飛行機に乗って「ディオン様、竜はお好きですか?」
「竜?」
「ええ、例えば……、『バハムート』、ですとか」
「そうだな……」
テランスは情事後で辛いであろうディオンの身体を優しく労わりながらそう尋ねた。
テランスは前世の記憶を持っている。今よりも遙か遠い昔、今目の前でベッドを共にしている恋人が竜……『バハムート』となって空を駆け、民に希望を与えていたことを知っている。テランスは『バハムート』となって敵と戦うディオンを見て、無事に帰ってきてほしいと祈りながら戦場にいたことを覚えている。自分も空を飛んで、ディオンと共に戦えたら、その苦しい生い立ちを代わってあげたい、と過去の自分が胸を痛めていたことを覚えている。
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