「──あれ、旅人?」
夜も更けて来た頃。ガヤガヤと騒がしい酒場に入ると、カウンターのテーブルに突っ伏している旅人の姿が目に入った。
ボクの声は辺りの声にかき消されて届いてないのか、それとも既に夢の世界に行っているのか。彼女は少しも体を起こそうともしない。
「あぁ、ウェンティ!ちょうど良かった!旅人が寝てどうしようか困ってたところなんだ」
カウンターにいたチャールズはボクに気付くと、腕を上下に動かして大きく手招く。
それに誘われるようにして彼女の元まで行くと、グラスを片手に顔を赤くしてスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。
「……どうしたんだい?まさか、お酒でも飲んだりしたんじゃ……」
「そのまさかなんだよ……さっきまで別の冒険者と話してたんだけど、そいつの飲み物を酒と知らずに飲んだみたいでな……」
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