ただ ひとつの ゆいいつの 依頼された魔物退治と、その後に反省会と称して行われた「石の剣」の練兵を終わらせてテランスが隠れ家へ戻ってきたのは、宵も半ばという頃合いだった。当然、舟守のオボルスには「陽が暮れてから舟は出したくねえんだよ」と文句をたっぷりと言われたが、同乗したドリスとコールが宥めてくれたので、テランスは割増料金を払わずに済んだ。
隠れ家には、久々に滞在することになっている。別の場所に住まうようになってしばらく経つが、隠れ家が持ち合わせている空気感は今も慕わしい。ドリスとコールとは別れ、ひとりで昇降機に乗り込んだテランスは「何故だろう」とぼんやりそんなことを思った。
──おそらく、本当に様々なことが此処で起きたから。
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