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    1YU77

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    1YU77

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    〜Happy birthday ニャボラさん〜

    ニャボラさんのお誕生日にできることは(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)!!

    と悩み拙いですがSS捧げさせて頂こう!!!
    と初挑戦で書きあげたまさよどまさSSです

    仲良しでできあがってる2人
    ※ヤギシズの影もへばりついています💦

    ものくろせぴあにじのいろ






    「淀野さん、淀野さんかぁ」
     父にもらった名刺を眺め正雄は布団に寝転がっていた。
     淀野さん。父とは違う雰囲気のある大人だった。正直にいうと父より強そうでお洒落だった。都会の人は違うなぁなんて一目に感じた。なんだかすごそうな「おーら」を感じる人でじろじろ見ることは出来なかったけれど視線を引かれてしまった。それよりもテーブルにまさかのライカがあってそっちに釘付けになったんだけど。もう少し話してみたかった気がする。もちろん、父が許さないだろう。どうして父はあんなに焦っていたのかいまだに不可思議だ。淀野さんもなんだかじっとこっちを見ていた気がするけれど気のせいか。
     あの日はとにかく妙だった。
     来るなというのも変じゃないか。知り合いなら息子の自分に自己紹介くらいさせてくれてもいいのに。普段の父なら息子です、と話してくれるはずなのに。
    慌てて追い払われたのは違和感があった。「淀野さん」はどうやら父にとって何やら重要な人のような気がする。父は淀野さんと逢ってから少しだけ表情が変わったようなそうでもないような。息子の自分だからわかる!と自信満々にはいえないけれど。
     家へ帰る電車の中で父はすこしだけいつもの眉間の皺が薄れたような気がしたんだ。
     だから、父は淀野さんと逢えてよかったんだろうと思う。
    きっと、いいひとに違いない。
     もしや生き別れの兄弟だったりして。もしや昔の命の恩人だったりして。なんて学校で読んだミステリー小説みたいなことが浮かんで「ないない」と独りで忍び笑う。

    淀野さん、淀野さん。電話してみたいけれどなかなかすぐには勇気がでなかった。
     だってあの時、父の目がほんの少し赤かったんだ。
     淀野さんは父の息子である自分からまた連絡されるのは嫌かな。
     お父さんは、大丈夫だろう。人としてダメなこと以外ならだいたい許してくれる。
     それに眉間の皺も薄くなったんだ。父は嫌がらないと思う、……たぶん。
    そもそも好きにしろと言ったんだから「男に二言はないだろ!」といえば父は口を噤むだろう。あの人、頑固だから。
    あの凄い人だろう淀野さんが気になる。あの日が異様すぎて色々引っ掛かるのもある。
    間違いないことは、父の秘密をたぶん知っている。
    正雄が小さい頃から父のことを聴くと適当にはぐらかされていることが沢山あった。
    小さい頃や学生時代の話はしてくれるのに、そこから一気に母と結婚して自分が生まれたところまですっとばす。その間になにがあったのか絶対に教えてくれない。毎回嘘をいってくる。根無し草でふらふらしていたとか。てきとうに働いていたとか。ともかく毎回違うことをてきとうに話して笑ってごまかしてくるのだ。
    けれど、正雄だって察しはつく。そのあたりに何が起こっていたかくらい誰でも知っている常識だ。あの頃のことを父はごっそり丸ごと秘密にするつもりらしい。
    調べてしまえばわかることは多いのだが、父への裏切りに思えて調べていない。
    いつか話してくれるかもしれないし、本当に封印したい、触れたくないほどのことがあるのかもしれない。だから正雄は父の秘密のことには触れないようにそっとしている。
    本当は知りたい気持ちもある。おもしろそう、なんて言えば悪いけれど。
    好奇心は強い方なのだ。
    淀野さん、淀野さんかぁ。
    名刺をまた見上げる。
    なんか渋くてかっこよかったなぁ。
    それから。ほんのりと良い匂いがした。







