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    hari_mu8

    @hari_mu8

    お絵描きリハビリ中。
    NL.BL.GL問わずなんでもぽいぽい。過去絵もなげてます。新しいのもぽいぽい。
    腐百合性転換垢@hari_mumu

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    hari_mu8

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    歳の差カップルに3つのお題ったー
    ヒュークリへのお題は『「好きです!」「私(俺/僕)も好きだよ?」/近づきたいのに遠いあなた/「…可愛いなぁ」』です。 http://t.co/smwhfcWWbR

    ##幻水

    ::「好きです!」「私(俺/僕)も好きだよ?」


     ヒューゴは苦く微笑んだ。


     普段の彼女は“銀の乙女”に相応しく、凛として美しく高潔だ。
     普段の“あの女”は、人を率いる鉄頭の英雄に相応しく、気高く、憎々しい。
     そんな彼女をひとめ見たとき、ひそかにヒューゴは美しいとはこういう人のことを言うのかと思った。もちろん、カラヤの民も美しい人間は多数存在する。ただカラヤの民の美しさが、動を司るような、瑞々しい、しなやかな美しさであるなら、彼女はスッとした、冷たさと同時に静を司る美しさであると称す。そんな彼女はヒューゴにとって珍しい印象の女性だった。


     苦みをおびた笑みを消し、ヒューゴはそっと目線を下にやる。


     次に出会ったとき、彼女は悪魔の化身としか見えなかった。
     狂った踊りのように爛々と揺らめく業火たち。倒れる愛し肩を並べる、守るべき同朋たち。煌めく閃光と後ろを振り返ることなく逝ってしまった友。友を屠った先の女。
     彼女は大事なモノをすべて奪っていった。すまないなんて言葉を吐きながら。


     ヒューゴは俯きながら、目蓋を瞬かせる。


     次に会ってしまったときは、剣を向けた。間違っていても良い、ルルを殺した彼女がのうのうと生きているのが苦しい。カラヤを焼いたあの女頭が憎くて、ルルがいないことが悲しくて、故郷が傷付いている様がどうしようもなく虚しくて、苦しい。
     グラスランドに何故足を踏み入れた、銀の悪魔。あんたは、鉄頭の頭なんだろう。なぜ踏み入れた。このグラスランドに。ぐるぐると悲しみと憎しみが渦巻く。休戦協定はなんだったんだと詰る心にも翻弄されていた。
     彼女が何を思っていたのかは、ヒューゴにはわからない。
     無力さに嘆くヒューゴは英雄の存在を求め、望んだ。守れる強さが欲しくて。でもそんな俺は結局、あの女と同じ、人殺しなのだと思い知った。


     ヒューゴの瞳から、雫が一つだけ、こぼれて落ちていく。


     風と炎がぶつかり合い、戦火を巻き上げ、そして消えた。


    「つっ月になど誓ったり、しな……しないで、ロミオ」


     ガチガチで言葉も噛みまくっていて、顔を赤らめている“クリスさん”。そんな彼女に、ヒューゴは笑みを向ける。“普段の姿”とはかけ離れた彼女に、心揺さぶられながら。
     劇場で役を演じる。その練習をしている彼女の様子を茶化すと、クリスは拗ねてしまう。その表情にも、ヒューゴはやはり笑ってしまった。
     彼女の素と接してしまい、憎しみだけをもつことが難しいことは、とうに分かっていた。


     ヒューゴはすっと自然を装い涙を拭い目蓋を閉じた。


     閉じた目蓋の奥で、劇の最中が浮かび、思い出したようにヒューゴはクスリ笑った。
    「クリスさんって意外の塊みたいだね」
    「え?」
     笑いながら言ったヒューゴに、クリスは不思議そうな表情を向ける。
    「どういう意味?」
     その表情もヒューゴは“意外なこと”のひとつかなと思う。
     あの女が、ヒューゴのたわいもない言葉に、素直に感情を表情にのせて反応する日がくるとは思わなかった。
    「もっと雄々しいのかなって、思っていたんだ」
     口調もね、と言葉を足しクリスに苦笑を向ける。
     もっと高圧的な言葉使いか、男性的な言葉を使うのかと思っていた。確かに口調は固いことが多いが、女性的な話し方もしないわけではないようなのだ。
     外見は綺麗で儚い、消えてしまいそうな人。雰囲気は強く凛々しい、堂々とした人。気性は、恥ずかしがり屋で、嘘のつけない人。立場は、人の上に立ち、戦争を生き抜く力と、活かす力のある人。その矛盾たちが、彼女に意外性を持たせ、更に魅力的にしていた。

