通話 アルコール夜になるとなんだか心が寂しくなるような気もする。......多分アルコールのせいもあるけど。
帰宅早々シャワーを浴びて、チューハイを飲んで確実に完成した私はふにゃふにゃだった。
無性に鴇くんが恋しくなり、アポ無しで通話ボタンをポチリと押す。鴇くんもう家に帰ってるのかな、ご飯は食べたかな......私は鴇くんの彼女か何かか?と、思考が働きかけたがどう足掻いても可愛い女の子ではなく、酒が入った成人男性ということを思い出して、頭の悪い考えを消し去った。
「もしもし...何かありましたか」
「鴇く~ん、寂しいよ~」
「......なるほど」
声色や話し方で察したようで、鴇くんはいつも通り淡々と私に言葉を返した。
「...ふぇ、へへ......」
「大丈夫ですか?」
「そんなに心配しなくてもいいけどさぁ~、人肌が恋しいというかさ......」
「...なるほど」
「ぅぅ...ごめん寂しすぎる......」
ぽたぽたと頬を流れる液体で気付いた。あ、これは本当にダメなやつ、ダメな日だ。
コップに注いでいたお酒の残りを一気に流し込み、私は通話を繋いでいることも忘れて音を立てて倒れ込んだ。
ーーーーーー
「.........い.........さ」
「んん......」
それは突然だった。
居るはずのない人影、まさか泥棒......
パッと勢いよく目が覚めて、携帯を手に取り110を押してあと一歩で通話ボタンに触れる、ところで手を掴まれた。
「周防先輩......私です」
「と、鴇くん」
ほっとして携帯を落とす。
というかなぜ鴇くんが?ここに?
「鍵も開いてたから心配しました......意識が飛ぶまで飲まないでください」
「......ごもっともです」
......心配して来てくれたわけか...なんか申し訳ないな。そう思いつつも、心寂しい中来てくれたんだと思えば、心が満たされる感覚に覆われる。この感覚にハマってしまえばきっと抜け出せないのに、鴇くんの温かさに触れしまう。鴇くんの方を見ればいつも通りのスーツで......スーツ?
「もしかしてさっき帰ったばっかりだった?」
「いえ、まだ庁舎に」
「ごめ...む」
口を手のひらで覆われる。
「私の用事があっただけなので、先輩が謝ることはないです」
「そっか......」
「後輩の神崎と鮫岡もちょうど一緒で、仕事も一区切りしたところだったので」
「え、あの二人も一緒だったの!?」
「......緊急の用事かと思い電話もスピーカーで」
「スピーカーで私の痴態を垂れ流したの!?」
別に鴇くんだって垂れ流したくはなかっただろうけどさ、あんな成人男性の酔っ払い姿は恥ずかしくて見ていられなかったであろう。少なくとも自分がそうだから。
「ごめん、体のどこか貸してもらえると助かる......出来れば大きめなとこがいいかも」
「......相場どこなんですかね」
結局のところ胸を借り、頭まで撫でてもらった。本当に情けないものだ。
結局私の情緒が落ち着いたのが五分後くらい。その後鴇くんから離れて千鳥足でコップにお茶を注ぎ、何度かこぼしながらも鴇くんの元へと到着できた。
「ありがとうございます」
そう言いながら一口飲んだあと、私にもお茶をいれてくれた(二度手間)。
結局そのあとの記憶はなく、次の日酔いは飛んでいたが別の意味で足を重くしながら登庁することになった。