。今後、もし同じような夢を見るようなら、俺の所に来い。いいな。絶対、一人で対処しようとするな。必ず誰かに相談しろ。わかったな。
    じゃあ、おやすみ。ゆっくり休めよ」
    竹之内は一方的にそう言うと、雪村の返事を待たずに部屋を出て行った。一人取り残された雪村だったが、しばらくすると眠気が襲ってきた。昨日はほとんど寝ていないし、今日だって午前中は作業漬けだったのだ。それに精神的に疲れていた事も手伝ってか、あっと言う間に眠りに落ちてしまったらしい。次に目が覚めた時にはもう朝になっていた。結局、あれから一度も少尉の姿を見ないまま一日を終え、雪村はほっと胸を撫で下ろした。
    しかし、そんな雪村の気持ちとは裏腹に、事態はますます深刻さを増しつつあった。

    少尉が言いふらしたのか、雪村の血は絶品だという噂がオキナガ部隊に広まった。
    米兵だけでなくオキナガ部隊の中にも雪村を露骨に性的な目で見る者が現れだし、さすがの竹之内も手を打たなくてはならなくなった。夕食の後、竹之内は人気のない場所に雪村を呼び出し、こう言った。
    「君を俺の情人にしようと思う」
    「……は?」
    「表向きだけだ。どこまで効果があるかはわからんが、上官のものに手を出そうという輩は多くあるまい」雪村は一瞬何を言われたのか理解できなかったが、すぐに理解して顔を真っ赤にした。
    「じょ、冗談じゃないですよ! 俺は男なんですよ!」
    「そんな事は百も承知だが…………。とにかく、それで他の連中の目をそらす事はできる。俺としても、こんな所で妙なトラブルを起こしたくない。悪いが我慢してくれ。ただし、嫌がるような真似はするなよ。あくまでこれは上官命令だと思え」
    雪村は困惑しながらも、仕方なく承諾するしかなかった。
    それからというもの、雪村は公然の場で、竹之内の恋人のような振る舞いをするはめになった。
    例えば竹之内は食事中、隣に座って手を握ってくるし、作業中も事あるごとに体を密着させてくる。
    雪村としては迷惑以外の何ものでもないのだが、上官の命令なので文句を言うわけにもいかない。
    しかもその度に周囲の目は冷たくなっていく。
    「あの隊長さん、とうとう男まで食っちまったんだぜ」「おい、聞いたか? 今度はあの若い衆とデキてるそうだぞ」などという会話が聞こえてこないだけでもマシだったかもしれないが、それにしても居心地が悪い事に変わりはない。
    しかしその一方で――
    (これって、
    「まるで恋人同士みたいですね。竹之内隊長殿」
    雪村の言葉に竹之内は驚いた。
    まさか本当に言われるとは思ってなかったからだ。
    竹之内は思わず雪村の顔を見た。雪村はいつものように澄ました表情で、感情を読み取る事はできない。
    しかし竹之内は、
    「ああ、 確かにな。
    俺たちは、 恋人同士のようだ 。
    この関係がいつまで続くものなのかはわからんがな。
    ――なぁ、雪村?」
    竹之内はそう言って雪村に微笑みかけた。
    雪村は少しだけ、ほんの少しだけ、
    「悪くないかもな」と思った。
    しかし、この思いはすぐに打ち消される事になる。
    竹之内が雪村を情人として扱うようになって数週間が過ぎた頃、事件は起きた。竹之内は雪村を自室に呼び出すと、おもむろに口を開いた。
    「実は今、オキナガ部隊の内部で不穏な動きが見られる。
    それもかなりの人数だ。
    どうも誰かが米軍への報復を企んでいるらしい。
    俺も独自に調べているのだが、なかなか尻尾を掴ませようとしない。
    そこでだ。
    君に奴らの首謀者を突き止める手助けを頼みたい。
    危険な任務だからな。もちろん無理にとは言わん。」
    「それは構いませんけど、具体的にはどんな事をすればいいんですか?」
    「まあ、簡単に言えば間諜だ。不穏な動きをしているのが、ちょうど君とベッドが近い数人でな。寝たふりをして彼らの話を盗み聞いてくれればいい。それらしい情報があれば報告してくれ」
    「はい。そのくらいでいいなら。」
    「気をつけろよ。向こうも俺を警戒している。君は俺と男色の関係という事になっているからな。下手に動くと怪しまれて終わりだ。慎重に行動しろ」
    こうして雪村は、怪しい動きを見せるオキナガ達の間に潜入し、彼らの動向を探る事になった。そして、やがて一人の男が浮かび上がってきたのだ。
    その男は、何やらオキナガ部隊内部だけの暗号を使って密談を交わしていた。
    内容はよく聞き取れなかったが、話している内容から察するにどうやら竹之内の悪口を言っているようであった。雪村はその言葉を一言一句漏らさずメモに書き留めた。その後、さらに調査を進めていくうちに、別の人間からも同じような内容の話を聞いた。つまり、二人ともが竹之内の悪い噂を口にしていたのである。
    それだけではない。
    その後も定期的にオキナガ部隊内の情報を収集していくうち、ある事実が判明した。隊員達は皆、竹之内を慕っているように見せかけながら陰では彼を中傷し続けていたのだ。
    雪村はそれを見て、ショックを受けた。
    自分が抱いていた竹之内の印象と、あまりにも違いすぎたからである。
    竹之内は部下達に慕われながらも、常に一人ぼっちだった。誰よりも強く、頼れる存在であるはずなのに、どこか寂しげで、孤独だった。
    だからこそ雪村は、そんな竹之内を放っておけなかった。いつしか雪村の心には竹之内に対する同情が生まれてきていた。
    それからしばらく経ったある日、雪村の元にある情報がもたらされた。それによると、竹之内が何者かによって暗殺されそうになったらしい。雪村はいてもたってもいられず、その晩のうちに竹之内の部屋へと向かった。
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    MOURNING記憶が混濁した想い人との短い生活を描いた曽野綾子先生の小説「わが恋の墓標」の市茜パロ。手元になく記憶だけで書いているので色々と抜け落ちています。

    ▼1980年前後、雪村が竹之内の所で下宿をはじめて二十五年近く。長命者に関する書籍を大量に保管している古い館は等々力渓谷にあった。そこに勤める四十半ばの使用人が雪村に語った昔話とは。

    羊殺しが行われておらず、雪村が少し穏やかな設定です。
    わが恋の墓標パロ長命者の労働をとりまく環境は、あまりに悪すぎる。
    竹之内を相手に、雪村が白い髪を掻きむしって憤慨したのがはじまりだった。

    公共の職業安定所の営業時間は夏も冬も午後六時まで。これじゃあ夜しか動けない俺たちオキナガは仕事に就くなと言ってるようなもんじゃねえか。オキナガの生活を守るのはあんたの専門なんだろ。

    愚痴を聞いていた竹之内は新聞をめくりながら、顔も上げすに言った。
    「それなら当事者から声をあげるべきだな。俺一人になにもかも頼られても困る」
    少し頰をふくらませ雪村は押し黙った。
    雪村は光明苑が長野に移ったのを機に社員寮付きの仕事に就いていたが、オキナガを嫌う先輩社員たちの度重なる嫌がらせに据えかね、とうとうその中の一人を殴り倒した対価に仕事と寮を無くして竹之内を頼ったのだ。それから二十年あまり、下宿生活は続いている。
    9924

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