    「……そうか?」
     複雑そうな表情に変わるクリスに、ヒューゴはおやっとなる。
    「気にしていたの?」
    「別に、そういうわけではないが」
     やはり微妙な表情である。ヒューゴは首を傾げる。
    「別に固い口調でも、柔らかい口調でも、クリスさんらしいって感じるけど……悪い印象ではないよ?」
    「……そうか?」
     少し困ったような表情で下を向いて呻っていたかと思うと、おもむろに顔をあげてはにかみ笑いをクリスは浮かべた。
    「その、なんだ、ありがとう」
     数瞬固まり、首を振る。
    「……なにが? 俺、お礼を言われるようなこと、言ったかな?」
    「私の言葉使いに、ヒューゴは悪い印象をもっていないのだろう?」
     だから、ありがとう。と笑うクリスにヒューゴは頬を赤らめる。何故か恥ずかしいことを言った気分になったが、問題のある発言はしていないはずである。
    「言葉使いとか、さ、関係なく、クリスさんのことを、俺は……」
     好ましく思っているんだ。とは言葉にできなかった。
     フォローにならないフォローをいれようとして、自分に一撃いれたような心地になりそわそわと目線を揺らす。
     きゅっと唇を結び、ヒューゴは瞬きを繰り返す。
    「……ヒューゴ?」
    「憎らしいくらい、」
     嫌いになれない。殺したくない。苦しい。できることならこのまま、そばに、いたい。この感情に、名前をつけたとしたら。
     いっぱしのカラヤの戦士を倒した騎士に届かないように、
    「好きなんだ」

     彼女は目を見開いた。そして、
    「……わたしも」
     言葉は風邪にとけてきえた。

    **
    方向性を見失った


     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ::近づきたいのに遠いあなた


     あなたと話がしてみたい。

     遠目に写る銀糸の髪に銀色の鎧で身を包む女性、クリスを視界の隅で捉え、ヒューゴはグッと唇を噛む。
     鉄頭の男達――別名誉れ高きクリス様ファンクラブ――に囲まれた姿に胸がざわめくのを止めることが出来ない。当然ではあるのだが、元来の味方陣営である彼らは、当たり前のように気兼ねなく話している。本来は敵陣営であるヒューゴと違って。ルルのこともあって、クリスと個人的に話すのが難しいヒューゴは苦い気持ちが込み上げてくるのを感じ、そっと視線をそらす。しれっと謝らないと言った彼女を相手に、どう反応すればいいのか悩む部分もある。
     そらした先に赤い髪が飛び込んできてギクリと肩を強張らせ、内心で慌てる。
    (げっ、そういえばシーザーが居たんだっけ!)
     一瞬の動揺を見逃さなかったらしい、流石の少年軍師殿なシーザーが、目を細める。
    「ヒューゴ、おまえ……」
     口の動きが、お前分かりやすいなと動いた気がして、非戦闘要員であることを考慮して肩を加減しつつ、それでも強めに叩く。
    「イテッ、ちょ、おい、痛い、いてえって」
     何が分かりやすいというのか。
     恨みがましい感情を全面にだしながら、ヒューゴはシーザーを睨む。
     あーー、とシーザーは頭を掻いて、目を細め、 シーザーは真面目な顔を崩さないで言う。
    「話したいことがあるなら、話してこいよ。」
    (そんなにわかりやすいか俺)
     内心を言い当てられ、ヒューゴは慌てる。
    「べ、別に話したいことなんかないよ!」
    「はいはい悪あがきしねーの」
     どうせ、
    「リーダーと、軍の要の一人だ。いくらでも口実は作れるぞ? というかな、ある程度は認識の擦り合わせしてこい。親睦もきちんと深めてこい。ゼクセンを恨んでいると思われたら、めnじゃねえ、ことだろ」
     実際に恨みは抑えなくてはならない。この軍は、ヒューゴを中心になんとか纏まっている軍なのだ。

     でも、そんな話じゃなくて、なんでもないような雑談とか、ジンパのこととか、しがらみから解き放たれた会話がしたいのだが。彼女と。
     でも自分たちの関係は、公でも私でも気軽に話せる仲じゃない。
     自分たちが仲良く話す姿を思い浮かべ、あまりの違和感に撃沈した。
    (想像できない。俺たちで、どんな会話をするんだ!)

     戦争がなければ、関わることもなかっただろう人。戦争があれば、それは敵同士な人。真の紋章がなければ、出会う必要もなかった人。

     クリスさんの紫がかったような、藍色のような、複雑なグレーの瞳と目が合い、また自分が彼女を目で追っていたことに気づく。その目は、己を案じているように感じる。涼やかな瞳は、不思議と暖かさも感じて、親近感すら抱く。それなのに

     近付くには、遠い人なのだ。

    __

     ヒューゴと目が合い、戸惑いに揺れた。草原と青い空と太陽、日向の似合う彼の瞳はいつも複雑な色をのせている。血に穢れた自分には、近付いてはいけないのではないかと、クリスの心が囁く。
     もしも、ヒューゴの親友を討たなかったら、どうなっていただろうか。笑いあう未来があったのだろうか。もしくは道が交わらず、出会わないのか。