    「ん~~~~、やっぱり淀野さんは良い匂いがするなぁ」
     すれ違いざまに項に顔を埋めると淀野が肩を跳ねさせた。
    「こら、正雄。やめなさい」
    「まだあかるいから~?」
     正雄が茶化して「へへ」と笑って見せると淀野はじとりと眉を寄せた。
    「ごめんなさ~い」
     全く効かず呑気に謝った正雄はコーヒーを淹れる。いつもの長閑な夕刻に淀野はげっそり呆れた息を吐いてソファに腰掛けた。
    「淀野さん今日も砂糖なしですね!」
     ガラステーブルにコーヒーを乗せ正雄もすぐ隣にぼすりと座る。
     無邪気に現像したばかりの写真をならべては摘まみ上げ陽気な声で感想を喋っている。ここが最高、これはあの時にとって、この写真とくにいい、だとかなんだとか。忙しなく唇が唄う。関われば関わるほど淀野は思う。
    「お前はお父さんに全く似てないね」
     正雄は「!」と驚嘆を上げた。ぺらりと摘まんでいた写真を落として淀野につめよる。
    「うそだぁ! みんなお父さんにそっくりだって言うんだよ、ほんと失礼だよなぁ。ばあちゃんなんて子供の頃の正蔵が帰ってきたみたいだって! あ!でもね、俺の方がかわいいってさ、それは皆言うんだ、あはは!」
     淀野がふとやわらかく笑った。
    「それは、そうだろうな」
    「え、俺かわいい? 淀野さんもそう思います?」
     正雄は笑いを堪えている淀野の顔を下から覗き込む。
    「うーん……どうかな」
    「どうかなじゃないよ、いけずだなぁ。お父さんみたいなこと言ってさ! なんか、淀野さんってときどきお父さんに似てるよ、ああ、見た目じゃないよ、見た目は淀野さんの方がかっこいいもんね」
    「はは、それは認められないけど。きみのお父さんは男前じゃないか」
    「え! それ俺も男前ってこと!? 自分ではそんなに似てないと思うんだけど…」
    「正雄はほんと前向きでいいね」
     淀野は朗らかな正雄の髪をよしよし、と軽く撫でてやった。小さい子でもないのに正雄は犬のようにニコニコ嬉しそうな笑顔を返してくれる。
     正雄こそ。あの人に似ているよ。と言い出しそうになるが淀野は飲み込む。
     彼を想うとヒリヒリする。淀野にもまだ奥深く刺さっている。
    「お父さん若い頃の写真ないんだよね…小さい頃のはあるけど……。あ、学生時の写真はびっくりするほどかっこよかった。今と全然違うよ。年上なのに淀野さんの方がこう、ギラギラしてて俺はすき。勿論お父さんもすきだけど、お父さんは控えめって感じ!」
     淀野は小さく息を吐く。八木を思うと複雑だ。
     八つ当たり制裁の八木。ああ、八木中尉ってあの感激屋の八木。
    『不安な時…この…首すじのあたりにくっついて』
     ハッと短い息を吸う。頭に浮かんでくるものを打ち消す。
     淀野の逢った「やぎ」にその面影は殆どなかった。
    『しずま』と泣いている間だけ、感激屋の片鱗がみえたか否か。そのくらい。
    淀野の逢った「やぎ」と正雄のよく知っている「お父さん」はきっと同じで。
     あの人が知っている「やぎさん」だけが恐らく特別違うのだろう。
     複雑でなんだかもやもやとする。
     瞬いてこっちを見ている正雄の頭をまたわしわしと少し強く撫でる。
    「まあ人は年を取ると静かになるものだよ、正雄も元気なうちにすきなだけすきなことをしなさい」
    「ふーん。な~んか、また誤魔化された感じする」
     正雄は片肘ついて唇を尖らせる。正雄は普段茶化して朗らかな様子でいるが聡い子だった。その上淀野と毎日一緒にいるのだから、少しの機敏もすべて読み取られてしまう。
    「つっこむのはよくないってわかってるけど、俺、お父さんと淀野さんがどういうカンケイなのかず~~~っと不信感ありだからね~」
    「ははは、何言ってるんだ、変なこと言って」
    「意味深~~! 元カレですかあ?」
     ありえないとわかっているくせにじゃれつく正雄を宥める。
    「八木さんは、俺みたいな人は絶対すきじゃないと思うよ」
    「ッ、なんでそんなこと言うんですか! 俺は淀野さんだいすきなのに! お父さんも淀野さんに感謝してますよ!」
     むっと正雄が吊り目をますます三角にして、膝に乗っかると正面からぎゅっと抱き着いてきた。
    「淀野さんは自分と俺を大事にしてくださーい」
