事故から得た本音 浅羽悠真が月城柳の胸に顔を突っ込んだのは、不慮の事故に他ならない。偶然と偶然が重なった。ただそれだけのことだった。
悠真もそれは分かっていた。というより、彼は何度もこれを己の頭の中で反芻している。現在進行形で。
ことの発端は本日の早退理由を考えていたときだ。どこの部署かも知らない職員から書類整理を[[rb:頼まれて > 押し付けられて]]、勢いに流されるままに執務室に運ぶことになった。書類は膨大な量だったにも関わらず、小分けにして運ぶのは面倒くさく視界が遮るほど重ねて持ったのが災いした。何もないところで[[rb:躓 > つまず]]いたのだ。うわぁあ、と情けない声をあげて体が前につんのめった。急に周囲がスローモーションになる。舞い散る書類と近づく床になす術なく空を掻く腕。
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