そういえば誘惑の神と契約してたなこの男 デイビットがわたしの心臓の音を聞きながら、おへその下あたりをずっと四指で軽くトトトトッとスネアのように叩くので、なんだかお腹の奥の方がむずむずしてしまった。
彼にやましい気持ちはないんだと思う。
だって表情がとても穏やかで、瞼は眠そうに落ちかけている。わたしの体内で反響する音を聞くことに集中しているから、手の位置がちょっと際どいところにあるだなんてきっと気づいていないのだ。
「…ねえ、そろそろ重いんだけど…あと指気になるよ」
「うん」
とはいえ気にはなるので、控えめに抗議してみるが、彼は半分目を瞑ったまま生返事をするだけだった。
指は相変わらず下腹を叩いている。脚を擦り合わせたいような気がするけれど、いま身じろぎをしては気持ちよく微睡んでいるデイビットの穏やかな時間を邪魔してしまいそうで申し訳ない。
困ったなあ……デイビットはうとうとしているだけなのに。わたしときたら、お腹をちょっと叩かれたくらいで変な気持ちになったりして、まるでふしだらな子みたいじゃないか。えっちなのはよくないと思います。脳裏の頼光さんもご禁制と言っている。
とはいえ彼の指が止まらない限りどうにもこの感覚はどうしても呼び起こされてしまうような気がするので、やめてくれないかなあ……と考えていたら
「誘っている」
と言われた。
なんだって?
そして、何をと確認するより前に、彼は澄ました顔で思っていたのよりもだいぶとんでもないことを言い出した。
「立香は性的な接触には消極的だな。だがオレとしてはいつだって君に触りたいし暴きたい。正直毎日でも抱きたいところだがそれを実行しては君の身体に負担がかかりすぎる。ある程度節制は必要だ」
どこが穏やかに微睡んでいたというのか!
リズミカルな指の動きは止まらず、顔に熱が集まるのを自覚しながら、わなわなと胸の上に頭を乗せたままのデイビットを睨めば、紫色の目がこちらを見ていて、わたしと目が合うとすぐににんまりと細められた。
「オレは立香が許すなら今すぐしたいが、どうする?」
トトトトッとお腹をスネアにして聞いてくる。
「君が決めていい。……君に決めさせたい」
こやつ……わたしの下着がちょっと濡れているのを、さてはわかっているのではなかろうか。
だから顔のいい男には気をつけなさいと言ったでしょう!と脳裏でメディアさんが怒っていた。