     それでもクリスは、国と軍と民を守る剣であり盾なのだ。何度でも彼女の手は血に濡れるだろう。同じ時を繰り返せば、同じことをせざるをえないだろう。

     あの出来事がある限り、きっと自分と彼は平行線なのだ。
     クリスは苦く微笑んだ。


     ̄ ̄ ̄ ̄

    ::「…可愛いなぁ」


     煮詰まった頭を左右に軽くふり、息を吐く。気分転換に散歩でもしようかと思い立ったクリスは、サロメとヒューザーに一言二言声をかけると、探索に出かけた。
     ついでにと、ビュッデヒュッケ城の周りを、問題は起きていないか見回る。ふと、丈夫そうな木の枝にぶら下がる少年を視界に収め、クリスは呆けたように見つめた。

    「……何をしているんだ? ヒューゴ」
     ぶら下がる少年、ヒューゴはその未だ幼さが残る、愛嬌のある顔の眉間に皺を寄せると、気まずそうに目線をクリスからそらし、掴んでいた手を離して、地面に危なげなく着地した。
     さすがだ。
     ヒューゴの身軽な身のこなしに感心しつつもクリスは見続ける。なんの意図があるのかしらと思案しながら。彼にとっては重要な意味をもっていたが、クリスにはわかりようがない。なにせ彼女は身長にコンプレックスなどない。

    「なんでもないよ」

     ぶっきらぼうな言葉に胸のあたりに重みを感じ、目を伏せる。ヒューゴに嫌われてる、否、憎まれている自覚があるクリスはなんとも言えず黙ったままになる。後悔と罪悪感をプライドでねじ伏せながら。彼が己につぶさに語るわけがない。
     クリスの行動を目線の端で追っていたヒューゴも、座りのない表情を浮かべ目を伏せる。

     風の鳴く声と、踊る葉の音を耳にしながら、二人は口を閉ざす。

     閉ざした二人の沈黙を、破るようにして言葉が飛び出す。
    「クリスさんには関係ないよ」
     拗ねたような声音のヒューゴに、やっとクリスは顔を上げる。困ったなと微笑みをうかばせながら。
    「別に、軍に迷惑とかかけていないし、かけるようなことじゃないし。……たぶん」
     眉根を寄せて続けられるヒューゴの言葉に、クリスは頭の片隅で、異なる種族を纏めるリーダーが一人でいるのは問題ないのだろうかという考えが浮かぶ。
    「一人でいるのは、少し、感心しないな」
     よくないことだ。誰に狙われるかわからないのにと一人内心で慌てる。クリスにはいまだあと一歩というところだが、彼が駆け抜けるような勢いで強くなっていっていることは承知しているのだが。
    「……フーバーと軍曹がすぐに来るよ」
     溜め息がこぼれ落ちそうになるのを、クリスはなんとか寸前で止めた。
    「それなら、来るまでここにいるわ」
     きょとんと目を丸くしたヒューゴは、しばらく考え込んだ様子の後、ひとつ頷いた。
    「そうだね」
     深緑の瞳がクリスの瞳と重なり、なんの気負いもなく言い放つ。
    「軍曹たちが来たら、クリスさんは軍曹と一緒に戻るといいよ。」
    「ヒューゴ?」
     虚を突かれたような表情になってしまったクリスに、ヒューゴは苦く笑う。
    「クリスさんの立場だって、充分大事で面倒で危険。だろ?」
    「……」
     あ、と音もなくクリスは口をひらく。確かに、今、クリスの身にすら何かが起きでもしたら、大惨事だろうと。皆に迷惑がかかる。光栄かつ不本意ながら、彼女はゼクセンの筆頭であり、象徴であり、心のありどころなのだ。故にゼクセンの枷になりうる。クリスがいるからこそ従うものがいるのだ。だからこそヒューゴも案じているのだろう。
     クリスの失態だ。敵が現れても自分一人でもなんとかしてみせるという自負があっても。
    「……心遣い傷み入る」
    「……別に」
    「……」
    「……」
     重苦しい空気に、二人揃って微妙な表情を浮かべる。
    「よければ一緒に戻らないか?」
    「えっ」
    「人が減るのは困るのではないか?」
    「別に平気だよ。カラヤの戦士はそんなに柔じゃないし、臆病でもない」
     少し憤ったようにヒューゴは言葉を連ねる。それに、と続ける。
    「フーバーとおれが揃っていれば、最強だから」
     なんてね。
     少年らしい笑顔を、ヒューゴが浮かべた。
    「そう」
     自覚なくクリスは優しくとろけた瞳でヒューゴを見続ける。
     腕を揺すり、視線を上げ下げし挙動不審なヒューゴにふふっと笑いをこぼす。
    「では先に戻らせて頂くわ」
    「そ、そうしなよ。軍曹は頼りになるから」
     あっ! ヒューゴは目を見開いて言葉を重ねていく。
    「別にあん……クリスさんの実力を疑っているわけでも、クリスさんが裏切ると思っているわけじゃないから!」
    「大丈夫。わかっているから」
     慌てる姿にまたも、クリスは笑ってしまう。
    「可愛いなぁ」
    「え?」
     キョトンと目をパチクリする様も、可愛らしいとクリスは思う。
    「なんでもないわ」
     しきりに怪訝な眼差しを送ってくるヒューゴに、クリスは愛想笑いをしてかわす。


     結局木にぶら下がっていたのは何だったのだろうかとクリスは首を傾げた。
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