その眼差しには無邪気な愛を溶けるような甘さを持った熱が、擽るように背中を走った。
彼の手から伝わる愛しさが、気難しい心を優しく解いていく。
「さに〜?」
跳ねるような音符の付いた甘ったるい語尾さえ、この人は愛してくれる。
「なぁに、あるばーん?」
にこっと微笑む彼に、心音がなだらかに上がっていく。
柔らかい陽の光が、彼のまんまるな頬を雪のように白く照らした。
眩しそうに細めた目は、どの角度から見たって美しい。
「綺麗だね」
「?」
きょとんと、不思議そうな顔で見つめられる。
その、うさぎみたいな幼い動きにくすくす笑った。
そんな身勝手も、笑って許してくれる目の前の優しい人。
最初は片想いだったはずなのに、それがもう思い出せないほど愛されて、満たされていた。
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