狂い咲く花は風を乱吹く14ドゥリーヨダナには双子の男女の子がいた。
息子のラクシュマナと娘のラクシュマナー
ドゥリーヨダナは二人の子供達を愛した。
この二人に全ての幸福を、全ての愛を、全ての財を全ての祝福を
「このスヨーダナ」にとっての始まりはラクシュマナーの婿選びの日。
成人に育った王族の娘は夫を選ぶ為の婿選びの儀式(スヴァヤンヴァラ)
ラクシュマナーはついに自分も愛する両親のように、愛しい夫を選び永遠に愛を誓うのだと幼い頃から憧れていた。
しかしラクシュマナーは夫を選べなかったのだ。
「サンバ」という男が儀式に乱入し、ラクシュマナーを攫った。
サンバは捕らえられ、ラクシュマナーも無事助けたが
その後、どの男もラクシュマナーを妻にしようとは思わなかった。
何故なら、サンバはクリシュナの息子であった。
だからこそ男達はクリシュナの怒りを買うと思い、関わらないでおこうとした。
立場を失くしたラクシュマナーは仕方なく、自分の夫をサンバに選ばなくてはいけなくなってしまった。
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クリシュナの息子と婚姻を結んで、数年後
戦争が終わり、ラクシュマナーの実家であった、ドゥリーヨダナの宮殿は宿敵であり仇のビーマセーナが受け継いだ。
クリシュナは、ビーマの宮殿に行く時は必ず義娘のラクシュマナーを連れた。
「やぁ、ビーマ。生きてるかい?なかなか(ドゥリーヨダナの)部屋から出ないから、みんな心配していたよ?」
「…クリシュナ、か……、…っ」
戦争で疲労したビーマは、盟友の隣にいる存在に目を力こむ。
「ああ、娘のラクシュマナーだよ。アルジュナから聞いたけど、若い頃のあの男にそっくりなんだって?」
ビーマは静かにじっとラクシュマナーを見た。そしてラクシュマナーは憎しみと精神的に気色の悪い汚物を見るかのように、父親の仇を見返した。
「おいおいビーマ、そんなに娘をジロジロと見ないでくれるかい?俺の息子の妻なんだぜ?」
その言葉にハッと視線を外すビーマ。しかしラクシュマナーは視線を外さなかった。
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ビーマは思わずスヨーダナを力強く押し離した。
すると、ひ弱である「そのスヨーダナ」は地面に強く叩きつけられ、口から血を吐き出してしまう。その様子にハッと力の制御ができなくて後悔と罪悪感を感じる。
キッと、「スヨーダナ」はビーマを睨む。
今までで向けられたドゥリーヨダナのそれと違い、それは純粋の憎しみだった。
「父上の、仇…ッ!!」
「!…お、おま…ラクシュマナー…っ」
まるで幽霊を見るかのようにビーマは後ろに引いた。
「ビーマセーナ!私はお前を、パンダヴァを許せない!!よくも父上と兄様をッ!!死ね!!!!!」
ラクシュマナーは再び短剣を身構えると、それをビーマに向けて走ってきた。
「や、やめろ…!!!!!」