ご期待には添えません夜中に目が覚めて布団から這い出し、礼儀のようにトイレに行き、帰りに腹が減っている事に気づいた。なんかあったかなと暗闇の中探しまくって、カップの麺の最後の一個はこないだ食ったから全滅、あ、袋のラーメンあったかもと戸棚を探す。戸棚やなくてレンジの上かい。ちゃんともどせや……これいつ買ったっけ。流しの上の電気付けて、水の量を適当に測って火にかけて、その上で煙草に火を付けて待つ。緩く付いた換気扇に吸い込まれていく煙に、勿体無いなーお前らも全部吸えたらなーと別れを惜しんでいたら鍋が騒ぎ出し、麺を投入。なんか具の一つくらいないんかいなと冷蔵庫を見るもでかいペットボトルの水しか入っていなかった。なんで水ごときに金を出して、さらに大事に置いてるんやとおそらく泥酔だった過去の自分に腹を立て、麺をほぐしスープを入れて完成。我が家唯一の丼らしきものを取り出し、机に置き座って食べる。これはチヒロくんの躾の賜物や。野生の俺なら立ったまま鍋で食う。下を向くと髪が落ちてきて汁にぺちゃんと浸かった。いつも手首に巻いているゴムは寝る時に外したのでなかった。取りに行くのも面倒くさく、手で押さえながら食べていると女が起きてきて、いいなーと言う。もう一個あるでと言うと食べると言い残しトイレに行った。しゃあないなと最後の一個の袋麺を取り出し、さっきの鍋で同じ程を繰り返す。違いは冷蔵庫に入っていた水を使った事だ。これはええ水やからうまいやろ、いつの水か知らんけど。冷えた水を考慮し火を強め、待ち時間に自分の麺を食べようとすると女が戻ってきて俺の分を食い出した。そんならゴム貸せやと女のゴムとトレード成功。女だって俺のゴムを使っているから問題はない。既に家中にあるゴムがどっちのかわからないし、ゴムとはどれだけ買ってもいつの間にかどこかに旅立つものだ。新たに出来たラーメンを入れる丼はないので鍋ごとだが、これは不可抗力だから許してほしい。再び食べ始めるも向かいの女は携帯の画面を一生懸命に見ていた。まあ喋る事もないしとラーメン食って、女の分の丼も回収して、流しに捨てて洗うのはまた明日。女が食い残した麺がだらしなく垂れて、排水溝に集まっていった。冷えた水はいつまで飲めるんだろうかとまた冷蔵庫に戻した。