    「そうだな。だいじ、だいじ」
     よしよし背中を撫でてやると首元に顔を埋められた。
     そういうくせは父譲りなのかもしれない。と考えてしまう自分が嫌だ。
    「あの人」から聴いた「やぎ」の癖を絶対正雄に重ねたくないのに。それにこんなことを考えているなんて知られれば増々正雄が怒るだろうと予想もつく。
     血というものは恐ろしいもので「やぎ」の顔にそっくりな正雄を見ていると、淀野は「やぎ」ではなく「あの人」が甦り彼に思い馳せてしまう。儚くて危うくて、強く美しい子だった。
     今となっては「やぎ」と正雄はあまり結びつかない。そんなに似ていないなと感じているくらいだ。確かに全体はよく似ているが細かくみれば違うところがたくさんある。
     なにより、あの陰気な「やぎ」と違い正雄はいつも弾ける笑顔を見せてくれる。
    正雄は温かい太陽みたいな子だ。表情が全く違うのだから顔だって全然違う。卒業式の写真を見せてもらった時は真顔でぞっとするほど「やぎ」にそっくりで寒気がしたが。
     動いて笑う正雄は全然「やぎ」に似ていない。
    「ねえ、ほんとに淀野さんはお父さんとどこで知り合ったんですか? 誤魔化されると余計気になるのしょうがないでしょ、いい加減ヒミツはなしにしましょうよ」
     淀野は正雄を柔らかく抱きしめて背中を撫でてやった。
    今更、正雄に何か隠そうとか子供扱いのような誤魔化しはもうしたくないのだが。
     唯一「あの人」のことだけは彼の父の為にも隠さねばならないことだった。
     だが、正雄なら。正雄が向き合いたい、知りたいのなら、本当は伝えてやりたい気持ちは強い。いつか、どこかで話さなければならないのかもしれないが。
     あまりに治らない傷が深い「やぎ」を待ってやらねばならない気がしている。
    一方、「やぎ」なんか知るかという気持ちも少しくらいはあるが、彼はこの正雄の父なのである。正雄は父の傷つくことはしたくないのだ。だから淀野は待っている。正雄に不信感を抱かれながら。なんの因果だ。それに「やぎ」は永遠に傷を治せないだろうし、永遠に沈黙しそうな気もしている。
    二十二年を追い続けて我ながら執念だな、と思ったが同じく、執念の二十二年、焼き付いたまま「あの人」に触れるとすぐにでも号泣してしまう哀れな男が「やぎ」だ。唯一「あの人」を喪った悲しみを共有できるのに永遠に好きになれない憎らしいけど憎めない人「やぎ」
     けれど、正雄に伝える日も遠くないような予感はしている。
    「やぎ」はあの日から少しだけ変わったのだと正雄が話してくれたから。きっと教えた住所にも行けたのではないだろうか。触れもできず膿んでいた傷に少しは薬を濡れただろうか。
    「……昔ね、きみのおとうさんと同じような顔をしているって言われたことがあるよ」
    「ええ!? 本当ですか! 淀野さんとお父さんが??どんな顔!?」
     そんなに驚くだろうかと笑いながら正雄の頬を撫でる。
    「んー……難しいな、いうならさみしそう、が近いのかなぁ」
     正雄はまた眉を寄せじとりとこっちを上目に睨む。
    「また、な~~んか意味深なんだよなぁ。おとーさんと淀野さん……謎は深まる」
    「俺はもう言いたいのはやまやまなんだけど……俺だけの話にならないのはわかるね?」
     賢い正雄は察しよくある程度はいろんな想像をつけているから素直に頷く。
    「お父さんに直接聞く勇気ないだろ」
     正雄はきょとんとした後、またじっくりと頷いた。
    「お父さんのこといじめられないもん。たぶん……辛いことと関係ありますよね」
    「そうだね」
     正雄を抱きしめると淀野もほっと息をはく。
    「淀野さんも辛かった?」
    「うーん。君のお父さんにあった時が一番つらかったかもしれない」
    「えええええっ! お父さんあんなにおとなしいのに!」
     淀野は思わず声を上げて笑った。「やぎ」がおとなしいわけがあるか。
     あんなに繊細なくせあんなに猛々しい男は珍しい。
    「俺さ、あの日の帰りはね。淀野さんがお父さんいじめたのかと思ったんだ、お父さんちょっと目が赤かった。でもあの後からなんだかスッキリしてて、淀野さんはお父さんが抱え込んでたものを少し軽くしてくれたのかもって思ってる」
     淀野ははっと息をのんだ。唇を噛む。
    「どうせ教えてくれないから、想像した答え合わせをしようかなぁと。この想像はどれくらい正解?」
