春告げ菓子「ご主人。このお菓子はなんていうんですか?」
穏やかな昼さがり。
本日のおやつ作りに勤しむぼくの手元を不思議そうに眺めていた使い魔のククルがそう尋ねてきた。
「これは桜餅っていうんだよ。東洋の島国で春に食べられるお菓子なんだ」
「にゃう……東洋の……だからでしょうか? 少し変わった香りがします」
「そうだね。このあたりじゃ、道明寺粉も餡子も桜の葉の塩漬けもめったに使わないから」
「でもでも! とっても綺麗でかわいいです!」
できあがって皿の上に並んだ桜の葉に包まれた小さなお菓子たちに、ククルが金色の瞳をきらきらさせる。
その愛らしさに顔を綻ばせつつ、ぼくはかわいい使い魔のためのティータイムの準備へと取りかかった。
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