グリルビーの頭の中が見える眼鏡アルフィーから渡したい物があると告げられたサンズはホットランドのアルフィーのラボの前に来ていた。
(アルフィーがオイラに渡したい物?一体なんだろうな…)
そう思いながらラボのドアをノックする。
「サンズ、いらっしゃい」
するとすぐにドアが開きアルフィーが出迎えてくれた。
「さあ、中へどうぞ」
アルフィーはサンズをラボの奥へと促す。
「ああ、邪魔するぜ」
サンズはそのまま中へ入る。
「そこの椅子に座って」
書類やゴミを押し退けて椅子を座れる状態にしたアルフィーは言った。
「相変わらずゴチャゴチャしてるなここは」
周りを見回して言いながらサンズは椅子に腰掛ける。
「人のこと言えないでしょ。そんなことより、私あなたとグリルビーの仲を進展させる為に発明をしたの!」
前のめりに言うアルフィー。
「あー…気持ちは嬉しいが、そんなことしてる場合か?漫画やアニメを見るのに忙しいだろ」
サンズは正論を言うフリしてすぐにボケる。
「それはそうだけど、その延長線上にあるのよあなた達の恋が!あなたが定期的に私に恋バナするから応援したくなったの!前から二人はお似合いだと思っていたし!」
少し興奮気味にアルフィーが話す。
「まあ、ありがとな。そう言ってもらえて嬉しいぜ」
サンズは少し照れながら言った。
「それでこれが作ったものなんだけど…」
アルフィーがサンズに渡した物は眼鏡だった。
「眼鏡?これをかけてグリルビーとペアルックをしろってことか?」
とぼけるサンズにアルフィーは説明する。
「違うよ。この眼鏡はね、頭の中が見える眼鏡なの。これはグリルビーの頭の中だけが見えるように設定されてるわ」
「グリルビーの頭の中が覗けるのか…?!」
サンズは興味を引かれたようで食い気味に言った。
「ええ、そうよ。だからこれをかけてグリルビーを見てみてよ」
アルフィーは笑顔で話す。
サンズは渡された眼鏡をかける。
「至って普通の眼鏡だけどな……よし、早速グリルビーズに行って確かめてみるか。アルフィー、ありがとな」
そしてサンズはいつもより足早に出て行った。
「……さて、私は隠しカメラで様子を見よう。サングリの新刊のネタになるし」
アルフィーは真面目に恋の応援もしているがサングリを推している腐女子でもある。
スノーフルの町に戻ってきたサンズは、アルフィーからもらった眼鏡をかけてグリルビーズの窓に張り付いてグリルビーを見ていた。
まずは遠目から見てみるつもりのようだ。
「グリルビーは今グラス磨きか」
グリルビーはカウンターでグラスを磨いている。いつもの光景だ。
するとグリルビーの頭上にグラスが映し出されている。
「本当にグリルビーの頭の中が見える……!」
サンズは驚くと同時にワクワクしていた。
(グリルビーにオイラのことを思って欲しい……!)
サンズはしばらくグリルビーを観察することにした。
しかし遠目からだとやはり見ずらい。
そこでサンズは変装をしてグリルビーズの店内に入ることにした。
口髭にハンチングを被りトレンチコートを上から着込んでいる。探偵のような風貌だ。
ドアを開け変装したサンズが店内に入る。
グリルビーがこちらに気付いて顔を向けた。
(まずい……!)
サンズは慌ててハンチングの縁を持ち深く下げて顔が見えないように被り直した。
グリルビーは小首を傾げたがまたすぐに作業に戻った。
(ふう……危なかった)
サンズは胸を撫で下ろし、いつものカウンター席ではなくグリルビーから離れた入口手前のテーブル席へ腰を下ろした。
注文も先程と同じようにハンチングを深く被った状態で難なく済ますことが出来た。
注文したポテトをかじりながらサンズはグリルビーを眺める。
グリルビーはカウンター席にいつもいる赤い鳥と魚のモンスターの話を聞いている。
グリルビーの頭上にはその二人の顔が映っていた。
(アイツらに罪はねえ……ねえが)
サンズはグリルビーが自分以外の者を考えていることに嫉妬している。
(グリルビーにはオイラがいない時にもオイラのことを考えて欲しい)
サンズは胸が苦しくなった。
その後もサンズはグリルビーを観察し続けるが自分が求めたものを見ることはなかった。
たまにグリルビーが犬や猫を思い浮かべていたのは可愛かったが。
そして、それから数時間が経ってグリルビーが何だかソワソワし始めた。
それと同時にグリルビーの頭上には念願のサンズが映し出されていたのだ。
それを見たサンズ本人は思わず勢いよく立ち上がる。
(グリルビーがオイラのことを……!!)
サンズは嬉しくてたまらない。
どうやらグリルビーは常連のサンズがまだ店に来ていないと思って心配しているようだ。
(オイラのことを心配してくれてる……!グリルビー可愛い)
サンズはグリルビーのいじらしさに胸を打たれた。
そして口髭とハンチングを外してトレンチコートを脱ぎ、グリルビーの元へ行った。
「グリルビー、オイラはここにいるぜ」
サンズは優しくグリルビーに声をかける。
気付いたグリルビーはサンズの姿を見て驚き固まっている。
「グリルビー、オイラが急に現れて驚い……」
サンズはグリルビーの顔を見て言葉が途切れる。
グリルビーは顔を赤く染め照れている。
そして頭上には眼鏡をかけたサンズが映し出されていた。
「…………もしかして眼鏡をかけたオイラに照れてる?」
サンズは恐る恐るグリルビーに尋ねると、グリルビーは更に赤面させ恥ずかしそうに首を縦に二回振った。
グリルビーは数時間会ってないだけでいざ会ったらこんなにも嬉しいし、眼鏡をかけたサンズはかっこいいし珍しいしお揃いだしで頭がパンクしそうになっている。
サンズはそれをグリルビーの反応だけ見ても丸分かりで愛おしさをとても感じた。
「……オイラ、眼鏡似合ってるか?」
そう問うサンズにグリルビーは照れながらいつもより速く首を縦に何度も振った。
(グリルビーお前、無口無表情なのに反応が分かりやすいぜ。すげー可愛い)
サンズはそう思いながら
「ありがとなグリルビー」
目の前の可愛らしい想い人にお礼を告げた。
アルフィーはサンズとグリルビーの一部始終を作業をしながら隠しカメラを使ってリアルタイムで見ていた。
「頭の中身を覗かなくてもよかったみたいね。でも結果的に成功したし、眼鏡の形に作って良かった……!」
アルフィーは笑顔で二人を見守った。
その後サンズはグリルビーに何故眼鏡をかけていたのかきかれ、頭の中が見える眼鏡のこと、グリルビーをずっと見ていたことを説明したらグリルビーは恥ずかしくなりまた赤面してサンズを軽くポカポカと叩いた。
サンズはどーどーと両手を前に出しグリルビーを宥めようとしているが顔は嬉しさでニヤケていた。