     正雄が淀野の頬を両手で捕まえた。淀野は眉を下げる。なんだか少し泣きそうだ。
    「は、はは……どうかな、それはお父さんにしかわからないよ。実はそんなにちゃんと話せたわけじゃないからね。けど、俺は。今、正雄の言葉にすくわれているかな」
     正雄が目を丸くする。
    「秘密だけど、俺が君のお父さんに泣かされたんだよ、お父さんは違う人に泣かされたんであって、俺は泣かせてない、と思う」
     だって、淀野に逢っただけじゃ「やぎ」は泣かないだろう。
     どれだけ酷い言葉を投げかけてもきっと「やぎ」は慣れっこで、堪えきることができるはずだ。しかし「志津摩くん」の顔をみてしまったから一瞬にして泣いてしまったのだ。それほどの取り乱しようだった。
    結局、みんなあの優しい「志津摩くん」に泣かされる。美しくて儚くて、かわいいひと。
    「ちょっと……ちょっとだけ、正雄ににてるよ」
     ぎゅっとくっついていた正雄が飛びあがる。ばっと立ち上がると淀野の肩を掴む。がくがく揺すって慌てたように問いただす。
    「ええっ!? だれと!! えっ、これって大事なはなしですね!!」
     淀野は頷いて微笑んだ。
    「お父さんを泣かせた犯人。……俺と、きみのお父さんの、大事な人」
    「えええええ新情報じゃないですか!今日サービス多いな、うわぁ、一気に真相に近づいたこの難事件! どうしよう!!!」
     正雄はわくわくと目を光らせている。いつのまにか記者のようになってしまって笑ってしまう。自分の仕事を手伝っているのだからなるべくしてなってしまったのかもしれないが。元々好奇心旺盛でむいているとも思う。
    「焦らなくてもきっと辿り着くさ」
     正雄はこちらを見下ろしてニヤリと笑った。
    「俺は淀野さんもお父さんも虜にした犯人に似ているんですね、へぇ~??」
     淀野は正雄の手を引いてまた膝の上に乗せる。向かい合って正雄の頬を撫でる。
    「いや、似てるのは少しだけ。俺はあの子とは関係なく、正雄を好きになったよ」
     どうしてか自然にそう伝えてやると、正雄は目を剥いて。ぐっと口を結んでぐずぐずとしたあと、わっと万歳して淀野を抱きしめる。
    「淀野さんだいすき~~!」
     慣れないなぁと苦く笑う。こんなに馬鹿正直に堂々「すきだ」と伝えてくれる人はなかなかいない。憎らしいが「やぎ」が正雄を大切に育てた何よりの証拠。
     正雄のそばにいるとどうにもこうにもあの「二人」が未だにちらついてしまう自分が嫌いだけれど。目の前に正雄がいてくれると、自然と他はみえなくなる。
    「俺は本当に運がいいよ、正雄にあえて嬉しい。日々が鮮やかに変わった。あの日、色んな感情でいっぱいいっぱいになって辛かった。長年のことが溢れ出して、涙も出た。でも、お前に逢えたんだから、俺にとって運命の日だったんだと思う」
     また正雄は胸元に突っ込んでいた頭をバッと上げて。
     ぴたりとてのひらを淀野の額にあてる
    「ねえ、熱あります???」
     淀野は照れて赤くなった正雄の頬を優しく摘まんだ。
    「そっちじゃない? あかいけど」
     ふにふに摘まむと正雄はむっとして。えいと、淀野の肩を掴んでソファに寝転がせた。
    「も~~~~! さっき明るいからダメって言ったじゃないですかぁ!」
    「おれは言ってないよ?」
     笑うと正雄はまた目をでっかく開いて。真っ赤になると弱った顔になる。
     かわいくて、思わず身体を上げてそっとキスをした。
    「今日はやすみだし、べつにだめなんていってないけど」
     我ながら悪いおとなだなと自嘲しながらも。
     真っ赤な上に目までうるうるさせている正雄をみるとどこまでも甘やかせてやりたくなる。
     無償に純粋に、あたえてくれる愛をもらって淀野もその愛情をあますことなく正雄に返す。
     こんな風に温かく抱き合えるようになるまで。
     淀野自身を自分が許して正雄の手をとれるようになるまで。
    ここまでいろんなことがあったんだ。
     けれど、それはまた今度。
    「八木さん」に挨拶へいくときにでも。腹を割ってお互い話をしよう。
     長い長いつもる話が、みんなある。




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