すきまをすくう 一 久しぶりに飲みに行くといっても、相手が二宮くんであれば大丈夫だろうと呑気に構えていた。鋼鉄の男、二宮匡貴はボーダー内の活動においても、またプライベートにおいても隙がなく、卆がなく、揺るぎない存在だと思っていたのだ。
ちなみにこの場合の「大丈夫」とは、様々な意味合いを含む。私が酩酊しても二宮くんが共倒れすることはないだろうし、鋼鉄ではあるが冷徹とまではいえないので凍死するまで外にほおっておかれることもないだろう。家まで送ってもらったとしても、彼との間に何かが起こることは考えづらい。
何しろこの男はほろ酔いの加古望に間近で炒飯レシピを説かれても、眉ひとつ動かさない人間なのだ。私の知る女性の中で一番刺激的である加古ちゃんに耐性があるならば、私が全裸で迫ったとしても微動だにしないだろう。
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